Trial34 ―――走れ!―――

          『うわわっ!急がなくちゃ!!』

          僕はそう言って家を飛び出しました。

          今日は会社を休んでさんの出産に立ち会うつもりだったのに、僕としたことが

          寝過ごしてしまいました。

          僕達は今から十年前の全国大会で知り合いました。

          お友達の付き添いだったあなたはコート上にいた僕に一目惚れをしたんだと、

          いつか話してくれましたよね。

          僕も、僕だけを追い駆けてくれるさんの瞳に恋してしまいました。

          『頑張って!』

          そう、何度も応援してくれるあなたに僕は勇気をもらいました。

          あれから十年、僕はさんと結婚しました。

          自宅からすぐ傍のスーパーに勤めてから初めての冬がやってきました。

          当時、高校二年生だったあなたは今では僕の妻でパソコン教室のパートを

          して家計を助けてくれます。

          そして、今日、12月20日は僕の23歳の誕生日です。

          でも、その日がまさか僕の子供の誕生日になるとは思ってもみませんでした。

          今では何ヶ月すると、赤ちゃんの性別が判るそうですが、僕達は敢えて

          お願いしませんでした。


          だって、せっかく生まれてくる命を先読みしても面白くないでしょう?

          無事に生まれて欲しいと、僕は走る足に鞭を打ちました。

          自宅から駆け出して17分、僕はさんの手を握り締めていました。


          『頑張って!』

          あの時、あなたが僕に掛けてくれた言葉を今度は僕がさんに勇気をあげます

          からどうか、笑って欲しかった。

          この23年間でこんな誕生日を味わうのはきっと今年だけですね。

          分娩室に僕が駆け込んでから約半日後、眠るさんの隣には小さな命が呼吸を

          繰り返しています。

          こんにちは…そして、初めまして。

          僕が君のパパだよ。

          生まれてきてくれて本当にありがとう。

          今もまだ眠り続けるあなたの隣でこの手紙を書いています。


          ねぇ、さん。

          23回目の誕生日はすっごいプレゼントをありがとう!

          これからもこの子と一緒にお願いしますね!!



          ♯後書き♯

          皆様、こんにちは。

          Trial34「走れ!」はいかがだったでしょうか?
 
          今回は葵剣太郎君のBDに作成しました。

          12月20日は彼の誕生日です。

          今作は奇跡に近いネタではないでしょうか?

          初で、既婚者設定で子供の出産に立ち合わせてしまいました。

          しかも、愛の結晶が自分と同じ誕生日。←うわぁ…すっげぇ奇跡(汗)

          ちなみに、葵君との間に出来た子供のことは皆様で考えてあげて下さい。

          それでは、皆様のご意見をお待ちしております。