『なぁに?蓮司君』
なぁ、。
なぜ今日は、機嫌が悪いんだ?
お前は喜怒哀楽を表すのが下手だ。
何らかの感情を抱いたとしてもすべてその無防備すぎる笑顔の中に浮かび上がっている。
昨日は他校との練習試合があった。
だが、赤也がなかなか来ず、こちらから辞退させてもらう結果となった。
原因はいつも同じで、寝過ごしたという何とも情けないものだ。
これでは、弦一郎が怒るのも無理も無い。
なぁ、。
『離してくれないかな。私、図書館に用があるんだけど』
俺を誰だと思っているんだ?
立海大付属中学校テニス部所属「達人」と呼ばれる男、柳蓮司だぞ。
その俺に勝とうとしても甘い話だ。
昼休み、俺はお前の手を掴み、部室まで無言で歩く。
怒りというよりものその偽りの仮面を剥がしてやりたいから。
『え…っ、んっ!』
部室に鍵を掛けると、ホワイトボートの横の壁にを押し当て唇を捕らえる。
30cmも身長差があるからお前がもがこうとしても俺の腕の中からは容易には
逃れられない。
『ん、んん……っ』
それでも抵抗しようとしているのはの本性。
だが、俺はお前の体を知り尽くしていることを忘れては困るな。
『んぁ……ん、んん…』
制服の上から胸をそっと撫でると、は簡単に唇を開ける。
舌を滑り込ませ、片手でネクタイを抜き取り、シャツを肌蹴させた。
下着の上から弄ぶと、次第に俺の言うことを聞く。
すっかり砕けてしまった腰を抱きながら床に寝かせ、今度は優しくキスをする。
『機嫌が悪い原因を教えない限り、俺の勝手にする』
一応、忠告をしていないと後が怖いからな。
何か言いたげな唇を塞いだまま胸を揉み、頂が固くなるまで攻め続ける。
次第に甘くなる吐息だけで俺はお前が欲しくなる。
の首筋にだらしなく垂れる俺たち二人の唾液が白銀に光る。
そろそろ俺も余裕がなくなる頃、それは起こった。
俺は知っている。
お前がもったいぶると、太股を擦る癖を。
名残ごり惜しそうに唇を離すと口内と一緒に濡れた瞳が俺を直視していることに
気づいた。
『……ごめんね、ごめんなさいっ』
そう言って顔を隠して泣きじゃくるは、昨日の出来事を語りだした。
東京に自宅があるお前は俺の後ろ姿を見つけて驚かせようと忍び足で
近づいたらしい。
しかし、いざ声を掛けようとした時、俺が一人ではないことに気がついた。
そう、あの時俺は一人テニスの練習をする名も知らぬ少女と話していたから。
『あの時、蓮司君あの子のこと「お嬢さん」って呼んだでしょ?私、私……っ』
が言わんとすることがようやく解った。
つまり、お前はあの言葉一つで名の知れぬ少女に嫉妬していた訳か。
思わず声を出して笑うと、は普通の女と変わらない素振りで拗ねる。
常の計算高いお前も好きだが、俺はそんな可愛いも俺は愛している。
『お前が欲しい』
『…うん。来て』
固く手をつないだ俺たち。
その気持ちには偽りは無いだろう。
この果てしなく広がる空のように。
♯後書き♯
Trial38「果てしなく広がる空」は、如何だったでしょうか?
今回は柳君でしたが、待ちに待った方はお待たせしました。
今作は、「LOVE OF
PRINCE― Sweet
―」の彼ストーリーの続編を
作業してみました。
手紙中にも書いておりますが、柊沢はその場面で年甲斐もなく嫉妬したので、
いつか絶対作業してやるぞという意気込みを感じたわけです。
今までBLで「柳」と書いて彼を想像したことだと思います。
しかし、それは仕方ないですよね?
何たって漢字にすれば一文字の苗字ですから。(笑)
今作も小説の予告ですので、そちらの方でも楽しみにして頂ければ幸いです。
それでは、「果てしなく広がる空」をご覧下さり誠にありがとうございました。