なぁ、君。
君は以前こんなことを言ったな。
『この服目立ちすぎじゃないですか?』
…ってさ。
歳はさ、あぁ言ってくれたけどさ。
確かに忠臣蔵の「忠誠」の心意気を見習おうってぇのはある。
だが、それ以上にこの隊服は個人的にも選んだんだぜ。
長州鎮圧のあの日、これが間に合ってホント良かったよ。
俺達にとっては初の大仕事だったから名を上げたいって躍起になってたもんなぁ。
でもまぁ、結局は三条実美ら率いる長州藩は西に下っちまったんだけどな。
けど、あの働きがあったからこそ今、「新選組」って俺達は堂々とでかいツラをして
いられるんだ。
なぁ、君。
君ならどう思うんだろうか。
ダンダラ模様に重ねた漆黒の闇には「忠誠」と「死」の字が立ち代りで浮かんでいる
ように俺は思えてならねぇ。
浅葱色のあの青に俺はいつか見た空を重ねていた。
その時は大した考えもなくただぼ〜っと見ていたんだけど、何故だか俺の心にすっと
溶け込んでくるように澄んでいた。
あの空は何処まで続いているのだろう。
そして、終わりはあるのだろうか。
帰るかなんて全くわからねぇ道の先には「死」が待っているかもしれねぇ。
だがな、俺は願わずにはいられねぇんだ。
誰も死なせたくない。
そりゃ、一度足を踏み入れちゃそれを意識しちまうのは当たり前なのかもしれない。
局長の俺だってこのザマだ。
しかしだ。
俺は願わずにはいられなかった。
隊士の中の一人だけでも良い。
後の世を生きて欲しかった。
それは局長であるが故の俺のわがままなのかもしれない。
だがな、君。
それにだって、君は入っているんだ。
俺が家族の次に死なせたくない恋人だから。
初めて指を絡めて抱き合ったあの日が今も鮮明に残っている。
あれ以来あの隊服は禁止になっちまった。
しかし、あれで良かったのかもしれないな。
あの青色に込めた意味を聞いたらみんな笑っちまうよな。
新選組の局長がそんなことを願ってどうするんですかってさ。
なぁ、君。
君は笑わないでくれるだろうか。
あの青の色の意味を…。
あの空のように終わりはないから。
俺たちの誠の志には一点の曇りもないから。
だから、生きていてくれ。
俺たちはいつも真剣に生きてきた。
時には仲間を失い、時には恋をしながら。
それでもあの空へ消えちまう。
そして、俺も。
なぁ、君。
君はもう俺の空になっている。
あの隊服が禁止されてから気づけばいつも俺の中にいる。
君はあの空のように俺を優しく包み込んでくれる。
だから、俺は君を守りたい。
愛している君だからこそ……。
♯後書き♯
Trial16「青の色の意味」はいかがだったでしょうか?
今作はバレンタイン企画に作成しました。
私はあの隊服に彼と同じく「カッコイイv」と思った奴ですが、隊士内では不評
だったのでしょうかね。
それでは、ご覧になって下さり誠にありがとうございました。