In the sky
待ちに待った夏休み。
暫くは部活ばかりで遊ぶ暇もなかったけど、今日は久しぶりに休み。
大好きな彼を誘って、二人でどこかに遊びにいこう。
「何処行くんすか、桃先輩?」
結局いつもと変わらない、川原の土手を行く自転車の二人乗りデート。
何処行くんすか、なんて言われても、そんなの決めていないから、
「何処行くとか特に決めてねーよ」
と答えたら、
「これだから桃先輩は……」
なんて言われた。
「これだから、って言い方ムカつくな。なんか言いたいことでもあんのか?」
「ぜーんぜんないっすよ」
「ったくホントかよ」
せっかくの夏休みなのに、せっかくの部活休みなのに、結局いつもと変わらない。
だけど、いつもと変わらない他愛もない言い争いは妙に清々しくて、悪い気分ではない。
「そんなことより桃先輩、もっと安全運転お願いしますよ」
「うっわ、乗せてもらってる分際で生意気な〜! おらおらこうしてやる!」
「うわっ!」
ハンドルを左右にきって蛇行する。
俺ってなかなかハンドル捌き巧いんじゃねー? なんて思ったのも束の間。
――――ガシャーン……カラカラカラ……
やべぇ、転ける! と思った瞬間、目の前が真っ白になって――――。
はっと気付いたら、目の前には青い空があった。
「越前……大丈夫か?」
あれだけ豪快に転けておいて大丈夫なはずないか、と、言った後で考える。
「ったー……。だから安全運転って言ったのに」
俺は上半身を起こし、辺りを見回した。
夏草の生い茂る土手に、見事に引っ繰り返った自転車と、大の字に寝転がる越前。
「まっ、たまにはこういうのも悪くねーんじゃねーか?」
それを見習って俺も大の字に寝転がってみる。
さあっ、と爽やかな夏風が吹き抜けた。
「…………まぁ、たまに、なら」
越前がぼそりと呟く。
「安心しろって。毎日こんなことしてたら俺もお前もチャリももたねぇ」
越前の方を向き、へへっと笑うと、笑顔が返ってきた。
俺たちは暫くそうやって笑っていた。
鮮やかな緑の大地の上。
高い青い空の下。
大好きな人と二人。
何処か遠くで、風鈴がちりん、と鳴った。
夏休みはまだ始まったばかりだ。
さて、明日は何処へ行こう?
FIN.
柊沢様、参加させてくださってありがとうございます!
企画、ということでかなり張り切ったのですがものすごく短くなりましたf(^ ^;
でも終わり方とか作品の雰囲気は結構気に入っています♪
桜もいつか自分のホムペで企画物とかやりたいなぁ(遠い目)
†柊沢のありがたくもない感謝状†
舞ちゃん、素敵な作品をありがとう!
いえいえ、こちらこそ唐突過ぎる原石参加ありがとう!!
短いだなんてそんなことは気にしていないよ♪
第一、私自身が短いもの『返事のない手紙』を書いているからねv←駄目じゃん(爆)
おっ?舞ちゃんも企画志望っすか?
良いっすね(笑)
その時はこの不肖柊沢もお手伝いさせて下さいね。
それでは、次回も宜しくお願いしますね。