Trial16―――朝―――


      どうしてだろうな?

      最近、僕は変だ。

      いつも目覚めた朝、あの人のことを想って泣いている。

      夢で見た年上の女性。

      それなのに、僕はこんなにも悲しかった。

      桜の樹の下で泣いているあの人に僕は声を掛けることが出来ない。

      言葉も見つからなければ抱きしめることも出来ない。


      ねぇ、あなたは何が悲しくてそんなに泣き腫らしているの?

      けど、夢の中の僕には解っていたんだ。

      あの人が消えて数分後、体の呪縛は解けた体はまるで糸を切られたマリオネットのように

      崩れた。


      自由が戻ってきた口から零れ落ちたのは、愛しい人の名前?

      夢の中の僕は確かに、あの人に恋をしていた。

      ……きっと、彼女には伝えてはいない未成熟な愛。

      何度も何度も見る夢は、僕にとっては悪夢でしかなかった。

      ねぇ、さん。

      どうしてだろう?

      授業も部活も適当に流していたのに、僕はあなたを見ると自然と落ち着くんです。

      それはまるで、あの夢の続きを見ているような気分。


      ねぇ、さん。

      知っていましたか?

      覚えていないかもしれませんが、早く起きた朝窓辺に立つと、あなたが歩いていたんで

      すよ。

      勿論、僕は声を掛けようとしました。

      けど、……未遂に終わりました。

      ほんの一瞬だけど、あの夢を思い出したから。

      もし、現実まで声を掛けられなかったらどうしようかなんて躊躇してしまったから。

      突然、あなたが消えてしまったら・・・


      ねぇ、さん。

      この気持ちはなんですか?


      僕が恋してしまった人は夢の中の女性。

      なのに、視線はあなたばかりを追ってしまう。


      ねぇ、さん。

      この気持ちは一体、なんですか?



      ♯後書き♯

      Trial16朝はいかがだったでしょうか?

      ご存知の方も居られるかと思いますが、今作は「企画」にて催しておりますネット同人

      雑誌『Streke a vein』2005年度端月号から連載しております「ガラスのシンデレラ」side

      の手紙です。

      不二君は二作目なのですが、健全作は初めてですね。

      今の時点で恋人や裏などの設定は出来ないお陰です。

      そして、今から心配していますラストまでどうかお楽しみ下さい。