Darknees

 

        はばたき市は海沿いの面している。

        晴れた日には小高い丘の上からちょっとした美しい景色が広がったが、今日はあいにくの

        雨であった。

        その丘を登りきったところにはばたき学園高等部がある。

        今日は学生たちが待ち望んでいた文化祭が催されていた。

        朝からの雨のためか喫茶店を開いているクラスは大忙しである。

        廊下には普段、目を光らせている教師とその横を上手くすり抜ける学生達しかいないの

        に、今日だけは親子連れや見学に来た中学生達など様々な人たちが行き交っていた。

        クラスの出し物で決める思い思いの制服を着ている学生が、この時ばかり体験社会科

        見学をする。

        洒落たカフェを意識している所は、黒いスーツを着こなしているし、ちょっとした遊園

        地を意識している所は、画用紙で書いたウサギの耳をお面にして被って遊びに来た

        四、五歳の少女に風船を手渡していた。

        しかし、メインは毎年三年生が行う学年演劇である。

        そして、今年は、『シンデレラ』だった。

        「……たくさん来てるね」

        「……あぁ」

        舞台袖で観客席の方を除き見る少女に、さほど気にしていないとでも言うような少年がそ

        う返す。

        「…珪ってすごいね。こんなに人がいるのに緊張しないなんて」

        彼と比べ、彼女は上がり気味だった。

        「お前が気にしすぎなんだ。こっちを向け。……ほら、ティッシュを軽く咥えろ」

        不安そうな彼女が言われたまま軽く咥えると、彼の中にある種の緊張を呼び起こさせる。

        (……)

        胸の中で何度も呼びつづけた少女の名を心の中で呼んだ。

        彼はこのはばたき学園の王子的存在、葉月珪である。

        校内にもこの少年のファンがいるらしいが、本人にとってはそんなことはどうでも

        良かった。

        彼の胸の中には既に一人の女性がいるのだから…。

        ビイイイイ……

        開幕のベルが湧き上がっている会場を瞬時に静まらせる。

        「あっ……もう、時間なのっ!?」

        目の前の少女がまた不安そうな顔をして慌てだした。

        「大丈夫だ。お前あれだけ頑張っただろ?それにここでは、お前が主役だ。な、……

         シンデレラ?」

        しかし、敢えて口に出すことは出来なかった。

        (俺は昔とは違うから…)

        優しく笑って舞台に送り出すと、きらびやかな軍服に身を包んだ自分と比べてボロボロの

        継ぎ接ぎだらけの彼女が三人の女子生徒にいびられている。

        演技と言っても内心湧き上がってくる感情があった。

        だが、それを顔に出すことはない。

        俺は……『特別』だから

        能面を被ったように何かを通し、今を見ているもう一人の自分がいるような気がした。

        あの話のようにこの魔法を解いてくれるのは、彼の真に愛する人。

        ……『私の心はあなたのもの。たとえ世界の果てからでも、いつか必ず迎えに参ります』

        二人の洗濯物を腕一杯に抱えている少女を見つめ、ずっと忘れたことがない言葉を

        思い出す。

        ……あいつは、覚えていないだろうな。…俺は、変わったから……。

        無表情の瞳が哀しみの色に染まる。


        三年前の入学式。

        珪は幼い頃、よく遊んだ思い出の教会に立っていた。

        春休みから続いた写真集の仕事は今日も続き、式には出られなくなってしまったのだ。

        自分がいなくても誰も困る人はいないからそれを承知していた。

        だが、どうしてもここに来たくて時間に余裕がある今、新しい制服に身を包んで出かけた

        のだ。

        はばたき学園の正門を潜れば、祖父に手を引かれて初めて来た時のように桜が花びらを

        散らして咲き誇っている。

        進行方向をずれればそれまで共に歩いていた生徒達と自然に独りになった。

        子どもの頃、良く歩いた道のりは、今となっては、何分も経たない獣道と化している。

        良い昼寝の場所を見つけたと思えば目的地へ到着して立ち止まった。

        初めて見たあの時より痛みが激しかったけれど、それでも、彼にとっては大事な思い

        出の場所、『自分の姫』と出会った場所なのだから。

        深緑の瞳に懐かしい姿のままの教会が唯一、出迎えてくれているようで嬉しくて

        つい、「ただいま」と言ってしまった。

        「きゃっ!」

        「っ!?」

        不意に後ろで何か小さなものが、ぶつかって倒れた音が耳に聞こえる。

        少し驚いたが、急いで振り返った。

        体格の良い彼は何ともなかったが、問題はぶつかって来た方である。

        「……っ!?」

        「いたたたた…」

        珪は目の前で頭を押さえて顔を歪めている少女を見て声を掛けるのを一瞬、躊躇してし

        まった。

        それは……

        っ!?

