ねぇ、


         君は覚えている?

         僕が君に本気になりだしたことを…。

         でも、にとっては極当たり前のことだったんだろうな。

         君は俺にとっての特別であってウチの特別な存在だから。

         山吹中学校二年

         君はテニス部の大切なマネージャーだった。

         あの亜久津にも凛として立ち向かった女の子。

         あいつがこのテニス部を去ってもそれは変わらなかった。

         見かけるたびに声を掛け、軽い世間話をしていたのを見たことがある。


         ねぇ、

         そんなに楽しそうにしないでよ。

         俺だけにそんな無防備な微笑を向けてよ。

         あれは都大会での青学戦後だった。

         俺は桃城君とのゲームにこれでもショックを覚えていた。

         そんな時だった。

         君がオレの顔に氷のかけらのように冷たいスポーツドリンクの缶を

         押し当ててきたのは。

         オレが目を丸くしてそれを受け取ると、その隣で、はまるで、何もなかったか

         のように同じものを飲んだよな。

         それは、レギュラー全員に配られた君なりの励ましだった。

         だから、あの時、君が気持ち良さそうに飲み干していたのは、亜久津のもの。

         …ねぇ、そんな顔しないでよ。

         そんなに可愛い顔でアイツのものを飲まないで。

         ……なんてオレはそんなくよくよしたことなんて言わないよ。

         オレは、知っているんだ。

         実は、がオレのことが好きなことを。


         いつ頃だったかな?

         いつもの放課後、君が部活になかなか来ないからちょっと抜け出して教室に

         迎えに行ったことがあるんだ。

         そしたら、が何人かの女の子に囲まれて頬を赤く染めて落ち着きのない

         素振りをしていた。

         オレは何となく教室側の壁に隠れた。

         すると、何分もしないうちに女の子の声がしたんだ。

         『でも、千石先輩って可愛い女の子がいたらすぐそっちに気が向いちゃうって

          有名じゃない。あんな人が良いの?って物好きだね』

         『そっ!そんなことないよ。……確かに、そんな所もあるけれど、凄く

          優しい人だよ』

         それは、紛れもない君の声だった。

         オレはそれを聞いた途端、幸せな気持ちになって気づかれないように

         テニスコートに戻ったそれから何分も遅れてからがやって来た。

         オレは平然を何とか装ったけど、やっぱり笑っていた。

         それから季節も過ぎて今は、夏休み。

         今度何気なくデートに誘ってみようか?

         さぁーて、そしたら、君はどんな顔をしてくれる?

         驚く?

         それとも…笑ってくれる?

         ちょっとずつ、をオレ一色に染め上げていく。

         最も、これは、一つのきっかけ。

         オレにはまだ勇気がない。

         だから、君を俺だけ見るように仕向けてコクる。

         オレの計画では、夏休み終了日。

         最後の決戦日。

         その時、君が眩しいくらいの微笑みをよせてくれますように…。



         ♯後書き♯

         皆様、こんにちは。

         夏休みを利用して海に行ってきたです。

         今回はこのサイトでは初めての山吹キャラを取り扱ってみました。

         今回も「夏」を取り扱いましたが、いかがなものだったでしょうか?

         このテーマは結構な数をネタがありますので、それを全部出来るかはちょっと

         考えてしまいます。(爆)

         それでは、皆様のご感想を心よりお待ちしております。