Trial4 ―――必殺!―――


      あれは中学二年の正月でした。

      俺は冬休み中も部活で、いつも宍戸さんと帰っていました。

      ♪〜…

      いつもと変わらない日々。

      それに不安を感じているのは、俺だけだと、ため息を吐いていると、どこからとも無くピアノ

      の音色が聴こえてきました。

      みんなは監督か他の先生が弾いているんじゃないかと、言っているのに俺は気がついた時

      には音楽室に向かって走っていました。


      だって、今まで聴いたことも無い旋律を奏でているんですよ?

      俺はピアノもヴァイオリンも趣味として弾けます。

      だからでしょうか、この氷帝の教師が奏で方を一通り把握しています。

      けれど、どの方のものとは明らかに違っていました。

      胸がどきどきする。

      俺は今、音楽室のドアに凭れ掛かっています。

      背中越しに感じる物悲しく響く「ラ・カンパネッラ」。

      俺はそんな「ラ・カンパネッラ」を知らない。

      俺が知っているのは華やかなものや清楚の感じだけだ。

      俺は苦しい胸を押さえるように音楽室の扉を静かに開いた。

      今にも崩れ去りそうな旋律を壊さないように。

      俺は器用にもその隙間から転がり込むと、漆黒の闇を艶やかに誇るグランドピアノの傍まで

      やってくると、思わず「あっ!」と声を上げてしまった。

      そこにいたのは、世界最年少のピアニストであるさんがいたから。

      俺も雑誌でしか本人を見たことがない。

      「哀愁のピアニスト」と言う別名を持つ彼女は俺よりも年下で、まだ中学一年生だ。

      それなのに、限られた最中でも俺はこの少女の笑った所を見たことが無かった。

      『…どなた?』


      さんは、俺を見てもまったく動じず小さく呟いた。

      ピアノと同じくらいに闇の光沢を放つ長い髪と瞳。

      でも、そのいずれも何かを失った後だった。

      彼女は普段、男装をしてこの学園に在籍をしているそうだ。

      名前はさすがに教えてもらえなかった。

      『おーい、長太郎』

      やばい。

      宍戸さんを待たせていたのを忘れていた。

      声からすると、音楽室の手前まで来ている。

      さすがに二人目はまずいのか、さんが目で隠れる場所を探している。


      『ちょっとごめんっ!』

      『ひゃあ!?』

      やっぱり、年頃の女の子だ。

      俺が手首を掴むと、頬を染めて可愛らしい声を出した。

      だけど、今はそんなことにどきどきしている暇なんて無かった。

      ♪〜…

      俺の「ラ・カンパネッラ」。

      彼女には負けるけれど、俺は俺で精一杯弾いた。

      胸に抱いた小柄な少女のために…。


      『何だよ。人を待たしておいて、てめぇはのん気にピアノを弾いているのかよ!』

      『すみません、宍戸さん。俺、今、トイレに行ってる一年生にピアノを教えるの

       を忘れていたんです。今日は一人で帰ってくれますか?』

      見え透いた嘘を人が良い宍戸さんは簡単に信じた。

      心の中で謝っていると、胸に固まっている何かを思い切り抱きしめたような感覚に襲われる。

      ?…!!

      俺はわざとらしい芝居につい忘れていたんだ。

      そこには頬を赤くした小柄な彼女がいることを…。


      『うわっ!?ごっ、ごめんっ!?』

      だが、それは序章に過ぎなかった。

      慌ててその場から離れようとした瞬間、俺はイスを倒した反動を受けて自分も尻餅をつく形

      で反り返った。

      次に目を開けた時は痛みと共に逆流した血液の速さに動揺した俺がいた。

      『大丈夫ですか?先輩』

      俺に覆いかぶさるさんと目が合った。

      この体制は……まずい。

      いくらなんでも年頃の男女がこういう体制になるのは問題があるだろう。

      だが、その考えなど彼女の頬の赤の中に吸い込まれていった。

      『あっ…』

      首筋に咬みつき、その反動と共に、唇に深く吸い付いた。

      舌をちろちろとぎこちなく動かすのが、どうしようもなく可愛らしかった。

      『ふぅ、……あん、あ…あっ』

      育ちきっていない胸に貪りつくと、の喘ぎが聞こえてきた。

      それに俺の下部は敏感に反応して締め付ける。

      『あん、…あん、ふぁっ』

      赤ん坊のように吸い付けば、彼女が俺に抱きしめてくる。

      『あっ、あっ…んっ……せんぱ……い』

      ため息のようにこぼれる言葉に俺自身も限界が近かった。

      『痛っ!……あ、ああっ…』

      硬くなった俺自身を湿り気を帯びた場所に突き入れる。

      恐らく初めての痛みであろう感覚に、涙を流すにキスをする。

      お互い息が乱れているからだろうか、啄ばむような短いものでも軽いめまいがした。

      『あんっ、あ、あ、あ、……あああああっ!!!!!』

      衝動のような想いを放った俺を意識が遠のいていくまで見つめていた。

      『だいすき』

      その声でわれに返ったのは言うまでも無かった。

      衝動的に憧れの人を抱いてしまったんだ。

      でも、……それ以上の感情もあったのは事実。

      『俺も…がずっと好きだった』

      消えかかる意識の中で見たのは、恐らく誰も目にしたことはない本当のの笑顔だった。



      ♯後書き♯

      長っ…。(爆)

      初でこの長さって一体。←自分で書いておいて言うなよ

      Trial4「必殺!」はお楽しみ頂けたでしょうか?

      半ば18禁ソフト系になってしまいましたね。

      初出演なのに、鳳君ごめんよっ!

      それでは、皆様のご感想をお待ちしております。