Trial21―――怒り―――


      殿。

      どうしてあなたはそうお怒りなのですか?

      大晦日のあの後、私達は共に京にて暮らし始めました。

      あなたはいつも仕事で疲れた私が邸に帰ると笑顔で迎えてくれます。

      そんな殿が可愛らしくて私は今日も良い仕事をしたと安心して眠ることができるのです。

      しかし、最近のあなたはどこか辛そうな表情を時折なさる。

      殿。

      私はあなたを全て受け入れていなかったのですね。

      私が問い詰めるとお怒りなさる殿を強く抱きしめた。

      華奢な体を包み込めば、同時に私を狂わせる香りが鼻を掠めます。

      あぁ…それは、愛しいあなたのものなのですね。

      私は若過ぎました。

      その雅な香りに我を忘れ、私は殿の唇に自分のものを委ねました。

      振り返れば、あれからもう少しで四ヶ月になるのに私はあなたに何も求めることは

      しませんでした。

      もしかしたら、私は恐れていたのかもしれません。

      今までの自分が壊れてしまうことを。

      殿を私の罪深き汚れた手で汚してしまうことを。

      ですが、あなたのお怒りになる原因もそうでした。

      瞳を潤ませながら必死に訴える姿が愛しくて、私は少々乱雑に寝所に押し倒しました。

      もう、それ以上仰って欲しくありませんでした。

      頬に流れる雫が幾筋も流れるたび私は殿に愛を囁きました。

      互いの髪が乱れても馴れ合いを求める無邪気な子供のように…。

      熱い吐息が行き交う中私達の意識は彼方に消え、気づいた時にはあなたを抱き寄せて

      眠っていました。

      殿。

      これからはあなたにあのような真似はさせぬよう良き夫として支えていきます。



      ♯後書き♯

      Trial21「怒り」はどうだったでしょうか?

      お題でも手紙としても初の「遥かなる時空の中で2」にしましたのは、他でもない

      このタイトルに合わせたかったからです。

      しかも、今作は裏Dream手紙久しぶりの回想無しものでした。

      久しぶり続きで申し上げますと、「テニスの王子様」以外を作業したのも久しぶりでした。

      それでは皆様のご感想を楽しみにしております。