Trial4 ―――満月の夜―――

      なぁ、大佐。


      今日の月は本当にきれいだった。

      東洋じゃかなり「モノの哀れ」を大事にしているって話だけど、今夜は

      素直にそうだと思った。

      『美しいな、鋼の』

      そう、アンタが言うから見上げれば、ぽっかりと夜空に浮かぶ月。

      俺がそうすかって言うと、大佐は嫌味ったらしく笑ったよな。


      『馬鹿だな、鋼のは。美しいのは月の光を浴びているお前だ』

      あぁ言って、アンタは俺が気を取られている内にいつもキスしてくる。

      唇にはコーヒーの苦い味。

      鼻に衝くのいつもタバコの匂い。

      俺の顎を押さえる発火手袋にドキドキしながら夢中で唇を歯でガードした。

      そうしてないといつも大佐は入ってくる。


      『っ…んンッ』

      だけど、そんな抵抗はいつも空回りで顎を強く掴まれた隙に口内に

      入ってくるアンタは俺を見つけると、じれったく歯列を舐めるんだ。

      大佐の腕は俺を身動き一つもさせてはくれない。

      その動きに我慢できなくなった俺は毎回アンタの思い通りに舌と腕を

      絡めちまうんだ。


      なぁ、大佐。

      『ぁ…んぁ…あっ……アッ』

      その場で俺たちは生まれたままでじゃれ合った。

      月の光に嫌らしく照らされる俺達の姿はどう映っているだろう。

      体中に紅い証を刻み、大佐の腰に両足を絡みつかせる俺はたまには

      野外も良いなと思った。

      怪しく照らされた俺達は理性がもう、吹っ飛んじまっている。

      元々、理性などなかったかもしれない。

      目覚めた時はいつもお互いの匂いが移っている。

      アンタは毎回早く起きて俺の体をソファに寝かせ、自分の上着を

      掛けてくれる。


      なぁ、大佐。

      こんな話もあるぜ。

      月の魔力。

      でも、これはあながちデタラメじゃなさそうだ。

      だって、そうだろ?

      満月の夜だからこうして俺達がいつも以上に互いを求め合って

      いたんだからよ。


      なっ、ロイ・マスタング大佐?



      ♯後書き♯

      
皆様、こんにちは。

      
手紙にしてやっとBLの裏を書けた柊沢です。(爆)

      
第五弾作Trial4「満月の夜」は如何だったでしょうか?

      
BL作は何分滞ってしまった状態ですが、今の所は手紙でご辛抱して下さい。

      
それでは、皆様のご感想を心よりお待ちしております。