Trial14―――ケンカ―――

      なぁ、

      何で、最近そう怒ってんだよ?

      俺が、そう聞くと「怒ってない!」って返すんだよな。

      そー言う所昔のまんまだぜ。

      俺達はルドルフ時代に出会った。

      あの時の俺はまだ兄貴を変にライバル視をして躍起になっていた。

      だけど、お前はいつもそんなイライラしている俺を他の奴らみたいに避けよう

      とせず、
本気でケンカしてきた。

      そんなの……だけだから俺はいつの間にか惹かれて三年のGW明けにコクった。

      それが運命の相手だなんて夢にも思わずに…。

      あれから八年後、俺達は大学を卒業した同時に結婚をした。

      まだ真新しい薬指がくすぐったいのに、何でだよ!

      …そう、思っていたんだ。

      馬鹿だよな、俺。

      半強制的にケンカしていることだけに頭がカァと熱くなっちまって、さ。

      今日は、俺が三年前にコクってお前と付き合い出した日だったんだ。

      式前にはどんな記念日も忘れたりなんかするかって思っていたのに、案の定

      こんな大切な日を忘れていた。

      前言撤回も良い所だよな。


      『好きだ、っ!』

      あの時と同じ言葉でお前を抱きしめ締めようとすると、いきなり顔を歪めたかと思う

      と
慌てて洗面所に駆け込んだ。

      何だ?

      俺は妻の非常事態に数秒呆然としてからまるで糸が途切れたように急いでその後に

      付いて行った。

      そこに待っていたのは目の前の事実とずっと知りたかったケンカの原因だった。

      確かに、俺が一番大切な記念日を覚えていなかったのは気に食わなかったらしい。

      だが、その他にも理由はあった。


      『三ヶ月……だって』

      頬を染めて腹を擦るに最初意味が分からなかった。

      キッチンから塩を持ってきて口を濯ぐお前を見てようやく事情が飲み込めた。


      なぁ、

      この返事のない手紙なら言える。

      大切な日を忘れてごめん。

      そして、ありがとう。

      俺の子供を宿してくれて…。



      ♯後書き♯

      Trial14「ケンカ」はいかがだったでしょうか?

      本当は六月にこのネタをやった方が良いんじゃないかと悩んだんですが、毎年GWの

      予定
がない柊沢はこうして暇つぶしでサイトの更新をしています。(笑)

      裕太君初手紙だったんですがいかがだったでしょうか?

      意外と新婚ネタはあまりメジャーじゃないみたいなので、(私もあんまり下手な

      ことを
言える身分じゃありませんが)今回作業してみました。

      それでは六月と十月もお楽しみ下さい。