Trial33―――手を繋ぐ―――

      あれは、さんが、ウチに来てからだった。

      俺が毎日のように同じ夢を見始めたのは。

      『私を助けて!』

      そう言って、消えるあの人を俺はいつも助けられなかった。

      悔しくて・・・悲しかった夢の後。

      それは何の恨みでかいつも俺は同じ夢を見ていた。

      だが、結局何度も何度も助けられなかった。

      なぁ、アンタはどうしてあの人に似ているんだ?

      あの夢を見すぎた所為なのか俺は可笑しくなっている。

      現実にそんなことがあるわけないのに。

      あれから三ヶ月、俺はそんなことばかり考えていた。

      柄にもなくじっとしているだけなんて所詮無理な話で、俺はその分自主トレの

      量を増やした。

      そうすることで、このうやむやな感情から逃れたかったのかもしれない。

      『やっぱり、海堂君だ』

      あれは忘れもしねぇー、2月12日土曜。

      手には買い物袋がぶら下がっていた。

      タンクトップと短パン姿の俺に対して大丈夫なのかと心配してくれた。

      それだけで俺は顔が赤くなりそうだったことを今でも覚えている。

      俺に駆け寄ると両手の荷物は道端においてハンカチで俺の顔に浮かんでいる

      汗の粒を拭ってくれた。

      ……猫がプリントされてあるハンカチで。

      俺の視線で気づいたアンタは俺が照れているのはその所為だと思い込んだ

      らしく苦笑いをしてそれ
を閉まった。

      洗って返しますと言っても聞かずに…。

      『ほら、おいでよ』

      呆然とする俺の手を繋ぐさんはいつものように笑っていた。

      さっきみたいな顔も、もっと見たい。

      そんなことを動揺する中で考えていた。

      『俺、こういう可愛いのが好きなんだ。男の癖になんだけどさ』

      ちっともそう思わないっすよ。

      逆に、良いっす!

      俺だって…その……だからっ、猫良いと思います。

      アンタは俺を家まで連れて帰るとちゃんと汗を拭いて着替えるように

      と言うだけ言って帰っていった。

      なぁ、さん。

      こんな気持ちは思い過ごしっすか?



      ♯後書き♯

      Trial33「手を繋ぐ」はいかがだったでしょうか?

      今作は以前にも取り上げました私が「企画」にて主催しております

      ネット雑誌『Streke a vein』にて連載
しております「ガラスのシンデレラ」sideの

      手紙です。

      大体、桜が絡むものから先に取り上げたので今回からはちょっとしたきっかけの

      ようなものにするつ
もりです。

      また、このサイトは皆様にご覧になって頂けるだけで光栄です。

      ですから、量だけが売り?なサイトですので、全作をご覧にならないで一作読んだ

      くらいでも構いません
ので、どうぞお気軽に足跡を残しちゃって下さい。

      それでは、皆様のカキコお待ちしております。