Trial34 ―――約束―――
なぁ、忍足。
今日は、約束どおり来てくれてありがとっ!
自分で「絶対、来いよ!」って言っておきながら忘れてた♪
今日は、俺の誕生日だった。
俺は部屋で大五郎と遊びながら漫画を読んでいると、いきなりインターフォンが押されて
ビックリした。
いつもはまだ誰も帰ってこない時間だ。
ってことは宅急便か何かかなと思いつつ、こっそり窓を開けて玄関の方を見ると、
お前がいたんだ。
『忍足っ!?どうしたんだよ、俺ンち着て』
俺がそう言うと、お前は頭に手を当ててため息を吐いた。
『自分が言うたやないか。11月28日は俺の誕生日やから絶対来いって』
忘れてた。
自分で言っておいて、忘れるなんて本当にゴメン。
でも、開き直るつもりはないけど、嬉しかったよん。
お前が俺との約束を覚えてくれただけでなく、守ってくれたなんて俺、思わず
抱きついちゃった。
えへへ、ごめん。
重かったよね?
俺はちょっと早目に台所で軽くホットサンドイッチを作った。
今日は、誕生日だって言うのに、俺が飯を作ることになった。
だから、うんと、俺好みにするんだ。
おっと、忍足は薄味が好きだったよね?
危うく、俺と同じ味付けをしちゃうところだった。
『うまそうな匂いやな。何、作ってん?』
そう言ってお前が急に隣に現われるからビックリしたじゃんか!!
でも、俺は隣で苦笑いをしている忍足が好きだからどんなに怒っていてもやっぱり
許しちゃうんだ。
お前は、俺の気持ち知ってる?
手際が良いってそばで俺のすることを見ている忍足を感じてドキドキしていた。
お前がそんなに褒めるんなら専属の家政夫にでもなる。
出来たてのホットサンドを手にしながら夏にあったJr.選抜とかいろいろと喋っていると、
『ふっ、菊丸。パンくず付いてるで?』
『へっ?』
そう言ったかと思ったら、忍足の顔がいきなり近づいてきた。
うわっ、今、思い出しただけでもドキドキしてきた。
お前は右のほっぺに付いたパンくずを舌で掬い取って口に運んだ。
その感触に俺はさらに鼓動を速めた。
今、何をした?
忍足がほっぺに付いたパンくずを舌で…舌でっ!?
俺は情けないけど、ゴンと頭を強く打ってその場で倒れこんだ。
痛さよりもジワリと感じるのは俺の隠しきれない気持ち。
『大丈夫か!?今、ゴンってゆーたで』
それを見て慌てたのはお前。
背中に手を回して抱き起こされる瞬間も俺の鼓動は速くなる一方だった。
好きっ。
そう何回も心の中で繰り返してたら何だか哀しくなってくる。
これが、恋ってヤツなのかな?
『どないしたんや?』
そー言って俺のことを心配する忍足も好き。
俺が黙ってその瞳を見つめ返していたら、ふと、唇に何かを感じた。
それはまるで、俺のと違ったお前のモノだった。
どうしてっ!?
答えは簡単だった。
『お前が好きや。せやから、そないな顔をせんといてや』
俺達はみんなが戻ってくる時間まで誰もいない部屋で抱き合っていた。
今も唇には忍足の温もりが残っている。
お前は初めて会った時から俺のことが好きだったってコクってくれた。
なぁ、忍足。
もっともっと、料理の腕を磨くからお前を独占させて。
忍足のそばにいられるように俺も頑張るから…
♯後書き♯
皆様、こんにちは。
Trial34「約束」は如何でしょうか?
今作は、菊丸君のBDに作業しました。
ちょっと、ピュアにしてみた所が自分でも初々しくて可愛いなぁと気に入っています。
本当は自室で倒れた際、忍足君に覆い被さらせようと思っていたのですが、前回の千リョで
裏設定にしたので、今回はいいかなと終わらせました。←ていうか、そんなことさせるなよ
それでは、皆様のご感想を心よりお待ち申し上げております。