Trial14 ―――夏―――

      夏。

      それは、俺達に今以上に強い絆が求められた季節だった。


      『えっ…今、なんて』

      突然のリョーマからの電話に舞い上がっていた俺は、その真意が見抜けなかった。

      その時の濡れた声が今でも頭から離れない。

      『佐伯さん。俺…今すぐあんたに会いたい』

      そんなわがままな誘いもお前だからと大して気にせず、二度返事で承諾した。

      だけど、その裏にあんな大事が隠されているとは思ってもみなかったけどな。

      青春台に着いた俺にお前は改札前の柱に背もたれしたまま俯いていたな。

      リョーマが俺に電話してきてから四時間以上経った。

      だが、お前は辺りが暗くなったってそーしていたんだな。

      視点が定まらないまま…。


      なぁ、リョーマ。

      そんな顔をするなよ。

      お前のそんな顔を千葉から見るために俺は何本もの電車に乗ったんじゃない。

      ただ、笑っていて欲しかったから。

      『んっ!』

      真夏の夜は家の中にいるより自然の冷房が火照った体を冷やした。

      民家では小さな子供の声が小さく何処からか漏れてきたが、そんなことはどうだって良

      かった。

      ただ、リョーマにもう一度笑って欲しくて俺は懸命に抱き続けた。

      全国にお前が出れないって事は観月から聞いて知っている。

      だけど、それでリョーマが笑わないのとどういう関係があるって言うんだ?

      そりゃ、俺だって寂しい。

      全国でまたお前と試合するかもしれなかったから。

      リョーマが一番生き生きとする場所をまた見たかったから。

      でも、俺はお前より二歳年上だから恋人を悲しませたくないからわがままなんて言わない。

      行って来い。

      その一言だけ言った。

      好きだから縛りたくない。

      好きだから笑っていられる。

      愛しているからこんなにも離したくない自分と葛藤を繰り返している。

      アレから何十年もしないでリョーマは俺の腕の中にいる。

      今日は3月14日。

      この間は、お前からしてもらったから今日は俺からしないとな。


      『あっ、さえ……さっ』

      リョーマがイイって言うまでイかせてあげない。

      ある意味拷問かなぁと思いつつも俺自身このスリルにドキドキしてやめられないんだけ

      どね。

      お前が束縛する代わりに、俺は敢えて何も言わない。

      だけど、本当はその見えない糸はいつだって俺は握り締めているんだな。

      疲れきった寝顔。

      それは、俺だけが見られる特権だから。


      なぁ、リョーマ。

      あの夏の日が来ても俺はこの糸を手放さないからな。



      ♯後書き♯

      Trial14「夏」はお楽しみ頂けたでしょうか?

      今作は白い吐息企画に作業しました。

      佐伯×越前。

      これまた面白いBLを作ってしまったなぁと振り返ってはそう思っています。

      去年は佐伯君に受け側をして頂いたので、今度は攻め側にしてみたのですが、如何だった

      でしょうか。

      皆様の反応が楽しみなのですが、そろそろここで失礼致しました。