Ripple

      都内からさほど遠くない浜辺は、家族連れで賑わっている。

      青い空には雲一つなく、夏の日差しが照りつけていた。

      波は二メートルもあったりして乗り遅れた人々が、それに飲み込まれたりするが、

      それには臆することなく海水
浴を楽しんでいる。

      「ねぇねぇ。彼女ぉ、俺達と一緒に泳がない?」

      「けっ結構です!」

      だが、そんな穏やかな雰囲気を他所に、海の家の更衣室から出てきた少女を男性四人が

      取り囲んでいた。

      「連れがいますので通して下さい!」

      彼女が一礼して見せるが、彼らはそれを笑って見ている。

      「何?女の子?だったら、俺達とお話ししよう…」

      「悪いが、俺は貴様らとそんなことをする筋合いはない」

      「薫っ!」

      少年達の背後から声が響き、後ろを振り返った者は次々に石化し、少女はその隙間を

      縫ってその人物に
抱きつく。

      「俺の女に何か用か?」

      その人物は彼女の髪を撫でながら彼らを見回した。

      「いえ、何でもないっす!それじゃあっ!!」

      そう言って彼らは遠くの浜辺の方に駈けて行く。

      途中で砂に足を取られ、危うく転びそうになっているのをその人物の腕の中から

      見送る。

      「ったく、……そんなカッコするからだ」

      その声に密着している体を急いで離し、その顔を見上げる。

      表情は険しいが、頬を染めて瞳を逸らしていた。

      彼女は青春学園中等部の二年、

      今日は彼氏である海堂と海水浴に来ている。

      彼女は今日のためにおやつを我慢し、普段はしない筋トレなどで体を動かして

      セクシーなビキニを上手に着こ
なした。

      「だって、この色好きでしょ?」

      その行為にやっぱり派手すぎたかと思うと、何だか自分が莫迦らしく思えて来る。

      ショッピングを楽しんでいたある日、ショーウィンドーに飾られていたこの水着を

      見てこれだと決めた。

      海に似て深く空に溶けるような青が、彼も気に入ってくれるのではないかと思った。

      「…それを着るのは俺といる時だからな」

      「えっ?きゃっ!」

      彼はそう言うと、の華奢な体を強く抱きしめた。

      水着を着けているからといっても薄い布切れ同然で、余り抱き合っているとお互いの

      体形が相手に知られてし
まいそうだ。

      「薫っ……苦しいよ」

      このままキスをされるんじゃないかと鼓動が段々高鳴っていく。

      「……お前…………痩せたのか?」

      「へ?」

      頭上からいつもと変わらない低音の声が響き、思わず顔を上げた。

      「水着だからかもしれないが、いつもと感じが……っ!?」

      彼女が見上げると同時に、視線を合わした彼は何かに気づいたようで慌てて逸らす。

      「「いつもと」何?」

      「ばっ!そんなにくっつくな」

      「ひどーい!抱きしめてきたのはそっちでしょ!?」

      海堂がの肩を押すと、意地になって力ある限り抱きついた。

      「なっ!?お前…どうなっても知らねぇぞ!」

      「どういうこ…ひゃっ!?」

      そう言うのが早かったか一瞬身を屈めた彼は、彼女を抱き上げて海とは逆方向に

      向かって歩き出す。


      「ちょっ!薫、何処へ行くのよ!!」

      「……が悪い」

      「えっ?」

      「が悪いんだぞ。俺の理性を吹っ飛ばすようなことをしたから…」


 


