Trial19―――なかなかやるな―――

                    なぁ、長太郎。

              まだお前の感触が残っているぜ。

              目を瞑れば匂いまで想像できる。

              今日は二人で練習をしていた帰り、喫茶店からウェディング

              ドレス姿の花嫁とタキシードの花婿が出てくるのを見た。

              要するに、今流行りの地味婚って奴だ。

              TVでは良く目にしたが、本物を拝めるとは夢にも思わなかった。


                     『キレイですね』

                     『あぁ』

              長太郎がそう言って時だった。

              純白のドレスを軽々と横抱きにした男は今にも女を浚っちまい

              そうだった。

              女も女で一瞬、驚いた顔をしたくせに、次には幸せそうな

              顔で笑った。

              今日はあの二人の新しい始まりになるんだな。

              六月に結婚すると永遠に幸せになれる…か。

              昔、お袋がそんなことを教えてくれた。

              全く、自分がその何千何万だかわかんねぇー六月の花嫁だった

              からって息子にまでそんなことを自慢しなくても良いだろうが。

                     『なかなかやるな』


              だが、長太郎の返事はなかった。

              お前はあの二人の幸せそうな笑顔で消えていった道路を

              ずっと見ていた。


              (はぁ……仕方ねぇな)

              俺は心ん中でため息を吐くと、長太郎を呼んだ。

                     『何で…』

              腕を何か言おうとしたお前の首に絡ませ、強引に傾く形になった

              長太郎の唇を塞いだ。

              …短く漏れた息が妙にいつもより色っぽくてヤバかったが。


              なぁ、長太郎。

              んな顔をするなよ。

              またキスしちまいたくなるじゃねーかよ。


              もしかして、あいつらの幸せそうなツラに妬けたのかよ?

              なら、俺がもっと頑張らなければなんねーな。

              お前がこれ以上そんなツラをさせないように。

              俺のことを考えられないように、俺の下で鳴いてもらうぜ。

              なぁ、長太郎。




              ♯後書き♯

              Trial19「なかなかやるな」はいかがだったでしょうか?

              やってきましたねぇ、この月が。

              今作は、宣告通りウェディングネタを作業してみました。

              宍戸×鳳BL手紙。

              BL小説の方では逆でしたが、この二人は久しぶりだなぁと初心に

              返ったつもりで作業しました。

              最後が裏風味になってしまいましたが。(汗)

              それでは、皆様のご感想をお待ちしております。