Trial17―――壁打ち練習―――

           なぁ、東方。

           いつもすまねぇ。

           俺は部長だから一人突っ走る癖がある。

           だからなのか地区予選が終わって俺は毎日時間があれば壁打ち練習を

           していた。

           俺達のコンビは良かった。

           なのに、俺が知らぬ間に穴を作っちまっていたんだ。

           大石を一度倒していると言う甘さが俺の脳裏にあった。

           だから、今年も全力で行けば必ず勝てるんだと思い込んでいたんだ。

           馬鹿だよな。

           これじゃ、地味だなんて言われてもしょうがない。

           俺達は所詮基本動作をマスターをしていたって限界を超えたこと

           がない。

           それ故、千石みたいな技も亜久津のような天才も備わっていない。

           俺達はあいつらと違って極普通にテニスが好きなだけで、これと

           言って取り柄が無い凡人だ。

           だから、強くならなければならないのならそれ相応な努力を重ね

           なければならなかった。

           なのに…

           『ズルイぞ、南っ!』

           今日も自宅近くの公園で壁打ち練習をしていると、そんな声が

           背後からした。

           それは、この三年間ダブルスを組んでいるお前のものだった。

           俺が唖然としていると、すぐ隣で同じように壁打ち練習を始める。

           なぁ、東方。

           俺は馬鹿だよな。

           独りで突っ走って、さ。

           そんなことをしても無駄なんだ。

           俺じゃなく俺達が強くならなきゃ話になんねーてのによ。


           なぁ、東方。

           一緒に強くなってやろうぜ。

           俺達が揃って初めて地味’S≠ネんだからよ。




           ♯後書き♯

           Trial17「壁打ち練習」はいかがだったでしょうか?

           南東ペアにしたのは、単に山吹を作業したかっただけです。

           しかし、今頃気がついたのですが、大体の学校は統一しました!

           それでは、このお題での全国統一も頑張ります。