        彼がまだ幼かった頃、祖父の建設したこの場所で母親の古い絵本を読むのが日課になって

        いた。

        一度呼んだものは決して忘れないと言う人並み外れた特技を持っていても、この話が

        大好きで何度も読み返していた。

        そんなある日、教会へやって来ると、先客が一人いた。

        祖父が自分のために施した色とりどりのステンドグラスをじっと見ている。

        珪が意識しなくても扉は音が鳴ってしまうため、その人物は驚いて振り返った。

        それはピンク色の髪を二つに結んだ少女だった。

        「…やぁ」

        「こんにちはっ!」

        ぎこちなく挨拶した彼とは違い、彼女は元気一杯に返す。

        「こんな所で何しているんだ?」

        その行動に少し驚いてにこにこと笑っている少女に訊いた。

        「うん、あのね。町を探検してたら迷子になっちゃって、どうしようかなって思ったら

         綺麗な建物が合ったからここに来たの。鍵が掛かってなかったから中に入っちゃったけ

         どここって入っちゃいけなかった?」

        「そんなことないっ!俺がいつもここに来て絵本を読むだけだから…」

        そこまで言って自身の口をつぐんだ。

        彼の年で絵本を読むものはほとんどいないだろう。

        それを口に出してしまうことで、この自分に笑いかけてくれた彼女も去ってしまうだろう

        と強く唇を噛んだ。

        「絵本っ!?見せて見せて!!」

        しかし、それは取り越し苦労だった。

        少女は頬を桜色にしてこちらに飛びついてくる。

        (…変な奴)

