…あれから三ヶ月。
あの日が俺に…いや、俺達青学男子テニス部のレギュラー陣に夢を見させた。
それは、いつも同じである女性がなぜかウチの樹の下で泣いているもの。
だが、俺は何度も夢見ているくせにどうすることも出来ないそんな悲しいものだ。
あの……さん。
俺は、何であなたのことを意識してしまうのだろう。
あの人は男性であって女性ではない。
そんな解りきったことなのに俺は気がついたらさんの姿を指で探してしまう。
今日は青学の入学式だった。
普通の学校ならば全部活が活動停止になるところだが、男子テニス部はコートが
体育館から離れているなどの理由で特別にこの日も通常活動が出来る。
だから、今日もあなたに会えると思ったんです。
『……さんなら、さっき俺が着替える前に出て行きましたよ』
俺がコート中を何十回も見回していると、海堂が何かにイライラしているような顔で
そう呟いた。
出て行った?
その言葉が俺の頭の中を暗くした。
あの夢の続きなのだろうか…それとも現実?
解らない。
ただ一つ解るのは、今、あの夢の後同様に後悔に苛まれているということ。
もう、こんなのはイヤだ。
何も出来ないだけで大切な人を助けられないのは…!
『大石!みんなこっち、こっち!』
そう言ったのは英二だった。
アイツも彼女の夢を見ている一人だって言うのに何であんなに前向きでいられるん
だろう。
そう思うと、頼もしくもあり自分に対する情けなさを痛感しました。
英二が向かった先は青学の正門。
俺はそこに見覚えがあった。
恐らくみんなもそれを思い出している。
夢の中で確かに見た桜の樹。
そして、何度も見た彼女が静かに眠っていた。
さん。
桜咲くその樹の下で俺たちを待っていたのは、不思議な恋の始まりでした。
♯後書き♯
Trial44「桜咲く」はいかがだったでしょうか?
こちらも前回同様、「企画」にて私が主催しておりますネット雑誌
『Streke a
vein』で連載をしております「ガラスのシンデレラ」Sideの手紙です。
大石君は初手紙なのですが、小説としては二年間も間を空けているので
そろそろ作業しなくてはと思っています。(懺悔)
それでは今後とも『Streke a vein』を宜しくお願いします。