      海の家を通り抜け、道路沿いに歩みを進めて数分、誰もいないほとんどプライベート

      ビーチに近い小さな浜辺
にたどり着いた。

      「どうしてこんな所に?」

      その場に下ろされると、海堂の方へ振り返る。

      表情は何かを決心したかのようで、そっと彼女の頬に掌を添えた。

      その感触に電撃が体中を駆け巡り、自由が利かない。

      一方、彼は何度目かのキスをすると呟くように言った。

      「……が欲しい」

      「薫っ!?」

      口づけの余韻で酔った瞳が一瞬にして丸くなる。

      「良いか?」

      海堂の瞳に映る自分を見ていたくなくて、彼女は瞼を下ろした。

      「……」

      「…………良いよ」

      彼に呼ばれて開いた瞳には、もう迷いはない。

      「でも……私っ……初めてだから」

      「俺も初めてだから優しく出来ないかもしれないが、それでも良いか?」

      「ん…」

      彼女が再び瞳を閉じるのを合図に、唇を深くし、自身を口内に忍び込ませた。

      「ふぁ…」

      舌を絡めとられ、呼吸する隙を与えない。

      水着の上から胸を触り、がぴくりと背を逸らせる。

      「ああっ!?」

      それを知ると、彼は腰に手を回し、彼女に体重を預けるよう促した。

      初めての感覚に酔った目で海堂を見つめ、それに応じる。

      「…好きだ」

      それにより、すでに飛んでいってしまった理性が再び戻ってきた。

      「……私もっ」

      そのままの状態で彼女を浜辺に下ろしその上に覆い被さる。

      水着を固定していた紐を解き、生まれたままの姿が露わになった。

      「きれいだ」

      「いやっ…………あまり見ないで」

      顔を背けて目を伏せるが、海堂が体中のあちらこちらに赤い花を咲き淫らし、

      口を手で覆って声を殺す。

      「の声が聞きてぇ…」

      「だ…めぇ……ああんっ!」

      彼女の耳元にそう囁くと、耳朶を甘く噛まれる。

      「薫っ、やぁ…」

      その感覚に口を覆っていた掌が砂浜に力なく落ちた。

      「っ…っ…」

      胸の頂きを口の中に含んで転がし、もう片方を掌で覆い揉み解す。

      「ふぁっ」

      「もっと、お前の声を聞かせろ」

      「あぁ……んっ……薫っ……あぁ!」

      海堂は片手を下部へ伸ばすと、ぴくりと体を揺らし、声を甲高く響かせた。

      手の感触にはっとしてそこを見ると、既に湿り気を帯びている。

      「やっ…………そんなに見ないで…」

      胸を掴んだまま行動を止めたのに、不振を感じた彼女は彼の視線に気づき、今にも

      消え入りそうな声で訴え
た。


      「こんなに俺を感じているのか?」

      「いやぁ……そんなこと言わないでっ」

      海堂がいきなりの秘部に指を射し込んできて、今まで感じたことのない痛みに

      体を跳ねさせる。

      「薫っ…あっ……薫っ……」

      首を勢いよく振ってその痛みに耐えて彼の名を呼んだ。

      強く閉じた瞳の端からは涙が何度も頬を伝う。

      一方、海堂の指には肉壁が攻め力強く閉めてきた。


      「クッ…………もう少し力を抜いてくれ」

      「……そんなっこと……言われ……あぁっ!」

      「チッ……射れるぞ」

      彼の腰を強く掴んでいた彼女の足を無理やり広げ、自身を十分濡れたそこへあてがう。

      「えっ?…ちょっ、まっ」

      「悪いがもう、これ以上待てない」

      その言葉が合図だったかのようにの腰を掴んでそれを突き入れた。

      「イッ!」

      「くっ!」

      二人は互いに与えられた刺激を耐えながら顔を歪める。

      「もっと……力……抜け」

      「んっ……そんな、ことっ……アアッ!」

      内壁が海堂自身を閉め付けて思うように進まない。

      彼女は何かが自分の中を切り裂いてくるのに、本能で拒絶していた。

      「っ……俺に……抱きつけっ」

      彼の言うことに従い、砂だらけになった腕を回す。

      背中に腕を回しているだけで幾分か楽になった気がした。



 

 

 


      「…ねぇ、これどうしてくれるのよぉ」

      「知るかっ」

      二人は気がついてから何度も深いキスを交わし、来た時同様に海堂が彼女を抱え歩く

      姿が誰もいない車道にあった。

      彼としては無理をさせてしまった後なのでこんな手段を取るしかなかったが、

       にとっては別の意味で歩いて帰りたくなかった。

      「薫の馬鹿…」

      「うるせぇ!俺以外、そんなカッコ見せんな」

      「えっ?もしかして、妬いてる?」

      「なっ!……あんまりうるせぇともう一度ヤるぞっ!!」

      「きゃっ!ごめんなさい。嘘です。もう、言いません」

      先程の出来事を思い出し、まだ感覚を覚えている体が火照る。

      その体のあちらこちらには赤い花が見えた。

      それは先程、海堂が咲かせたものである。

      時刻は昼過ぎ。

      もう、海を満喫する余裕はなかった。

      先程までいた浜辺では勢い良く白い波を立っている。

      更衣室までこの格好でいたら注目を浴びることは間違いないだろう。

      彼の首に腕を回し、軽く抱きつく。

      「薫っ……好き……」

      「っ!?」

      海堂は驚いて彼女の方を見ると頬を赤くし、瞳を閉じる。

      無言の合図に唇を寄せた。

      甘く絡み合うようにそれを奪い合う。

      様々な角度からお互いを味わう。

      「…愛している」

      「私も…。……あの、ね……薫」

      「何だ?」

      彼女が、もじもじしながら何かを自分に伝えようとしているのが解った。

      彼は出来るだけ優しく聞き返す。

      その顔には普段は浮かべない笑みが浮かべられていた。


      「もし……私で良かったら…………また……シて良いよ」

      「!?」

      海堂が瞳を大きくすると同時に、彼女は苦笑を浮かべて目の前で掌を急いで振る。

      「良いのか?本当に、俺で」

      「うん。私、薫を……愛しているから」

      「…俺も愛しているっ」

 

 

 


      ―――・・・終わり・・・―――

 

 

 


      ♯後書き♯

      裏作新登場の海堂はいかがでしょうか?

      今回は「ふしゅー」無しです。(←の台詞が好きな方すみません)

      この作品は読んで下さる皆様へ私からの海のお土産です。

      勝手ながら関東で一番「夏」と言われた時期に行かせて頂きました。

      いやー、今なんて腕とかの皮がむけて外に出られない状態なのです。(悲)

      ご感想だけではなく、気楽にお話しに掲示板への書き込み宜しくお願いします。