Trial55―――次のステージへ―――
『大石の大バカヤロウ!!』
英二にそう言われたのは全国大会まで明日に迫った時だった。
九州から戻ってきた手塚に試合を申し込んだ俺は予想通り、無残にも敗退した。
夕暮れ、俺が着替え終わるのを待っていたのか部室前に一人佇む英二からはいつもの
元気は感じられなかった。
予想は……している。
俺より感情に走る相棒は、踵を返せば襟首に掴みかかって来た。
『大石の大バカヤロウ!!』
その言葉にどんな意味が込められていたかなんて十分理解している。
だからこそ、お前に伝えることが出来なかったんだ。
英二と一緒に全国ナンバーワンDになる。
そう誓って今まで来れたんだ。
なのに…俺は…。
手首に爆弾を抱えてしまった俺は全国には間に合わないことが解っていた。
だから、俺は手塚に試合を申し渡した。
最後のテニスをテニスで終わらせるために……。
『ああっ…!』
『英二』
誰もいない部室に連れ戻された俺はお前からのキスに理性を無くし、気がついたら
押し倒し下半身の昂りを掴んでいた。
シャツのボタンを外しながら快楽を口にする唇を塞ぎ逃れようとしている舌を絡めとる。
俺だって……どんなに英二と行きたかったか。
『にゃぁ……いいっ……んんっ』
お前には解らないだろう?
『…ああっ』
英二の寝顔を見ながら俺は一つごめんと呟いた。
事情はどうあれ思いのはけ口なんかにしてしまった。
俺は恋人の目元を拭ってから互いの体を拭き、制服を着せて気を失っている英二を
背負って自宅まで送り届けた。
『俺は青学黄金ペア菊丸英二だよん』
比嘉中の試合の後、お前は俺を見上げて言った。
『だから全国終わるまでには怪我治して戻ってこいよ、相棒!!』
俺に向けられた拳。
昨日はあんなことをしたのに、そんなことを英二は望んでくれるんだな。
「ああっ!」
返事と共に返した拳。
俺が辛い気持ちを抱えていたのはすべてお見通しだったんだな。
最後なんてもう、考えない。
次のステージへ行こう!!
♯後書き♯
Trial55「次のステージへ」はいかがだったでしょうか?
今回は初にして裏の大石×菊丸手紙にしてみました。
31巻であの場面を見た時、今作を書きたくて結局、クリスマスにupすることに
なりました。
今作をupするにあたって柊沢が体験したことを踏まえて製作に当たりました。
それでは、皆様ちょっと遅れましたが、メリークリスマス!