        そう思ったが顔は微笑んでいた。

        「……何、これ?」

        二人並んで座ると古びた絵本を開いた。

        それを見た彼女は顔中のしわを寄せて目の前にある異国の言葉に訊ねる。

        「ドイツ語だよ。俺の祖父さん、ドイツ人なんだ」

        「すごいね!」

        「何が?」

        「わかんない。だけど、外国の人がお祖父さんなんて何かすごいよっ!」

        少女はやや興奮気味で自分を見た。

        「だから、綺麗な目してるんだね」

        そう言うとしばらく見つめられる。

        恥ずかしくなって目を反らせば、笑い声が聞こえてきた。

        「……何だよ」

        「ううん、何でもない。ねっ、早く読んでよ」

        「あ、あぁ…」

        何度も読み返した物語。

        既に、異国の言葉自体を覚えてしまっている。

        だが、自分以外の存在に聞かせるなら、共に生きる言葉を使うしかないだろう。

        それが最初の出会いだった。

        彼女はいつも彼が来る前に教会の中で待っていた。

        そして、いつも物語を聞いていた。

        だが、それは長くは続かなかった……

        「今、何て?」

        それはお互いの名前を告げてから一週間も経たないある日、それは急にやってきた。

        いつものように珪は、大きな絵本を抱えながら隣で座っているに聞かせ終わると、深刻

        な顔をして伝える。

        「俺……ずぅっと遠い国へ行かなくちゃいけないんだ」

        「何で?いつ、帰ってくるの?」

        少女は大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼしている。

        それを見た少年は一瞬、唇を強く噛むが、最初に出会った時のように柔らかく笑って

        見せた。

        「『私は旅立たなければなりません。でも、どうかかなしまないでください。私の心はあ

         なたのもの。たとえ世界の果てからでも、いつか必ず迎えに参ります』」

        「珪君?」

        彼女は驚きのあまり、泣くのを忘れて彼を見つめる。

        少年は頬をほのかに赤く染め、瞳の端に残る雫を指で拭った。

        「だから泣くな。約束」

        「…約束」

        絡めた小指の感触は小刻みに震えていた。

        それは、自分ものなのか少女のものなのか解らない。

        本当はこのままずっと一緒にいたかった。

        だが、それは叶わない願い。

        それならば、せめて物語のように迎えに来よう……大切な彼女のために。


        舞台の幕が下りた頃、彼は急いで着替えを済ませ、屋上に寝そべっている。

        ステージの上で純白のドレスに身を包んだと出会い、妙に鼓動が高鳴りつい、本心を

        口走ってしまった。

        もう、彼の中の姫を手放したくはない。

        あの頃は、弱かった。

        幼いが故なのか、少年はいつも回りに従っていた。

        あの時だってしようと思えば反抗的になることだってできた。

        でも、できなかった。

        自分はどうなっても良いが、回りの人間を傷つけるのではないかと怖がっている。

        それは今と何ら変わってはいない。

        そんなある日だ、彼女と出会ったのは。

        明るく笑う少女の存在にどれほど癒されたか知れない。

        けれど、日本を離れることを両親から伝えられた時、への想いに気づかされた。

        泣き笑いのように小指を握り絞める彼女への気持ちを今もよく覚えている。

        「……

        「なぁに?」

        急に間の抜けた返答がしたので古びた屋上の扉の方へ視線を投げた。

        そこには制服姿の彼女が荒く息を乱している。

        多分、ここまで駆け上がってきたのだろう。

        次の瞬間、倒れこむようにその場に座り込んだ。

        「大丈夫かっ!?」

        珪は飛び起き、を強く抱きしめていた。

        密着している体から鼓動が速いのが解る。

        どうしてここに来たかなんて現時点では聞けないと考えた彼はそれが許されるまでこのま

        までいたいと考えていた。

        あの時できなかったことを今はできる。

        自分はトクベツな人種だから…

        「珪……ごめんね。心配かけちゃったよね?」

        「……あぁ」

        そう返答すると気持ちが膨らんで、このまま彼女を放してしまえば、永遠に失うのではな

        いかと不安が過ぎった。

        だから、自然に腕に力が入る。

        「珪?あの……もう、大丈夫だから…」

        そう、決断を言い迷っているが愛しくて、思わず顎を掴んだ。

        「っ!?」

        「『私は旅立たなければなりません。でも、どうかかなしまないでください。私の心はあ

          なたのもの。たとえ世界の果てからでも、いつか必ず迎えに参ります』」

        「っ!?」

        瞳を大きく見開いて彼の言葉を聞いている。

        その反応に満足だと言うように一瞬、口元を緩めた。

        「……『お待ちしておりました、あなたのお帰りをただただ待ちつづけておりました』」

