海に行きたい。
      越前が言った。
      よっしゃ任せろ!
      そんなわけで、俺たちは一路海へ向かっている。





   In the sea





      「桃先輩、夏休み中どこでも連れてってくれるんすよね?」
      部活が終わったあと、越前にそんなことを言われた。
      「う、まぁ。行ける範囲ならどこでも」
      「じゃあ俺、海行きたいっす」
      「海?」
      まぁ海ならここから自転車で行けないこともないし。
      夏といえば海だし。
      今日の練習は午前中だけだったし、それに天気もからっと晴れて、絶好の海日和だし。
      「海か。よっしゃ任せろ!」
      海への道はあやふやでちょっと怪しいけど、でもなんとかなるだろう。
      俺たちに時間は、まだたくさんあるのだから。



      行きはあやふやな記憶ながら順調だった。
      海へ近づくにつれ、かき氷は絶対食うよなだのビーチボール持ってきたけどふたりで遊ぶの淋しく
      ないすかだの騒ぐ声が大きくなって。
      期待は膨らむばかりだった。
      なのに。
      あの天気で、誰がそんなことを疑う余地がある?



      一昔前のメロドラマみたく、あはは待てよコイツぅ〜、おほほ捕まえて御覧なさ〜い、なんて、浜辺
      を追い掛けっこでもするか。
      そしてあわよくばそのままくんずほぐれつ云々……。
      俺はアヤシイ方向に逸れながら、妄想劇を繰り広げていた。のに。
      「ありえねぇな。ありえねぇよ」
      俺たちふたりが海へ着いた途端、雲行きが怪しくなり、さっきまであんなにいい天気だったのに
      あっという間に雨が降りだした。
      「桃先輩日頃の行い悪いんじゃないすか?」
      越前がまたそんなことを言うし。
      正直ぐさりときた。
      自分では悪いことをしているという意識はないし、日頃の行いもまあまあ良いほうだと思うし、それ
      でも越前の一言が俺に及ぼす精神的ダメージは計り知れないものがあるのだ。
      そんなこんなで俺がしょぼくれてうずくまっていると、手が差し出された。
      おそらく越前の。
      「なんだよ。ほっとけって」
      「せっかく海来たのに泳がないんすか、桃先輩?」
      頭上から呆れたような声が雨とともに降ってきて、俺はばっと顔を上げた。
      「だけどよ……」
      「雨なんか、関係ないっすよ」
      そう言って、越前は綺麗に笑った。
      そうだ。
      雨なんて俺たちには関係ない。
      それがどんなに冷たくたって、関係ないんだ。
      だって越前がそばにいる。
      俺たちは雨のシャワーの中を、遥かな水平線に向かって走りだした――――。
      FIN.

 

 

 

         †柊沢のありがたくもない感謝状†
         舞ちゃん、連載第二段お疲れ様です!
         この作品を見てやはり、BLは良いよなぁと、よだれを垂らしてしまいました。(冗談)
         BLはさわやかなところに魅力を感じます。
         逆に、Dream小説は何かを織り込ませていないと魅力を感じませんね。
         私も今BLの裏に挑戦していますが、なかなか思うとおり話が進まなくて焦っています。
         もし、宜しければ、その一歩も一緒に頑張りましょうね。(笑)

         それでは、次回も宜しくお願いしますね。