なぁ、さん。

　　　　　　俺は自分の気持ちにようやく気づいたんです。

　　　　　　へへっ、遅すぎますよね？

　　　　　　皆はとっくに気づいていたってのによ。

　　　　　　『一緒に桜見よっか』

　　　　　　なぁ、さん。

　　　　　　そんな無防備すぎる笑顔は反則っすよ。

　　　　　　俺はあの人の夢を見始めてからずっとアンタを見ていました。

　　　　　　だけど、いつも皆と視線がぶつかっちまう。

　　　　　　俺はそれを少しも疑問に思っていなかった。

　　　　　　考えてみればどうして先輩や海堂とこんなにも視線がぶつかっちまうかなんて

　　　　　　分かるのに…。

　　　　　　『私を助けて！』

　　　　　　なぁ、さん。

　　　　　　俺はアンタを見ちまうのは、あの人を重ねてるんだってようやく判ったぜ。

　　　　　　いつも俺の夢の中に出てくる年上のヒト。

　　　　　　なぁ、さん。

　　　　　　その姿はどこかアンタにそっくりだった。

　　　　　　現実にはありえねーよありえねーな。

　　　　　　そうなんども自分の中で繰り返していた。

　　　　　　けど、俺は……俺達はさんを意識せずにはいられなかった。

　　　　　　『一緒に桜見よっか』

　　　　　　アンタは俺が落ち着きがないのを一発で見抜いちまって俺が返事する前に

　　　　　　手を 引っ張った。

　　　　　　ウチの名物の桜の樹。

　　　　　　それは願いが叶うとかっていう何処の学校にも在りそうな伝説の樹だった。

　　　　　　だけど、そんなこととは少しも知らない。

　　　　　　なぁ、さん。

　　　　　　俺は気づいてたぜ。

　　　　　　多分、これは俺しか気づいてないだろうな。

　　　　　　アンタは必ずこの樹の下ではいつもとは違った顔で笑うんだぜ？

　　　　　　だから、桜もそれに応えるように枝を揺らすんだってガキみてーなことを

　　　　　　考えちまうくらいにさ。

　　　　　　もし、今、俺が目にしていることがいつもの夢ならば俺は絶対あの人を離さない。

　　　　　　そして……コクっている。

　　　　　　もう、二度と泣かせないように。

　　　　　　なぁ、さん。

　　　　　　俺は夢の中でもそうやって笑っていて欲しい。

　　　　　　…なんて、アンタが目を細めている横でハズイことを考えてた。

　　　　　　なぁ、さん。

　　　　　　アンタこそ花みてーだよ。

　　　　　　こんなに俺の心に残って離れないんだからな。

　　　　　　♯後書き♯

　　　　　　Trial７８「花」はいかがだったでしょうか？

　　　　　　今作は先にupしました手塚・菊丸・大石と並んで私が「企画」にて主催しております

　　　　　　ネット雑誌「Streke a vein」で連載しております「ガラスのシンデレラ」Sideの

　　　　　　作品です。

　　　　　　桃城Dream手紙は今作で二作目ですが、なかなか初々しく書けたなぁと自惚れしたり

　　　　　　安心したりしています。（苦笑）

　　　　　　今作はＧＷに予定もない退屈凌ぎに作業したわけではありませんが、本能に赴くまま

　　　　　　の彼を書きたかった私としてはかなり面白かったです。

　　　　　　それでは、次回もお楽しみ下さい。