Trial28―――パジャマ―――

       ……もう、諦めなきゃ。

 

       そんなこと何度思ったんだろ?

 

       でも、俺は諦められなくて結局、いつもの夢を見るんだ。


       昔の人はパジャマを裏返しにして大事な奴の夢を見たようだけど、

       俺はそんなことをしなくたって自動的に出てくる。


       ……ダメだ……またあんな顔をされちゃ、俺、気持ちの整理が付かない。

 

       不二先輩…。

 

       アンタがいつもそうやって笑っていると本心を見たくて俺はいつも

       生意気なことを言ってる。


       だけど、そんなことも見透かすように笑い返してくれる。

 

       ねぇ、不二先輩。

 

       そんな顔をしないで下さい。


       アンタが誰を見ているかなんてここに入る前から解っていた。


       だから、俺はいつも何にも関心がないような態度を取って一人で

       大人になろうとしていた。


       今から思えば、ホントバカな考えだよね。


       そんなの子どもがする事だってわかっているのに、俺は何でもできない。

 

       『越前』

 

       あの人が俺を呼ぶ度、俺を見る度、アイツに話しかけている度、

       気が狂いそうになる。

 

       ねぇ、不二先輩。

 

       そんな目で、声で、顔で、俺を感じないで。


       あのままアンタのこと好きにならなければ、こんな気持ちなんて知らずに

       済んだのかな?


       不二先輩の所為だよ。

 

       こんな勝手な想いは、子どもの恋愛?

 

       それでも良い。


       俺は、来月から二年になる。


       …アンタのいないテニスコートに立つ。


       やっぱり、俺はあの人の残像を追いかけている。


       あれは、春霞が見せた俺自身の心の内。

 

       ねぇ、見ててよ。

 

       俺はここにいるんだから、さ。

 



       ♯後書き♯

       Trial28「パジャマ」はどうでしたか?

       今作は、不二リョで春らしく切ないBL手紙にしてみました。

       やっぱ、このお題では、失恋系を使ってみたくってv(殴)

       もう、卒業シーズン。

       柊沢も懐かしむようになりました。(ため息)

       それでは、次回もお楽しみに。