Trial58―――雪の中―――


      なぁ、

      お前の気持ちはあの瞬間に雪の中に閉じ込めたんだな。

      そして、俺たちが出会ったのもその雪の中だった。


      は俺より一つ年下の二年で、夏休みも指折りって時期に立海に転入してきたから

      
良く覚えている。

      アレからもうすぐ半年、お前はすぐこっちに慣れてダチと連れ添って歩く

      姿
に遇った。

      だから、何ら他の奴らとは変わりないフツーの奴だと思っていた。

      けど、の笑顔はどこか弱々しくて…痛々しかった。

      目が反らせられなかった。

      お前を見ていないだけで柄にもなく心配になってきて、それでいて余計に俺の

      スト
レスがスタミナを減らしていった。

      ケーキを作る回数も多くなっていく分、のことを気にしている俺がいる。

      俺ってどうしちまったんだろうなって今日までずっと考えていた。

      「うわっ!?」

      今年最初の雪が朝から降り積もって放課後には足がすっぽり入った。

      こんな時、決まって部活はないから早く家に帰れるのは良いけど、家に着く

      までが
問題だっての。

      案の定、俺は家まで後もう少しってとこで見事に尻餅をついた。

      「……いってぇ」

      うっわぁ、ケツがつめてぇ。

      こんな時だけ北海道に住んでいる人が羨ましくなる。

      こっちの人間より向こうとか雪国に住んでいる人って日常茶飯事だから歩くの

      
上手なんだよな。

      「はぁ」

      「大丈夫ですか?」

      あの時はいきなり声を掛けられて驚いたぜ?


      俺の目の前に手を差し伸べてくれた人物がまさか、だとは思っても

      見なかったから。

      そんな俺に少し笑ったお前はやっぱ、寂しそうだった。

      俺はのことが放っておけなくて、お礼だと言って家もすぐ傍だからお茶に

      誘った。

      ティーバックを入れたマグカップにお湯を注いでから気がついたように

      ドキドキした。

      今……俺は好きな女と二人だけだ。

      ……あっ…俺、何、今更意識してんだよ。

      そもそも誘ったのは俺の方だ。

      冷静に、且つ平静に、ましてや相手は後輩なんだぜ?

      しっかりしろよ、俺!

      それから他愛のないだべりをしながら淹れたての紅茶を飲んだ。

      そう言えば、忘れてたけどお前は北海道から神奈川に引っ越してきたんだよな。

      だから、あんなに雪が降っていたのにも関わらず、スタスタと歩いていた訳だ。

      「じゃあ、そろそろ私は帰りますね」

      礼を言って席を立ったを俺は自宅まで送ろうと、その後に続いて立つと、

      急にお
前がふらっとしてリビングのドアの前に来て倒れた。

      俺が慌てて抱き起こせば顔を赤くして足が痺れたって言ったにほっとすれば

      今度
は動けなくなった。

      これってやっぱ、俺もフツーの男ってヤツだよな?

      こうして至近距離にいるお前に欲情している。


      「がずっと好きだ!」

      フローリングの床の上にそっと下ろし、の上に覆い被さる。

      やべぇ…もう、理性がぶち切れる。

      女特有の匂いが俺から理性をどんどん奪っていきやがる。

      なぁ、お前がそんな表情すると、俺……このままだと。

      「あ、せんぱっ……そんな…とこ」

      頭がくらくらするほどの甘い匂いがする場所に俺は顔を埋めて溢れ出す蜜を夢中

      
で舐めた。

      女とこんなに体を求め合うことが気持ち良いなんて思わなかったぜ。


      「はぁ、ん……っ」

      指を数本を蜜壷の中に入れれば俺をもっと誘惑する音が動かすたび

      聞こえてくる。

      その音が俺を俺たちしかいないリビング中に響き渡る。


       って何回呼んでも足りないくらい俺は世界中で一番愛している女の名前を

      叫んだ。

      お前もそれに答えるように喘ぐ声を一層甲高いものに変える。

      「……あっ!」

      グッと突き上げる瞬間、短く鳴いたが俺を抱きしめる。

      その瞬間が本来のお前だと判ってすげぇ嬉しかった。

      二人して果てた後、は泣きながら話してくれたよな。

      お前が笑わない理由を…。


       には五歳上の大学入り立てだった自慢のねーちゃんが一人いた。

      だけど、こっちに越してくる前の四月、最初の講義に出かけた朝、電車が入って

      き
た瞬時にホームへ突き落とされた。

      なぁ、……お前は雪の中に閉じ込めたんだな。

      それまで家族に見せていた笑顔を…。

      犯人はねーちゃんにしつこく交際を迫っていた一回りも歳の離れた高校時代

      の
英語教師だった。


       の両親は当然、訴訟を起こそうとした。

      だけど、それをお前は阻止したんだよな。

      「お姉ちゃんが悪かったんだよ」…って。


      なぁ、

      お前の両親は解ってたんだぜ。


       が失くしたガラスが砕けたことを、さ。

      だから、親父さんの転勤も兼ねてこの神奈川にこんな時期外れに引っ越しを計

      したんだぜ。

      だけど、それは正解だったな。

      だってさ、これからは俺がお前の傍にいてやるから……が受け入れるのは

      俺だけだ
から。

      「私なんかを…愛してくれるん…ですか?」

      俺の胸の中で泣いたは今更そんなことを聞いてくるから。

      だから、もう一度ディープを決めて何も考えられないように舌を絡めてやった。

      お茶の間で済ませる女だからお前を抱いているんじゃないってことくらい

      体で解れよ。


      じゃなきゃいけないんだ。

      お前がいやってほど解るまで何千回も体中でに溺れているってことを

      教えてやるよ。



      ♯後書き♯

      Trial58「雪の中」はいかがだったでしょうか?

      今回は丸井君に登場させた訳ですが、お楽しみ頂けたでしょうか?

      前回は、『Streke a vein』2004年涼月号に作業したわけですが、

      その時はdream
手紙だったので、今作は裏dream手紙にしたというわけです。

      ですが、やっぱり長々としたものに成り下がりましたね。(土下座)

      そして、今年に入って久しぶりにシリアス設定満載なヒロインにしました。

      やはり、この形の方がシックリするなぁと思っているのは私だけでしょうが、他


      作品も今作と同じように気に入って下さると嬉しいです。

      それでは、長々と失礼しました。