なぁ、さん。
俺は何も出来ないのか?
アンタの笑顔を見る度に俺はどうしようもない憤りを感じていた。
疲労感のない体に鞭を打ってどこかに急ぐ俺。
目的地なんてない。
ただ俺は走りたくて、何かが待っている気がして急いでいた。
暫くすると、バス停で誰かがこっちに手を振っているのが見えた。
…さん、アンタだった。
袖なしの白いワンピースからはみ出た肌も白くてビル影を背にしているのにも関わらず、
俺には眩しく見えた。
それ以上にアンタが本当に笑ってくれたことが嬉しかった。
これが夢だと気づいても今度は俺からその小せぇ手を握る。
頬を染めてもやはり笑うさんをその勢いで抱きしめた。
これが夢だと解っていても俺はアンタの耳元で何度も好きだと言う。
俺のことしか考えられないように俺の気持ちを嫌と言うくらい解って欲しかった。
マラソンをした時のようにドクドクと心臓が苦しくなる。
自分でもこんな気持ちになったのは初めてだ。
テニス以外にも、こんなに誰かを好きになることなんて今まで知らなかった。
なぁ、……さん。
それは俺だけか?
この初恋とも呼べる感情に溺れるほど子供出なければ大人でもねぇ。
俺の背中に回された手は震えてる。
本当にいいのか?
俺、そんなことをしたら何をするか分からねぇぞ?
潤んだ瞳には何が映っているんだろう。
俺は下りた瞼を確認してから顔を近づけようとした。
だが、そんなことは叶うことはなかった。
定時刻に目が覚めてしまう俺を待っていたのは、かぁーっ、と熱くなる理性だった。
あのままだったら、俺は…アンタに…。
俺はベッドの中で身を丸くして苦しい呼吸を整える。
今日は関東大会の緒戦だ。
こんなこと考えちまうとブザマに負けちまう。
俺はこの手紙を書いてとにかく気持ちを抑えることにした。
竜崎先生の隣にいないさんに勝ったことを伝えるために。
♯後書き♯
Trial24「手」はいかがだったでしょうか?
今作は「ガラスのシンデレラ」side手紙です。
前作で海堂君の手を握ったので今回はそれをベースに作業してみました。
久しぶりにside手紙を作業したので、かなり大胆に進めてしまいました。(汗)
もう、年の差なんて関係ありませんよねv←おい
未遂にしたのは、柊沢の意地だったりvv
それでは、ご感想お待ちしております。