Trial9 ―――涙―――

      『もう、泣くなよ…』


      部長に何度も言われた言葉なのに、俺は受け入れようとはしなかった。

      今日は、12月5日。

      俺の誕生日だ。

      だが、俺はあれから以前より増して練習に打ち込むようになった俺にはそんなことはどう

      だって良い事だった。

      関東大会初戦、俺達氷帝が勝つはずだった。

      なのに、俺が踏みにじった。


      俺さえ、強ければ…

      そう、何度も馬鹿みたいに毎日考えていた。

      青学は俺達から勝利を得てからバネのように順調に上り詰めて結局は優勝しちまいやがった。


      俺は何だったんだ?

      俺は独り出す力も出し切れないから独りコート上の道化師で終わった。

      俺さえ、強ければ…

      その思いを動力に俺は独りラケットを振り回していた。

      そんな時、アンタが現われたんだ。

      『もう、泣くなよ…』


      もう、テニス部の部長ではない跡部さんは、俺の背中に言った。


      何で、そんな声をするんだよ?

      確かに情けで全国行きを果たした。

      でも、それはあくまでも情けだ。

      俺が潰しちまったことには、変わらない。

      もっと、強く誰にも出来ない技を取得しなければ下克上は完成しない。

      それに、今、アンタの顔なんて見ちまったら俺。

      だが、跡部さんはやっぱり酷な人だ。

      俺の背後から抱きしめ、耳元で何度も聞いた言葉を甘く囁く。

      壁から俺が何度も相手をしたボールがこっちを目掛けてきてもアンタの掌で受け止められた。

      俺はその衝撃を跡部さんにキスをされながら見ていた。


      なぁ、アンタは酷な人だ。

      俺がずっと忘れようとしている想いに歯止めが利かなくするんだからな。

      『あと…べさん?』

      部室のソファーに座らされた俺は自分でも厭になるくらい淫らな体をしていた。

      自然と、アンタを求めている。

      体中がもっと触って欲しいって、主張している。

      『……ん、んっ』

      胸の突起を舐めて甘噛みする感覚に酔っている。

      『アアッ!!』

      下半身が自分も触って欲しいと主張すれば静かに滴り出す俺の欲望に跡部さんはいつもの

      強気な笑い方をした。

      その顔をさせたくて俺は強くなりたかった。


      『アッ……ンッア…アッ』

      水音と共にアンタの指が俺の中に入ってくるのが解って思わず腰を浮かした。

      その一つ一つの動きが好き過ぎてずっとソファーの生地を掴んでいた両手を跡部さんの

      背中に回した。

      『好きっ……です。ずっとぉ』

      目からは涙が何筋も流れた。

      それもこれもアンタが故意的にさせているから。

      俺はこんなにも跡部さんに抱かれていることを感じているんだ。

      『あぁ……俺もお前が好きだっ』

      『はっ、ハッ…』

      アンタに跨るような形で一つになった俺は自分から腰を揺らしながらイッタ。

      俺にこんな恥かしいことをさせるのは、跡部さんだけ。

      『誕生日……おめでとう』

      消え入る意識の中アンタは確かにそう言ってくれた。

      涙の数だけ強くなるから。

      だから、このまま跡部さんのそばに…。



      ♯後書き♯

      Trial9「涙」は如何でしょうか?

      またもや柊沢はちょっとマイナーかなと思われる跡ヒヨ裏BLを作業してみました。

      12月5日は日吉若君の誕生日です。

      そのBDに受けはどうよって言われそうですが、我ながらBL関係の作品が少ないのでこれも

      良いかなっと、軽いノリで作業しました。←ちょっと待て(笑)

      それでは、日吉君Happy birthday!