Trial46―――忘れない―――

      囃子の音が耳に煩い。

      人ごみの中、俺は一人の存在を探す。

      周囲は浴衣姿が多くてそれだけでも期待を大きくさせる。


      ねぇ、俺。

      俺は誰を探しているんだ?

      そんなに息を弾ませて何処に急いでいるんだ?

      青くなった交差点を渡って古びた神社の鳥居で足を止める。

      そこには、桃色の浴衣を身にまとった彼女がいた。

      少し頬を染めて大丈夫?と、俺を気遣ってくれるいつもとは違う夢。

      だけど、俺はこんなに幸せになったことはないだろう。

      夜店のヒヨコを両手に乗せて笑っているこの人がすごく眩しい。

      いつもは泣かせてしまうのに、今日はそんな顔をしてくれるんだね。

      あなたの微笑みを見ているだけなのに、俺は幸せになる。

      もっと、それを見ていたくなる。

      この気持ちを言いたくなる。


      ねぇ、あなたはさんなんでしょう?

      でも、それを口にすることは最後までできなかった。

      あなたが好きだから…。

      リンゴ飴を美味しそうに齧るあの人の微笑みをずっと見ていたいから…。

      横でじっと見ていた俺に頬を染めて怒るけど、やっぱり可愛い。

      あ、でも、「可愛い」なんて失礼かな?

      年上の人なのに。

      でも、本当にそう思うんだ。

      リンゴ飴を俺に差し出すあなた。

      俺は何気なくあなたが齧ったすぐ横に歯を立てる。

      それを見上げるあなたは驚いた顔をしたけれど、頬を染めて微笑んでくれる。

      初めての関節キスは届かない味がした。

      これは夢。

      出来過ぎても、それは変えられない事実。


      だから、さん。

      今、見ている夢を現実に替えて下さい。

      あなたが心から笑ってくれるその日をずっと待っている。

      俺は何があったとしてもこの気持ちを忘れないから。



      ♯後書き♯

      
Trial46「忘れない」はいかがだったでしょうか?

      
今作は「ガラスのシンデレラ」side手紙で第三章の河村君の夢を作業致しました。

      
「ガラスのシンデレラ」side手紙は第二段なので、他のDream手紙同様に名指しをさせました。

      そろそろ作業に入らなくてはいけないのですが、いつもの如くなかなか考えがまとまらない

      のが現状です。(ため息)

      
それでは、これからも『Streke a vein』と『Raw Ore』の応援をよろしくお願いします。