Trial4 ―――特訓―――
12月30日。
今年も明日になれば終わる。
そんな日が、俺の金田一郎の誕生日だった。
だけど、誰も知らないだろうな。
同級生の友達や部活の仲間だって冬休み真っ盛りの今日、故郷に帰ったりどこかへ遊びに
行くことで夢中だろうなぁ。
俺は何が寂しくて独り誰もいないコートで、特訓をしている。
あぁ、赤澤さん。
俺はついに、あなたがこのテニス部にいる間に言えなかった。
たったの「好きです」と言う気持ちさえ…。
赤澤さんが引退してしまった部はまるでロウソクの灯りが消えてしまったようです。
あなたの声が聞こえない。
部室の中にいる俤。
赤澤さんがいたコート。
俺にはあなたの思い出が残されている。
だから、強くならなければと思って、今、俺はここにいるんだ。
『おい!金田っ!!』」
駄目だ、耳に赤澤さんの声が残っている。
『おい!聞いてるのかっ!?』
……まだ続いている。
『返事をしろっ!!!』
ゴッ!
その時、俺には花畑で待つあなたが見えた。
ゴッ!
俺はそれに向かって走っていこうとしたけど、再び同じ衝撃を感じると、景色はさっきまで
俺がいたコートに場面が変わった。
あぁ、良い場面設定をありがとう。
これならあの時伝えられなかった言葉を言えそうだ。
『好きです…俺、赤澤さんが喜んでくれるようなことができないままお別れしちまう
なんてイヤですよ。でも、あなたが新しい場所で元気でいてくれたら俺はっ!?』
その先は、言えなかった。
俺は天使が化けているであろう赤澤さんに抱きしめられていたから。
『金田っ!』
でも、これがサイゴならどうだって良かった。
『思い出でも良いんです。俺としてくれませんか?』
恥ずかしかった。
でも、これがサイゴ…。
そう思ったら、余計に涙が出てきて俺の頬を濡らした。
赤澤さん、俺がどれだけあなたのことを好きなのか分かってくれましたか?
あなたは最初、浅黒い肌でも判るほど、顔を赤くして驚いていました。
だけど、それは一瞬で俺を虜にする唇が押し当てられた。
『う…っ、ああっ』
部室にある教会の机の上に寝かされた俺は、熱いあなたが俺の中に入っていくのを感じて
いた。
あれは「最期の審判」に行くまでの俺の未練を振り払うためのシュミレーションじゃな
かったんすね。
まだ、痛いです。
その痛みとともに俺が赤澤さんに言った自分の言葉のすべてが恥ずかしかった。
着替えた俺の隣を歩くあなたは俯く俺に、誰もいないことを確かめてから何度もしたキス
をしてきた。
でも、やっぱり俺はどこか怯えてて、だけど、赤澤さんはそんな緊張した唇も難なく舌を
滑り込ませてくる。
『んっ……ぅ』
痺れた舌がさっきまでの動きを覚えていてぎこちなくあなたを受け入れだす。
時間は夕方の六時過ぎ。
だから、俺たちが今、お互いを求め合っている姿は夜に紛れて見えない。
次第に口から零れ出す唾液を合図に、赤澤さんの片手が俺自身をじれったく擦る。
もっと、触って欲しい。
だけど、ここは外。
誰かに見られたりしたらと思うと、憶えたての声を出せないことが辛かった。
あなたはやっぱりすごい人ですよ。
腰が砕けそうな俺を抱きしめ、呼吸を絶え絶えの俺の耳にこんなことを言うんですから。
『誕生日おめでとう。だけど、俺は思い出にお前を抱いたんじゃねぇ……だから、
俺がお前を特訓してやる。覚悟しとけ』
♯後書き♯
Trial14「特訓」でした。
12月30日は金田一郎君の誕生日です。
そして、王道の赤澤×金田を作業してみましたが、いかがだったでしょうか?
しかし、自分で設定しておきながら赤澤君がエロいですね。(汗)
その前に、「お花畑」と「最期の審判」を出してどうするよ、と突っ込まれるでしょ
うね。(苦笑)
もう、年末なので笑っちゃって下さい!←そこに落ちを持っていってどうする
それでは、金田君の誕生日おめでとう!!
そして、良い年越しを!!!