        「っ!?」

        今度は珪が驚く番だった。

        長い旅から戻ってきた王子に姫が言う言葉をが正確に覚えているとは思ってもいな

        かった。

        彼女は最後に会ったあの時のように泣き笑いを浮かべ、やっと言ってくれたねと呟く。

        「あの日からずっと忘れたことなんてないよ。…私の…初恋の人だから」

        「……ごめん、俺……ずっとお前に待たせていたんだな」

        「ううんっ…私も、ずっと、珪があの時の男の子かなんて自信がなかったよ。

         だって、……全然カッコよくなっちゃたし、それに……言ってくれなかったし」

        あの時のように彼女の涙を指で拭い、抱き寄せた。

        「言い出せなかったんだ……俺は、あの時と変わったから」

        「うん…でも、私にはあなたの魔法が解けるんだよね?」

        少女は何度も聞いた物語の終わりを不安そうに訊く。

        それは相手の気持ちを確かめるため……

        それが嬉しくて、彼は大きく頷いて見せた。

        「『いとしい姫よ、ただいま戻りました。お約束どおり、お迎えに上がりました』」

        「珪っ……会いたかった!!」

        彼の胸に顔を擦りつけ、泣きじゃくる少女の髪を優しく撫でる。

        「俺もずっとお前に会いたかった」

        何年も他の色に染まろうとしなかったのことを考えるだけで胸が締め付けられるような

        思いが駆け巡る。

        「…」

        彼女の名前を呼び、こちらを向かせるように顎を持ち上げた。

        「珪……」

        そう呟いた少女はそれ以上、何も言おうとはせず、ただ瞳を閉じる。

        彼はその行動を合図に、の唇に自身で軽く覆った。

        やっと辿り着けたそこは思うより優しく少年を受け入れる。

        「愛しているっ」

        一度離してから彼女に伝えた珪の顔は王子ではなく、ただの男、葉月珪だった。

        「……私も、愛しています」

        プロポーズのような告白に、ドキドキしながらそれに答える。

        「…」

        「珪……っ」

        お互いの名前を呼び合ってもう一度、口づけた。

        「んんっ、ふ……んっ」

        だが、今度は先程のような触れるか触れないかのキスではなく、確実に彼女を捕らえるよ

        うに深いものだ。

        息苦しさに鼻で息をしようとすれば無意識に口も開いてしまった。

        その隙を見逃さない彼は口内に侵入して少女自身を探す。

        絡めれば痺れたように動かなくなり、彼を抱きしめる腕に力が入った。

        舌先を軽く突付くと、動き出し、恥ずかしさをむき出しにちろちろと動く。

        その行動が嬉しくなり、しばらく口内を堪能してから唇を離した。

        「あっ…珪……」

        銀の糸を垂らしながらが色っぽく呟く。

        「……俺…ずっと待ってた」

        頬を赤く染めながらじっと見る彼女は既に自身の力では立つ事ができなかった。

        「あっ……ふぁ…んっ、んん」

        彼は有無を確認する前に首筋に赤い証を刻む。

        もし、拒まれたとしても自分が受け入れられたのだという事実を記すためだった。

        しかし、少女は艶かしい声を上げながら珪を放そうとはしない。

        それに驚いて彼女をじっと見ると、瞳を細めて優しく微笑んだ。

        「でもっ…ここじゃ……」

        「解っている。家に行こう」

        暗黙の了解で彼の腕に力なく寄り添いながらまだ、文化祭で賑わっている学校を後にした。


        「んっ……珪…」

        彼の部屋に入ると、優しくベッドに押し倒され、唇を強く求めた。

        「愛してる……」

        制服の上から二つの丘に触れると彼女の手が覆い被さる。

        「自分で脱ぐ……恥ずかしいからっ」

        「駄目だ。…俺、もう抑えられない」

        身勝手なことを言っているか解っていた。

        しかし、自分が愛しく思う女性の体を確かめたかった。

        額に優しく口づけると、それは元の位置に戻り、代わりに二つの頂が主張している。

        「もう、俺を感じているのか?」

        そんな当たり前のことを耳元で囁いた。

        「いやっ!そんなこと…言わないで…」

        身をよじって抗議するが、それを許す彼ではない。

        制服の裾から忍ばせた両手でそれを掴み、左で摩り右は揉んで攻め立てた。

        「あっ……んんっ……」

        頬を紅潮させたが何かに耐えるように瞼を強く閉じる。

        「俺を見ろ。お前を壊したい俺を」

        自分に抱かれて彼女がどう乱れるのか知りたい。

        「んっ……け…珪」

        「そうだ。俺の名前を呼べ、

        そう言うと、もう一度口内を攻め、その内に真紅のスカーフを素早く解き、二人を繋いで

        いる銀の糸を彼が器用に脱がせた上着で切断された。

        「……綺麗だ」

        再び、少年を見上げる頃になると、彼も上半身の肌を露出していてそれが眩しくて瞳を

        細める。

        「珪…なんか違う人みたい」

        「どうして?」

        「だって、こんなにがっしりしていて……それは海に行った時に見ているけどやっぱり、

         今と違うから……」

        彼女の言おうとしていることが解って組み敷いている自分を妙に意識してしまった。

        しかし、ここで照れている場合ではない。

        ブラジャーのフォックを外し、主張しあっている頂を口に含んで舌で転がす。

        「ひゃ…んっ、は…ぁ…ん」

        尖ったそれは彼を感じれば感じる程、硬くなってきた。

        「くっ……」

        いやらしい声で鳴く彼女に己は強く求めて痛みを堪えるのが苦しい。

        右手をまだ衣服を身につけている下部に伸ばしてスカートの上から秘部の湿り気

        を確かめた。

        「いやっ!……そこ、触っちゃ…んぅ!!」

        唇を強く噛んでこれ以上、声を出すものかと必死で堪えているように見える。

        そんなをいじめたくなって太ももをわざと感じやすいように何度も摩った。

        「あっ、あぁ……け……いっ」

        「ほら、こんなに濡れているぞ。このままで帰れるのか」

        「アアっ!意地悪…っ」

        その反応に満足した彼は微笑み、軽く唇にキスする。

        「俺に、お前のすべてを見せろよ」

        「でも…」

        「…大丈夫だ。今、を見ているのは俺だけだ。恥ずかしがるなよ」

        「う、ん……」

        すべてを取り去った二人は、一瞬、生まれたままの姿で抱き合うと、どちらからもなく

        唇を強く求めた。

        「……射れるぞ…」

        彼女の足を開かせ、指を差し込んで入り口を広げた後、迸りそうな自身を取り出し、そこ

        に沈めて行く。

        「くぅ……」

        「うっ!?…い…ぁ……」

        各々、表情を歪ませて体中を駆け巡る激痛に耐えていた。

        珪は歯を食いしばり、はシーツを握り締めている。

        「……頑張れ」

        「…あ、ふぅ……んっ…」

        しかし、二人が一つになって数分間してもその激痛は大して変わらなかった。

        「なぁ……」

        「何…?」

        「動いてもいいか…?」

        「えっ?…あっ……ちょ、まっ!!」

        「悪い。もう、…俺……待てそうにない」

        そう呟いたのが早かったか、彼は彼女の腰を掴み、最奥へと己に働きかける。

        その提案に忠実な分身はの中を突き進んでいた。

        「やっ……んっ…ふ……っ」

        再びシーツを掴みそうな動きをする手首を掴んで自分の方に引き寄せる。

        「そんなにしたら手が痛むだろ。俺に抱きついていろ。爪を立てたって良いから」

        「あんっ……イ…け、い…」

        消え入りそうな声に空いている唇を押し当てた。

        口内で彷徨った声色は鼻から漏れるのか、彼の頬をくすぐる吐息がさらに欲望を高ぶら

        せる。

        「っ、っ……くぅ…!」

        「ぁ…あぁ、っ……珪っ…珪っ」

        耳にはお互いの名前しか聞こえない。

        いつもならば、小鳥の声や隣の家の掃除機を掛ける音など聞こえそうなのに、今だけは

        違っていた。

        組み敷いているのは自分が幼い頃の初恋の相手。

        ずっと、待っていたこの時間。

        それは彼女にとっても同じこと。

        二人が最後に覚えているのは、何かが裂かれた音だったように記憶している。

        彼は果てる前に、何年もの想いを彼女の中に放った。


        「んっ…」

        「気がついたか?」

        少女が目をうっすらと開くと、上半身裸の少年が悪戯っぽく顔を覗き込んで来た。

        それが先程のことを事実だと彼女に確認をさせる。

        「……愛してる」

        目のやり所に困った彼女の唇を軽く吸った。

        すっかり乾いた素肌が互いを誘惑する。

        そんな状況に欲しない男はいなかった。

        「もう一度、お前を抱きたい」

        二人が再び体を求め合う頃には、既に日が暮れていた。

        彼女の弟の尽はこんな時は妙に勘が鋭く、アリバイを作ってくれたらしい。

        その後の代価が高かったのは言うまでもなかった。



        ―――終わり―――



        #後書き#

        何とか書き上げました初、葉月裏ドリ。

        ちょっくら、さぼっていましたから続きを書くのが大変でした。(汗)

        さて、文化祭の季節ですね。

        ほとんどの学校は終わってしまったのかもしれませんが、私の卒業した学校では昨日と

        一昨日の二日間ありました。

        久しぶりに後輩に会えたのは本当に嬉しかったのですが、人手が足りないとのことで

        お客の身である私は二日間とも売り子をやってて現学校の方に行く気力がなくなりまし

        た。←いやぁ、年とるのは嫌なものですね。(笑)

        でも、今は何の部活にも委員にもなってないからお声は掛かってないのでノープロブレム

        です。

        久しぶりに忙しくなったのでどこか喜んでいる自分がいる分、嘆いている自分もいまし

        た。(撃沈)

        この度はこのようなものを読んで下さり、ありがとうございました。