Trial45―――天使―――

      『おい、志水。お前はカノジョがいなくても大丈夫なのか?』

      今年の卒業式に言われたこと。

      僕はその意味が判らなかった。

      それは寂しいってことなのか僕自身先輩がいないと駄目になってしまうのかと

      心配しているのか。

      僕はあなたの音と出会ってそして、先輩自身とも出会えたことが凄く嬉しくて時々

      どうにかなってしまっ
たんじゃないかと思うくらい幸せを感じています。

      だから、僕にはあの言葉の意味が判らなかったんです。

      でも、アレからもうすぐ二ヶ月も経つ今日この頃になってようやくそれが

      解ってきたんです。

      『桂一君』

      学園中探したってあなたと顔を合わすことはないんですね。

      目を瞑ればいつだって会えるのに先輩に触れることができない。

      だから、今日もいつものように放課後森林公園の芝生の上で昼寝をしてました。

      平日でもあなたに会えるのはこんなことくらいしかできないから。

      付属の大学に会いに行けばいいなんて友達は言うけれど、先輩の広がり始めた音楽の

      世界を僕が
邪魔して良いはずはない。

      ですから、ずっとこのまま我慢していようって思ってました。

      けど、やっぱりあなたには敵いませんね。


      『桂一君』

      先輩が呼んだかと思うと、誰かが僕の髪を撫でる感触がしました。

      目を覚ました僕の目に飛び込んできたのはあなたでした。

      時刻はもう六時で生徒は残っていません。

      先輩はたまたま帰宅途中に高校へ寄ると、困り果てた金澤先生に僕を探すようにと

      言われたそう
です。

      だけど、その言葉で周囲に誰一人いないと言う意味で僕はあなたを芝生の上に

      押し倒して組み敷いた。

      『桂一君!?』

      あぁそうか、と思いながら体を動かそうとはしなかった。

      もう、止められないほど先輩が恋しかったから。

      それを伝えることができないから。

      『けいっ、あっ!ああぁっ』

      こんな声を奏でられるのは僕だけ。

      腰を動かす度に肌と肌が汗で密着する音。

      一つになった場所であなたが僕を誘う調べが聴こえてくる。

      だから、僕もそれに応えるように何度もその唇にキスした。


      ねぇ、先輩。

      あなたは僕に舞い降りた天使ですよ。

      いろんな曲を僕に聞かせてくれる。

      そんな先輩だからこそいつまでも一緒にいたいって願うんですね。



      ♯後書き♯

      Trial45「天使」はいかがだったでしょうか?

      初……志水裏Dream手紙。(爆)

      今作は金色のコルダヴォーカル集「espressivo」(「微風のスケルツォ」でも可能ですが)

      にあります
彼の歌詞の一部分に「天使」がありましたことを良いことにやっちゃいました。

      今回久々にコルダにしてみようと思ったのは最近またハマりだしたからです。

      ようやく鈍い私でも何人かクリア出来ましたので、Trialにも進出させた訳です。

      これは余談なのですが、チェロの音を聞いていると母校の担任(趣味のチェロを良く

      生徒に聴かせ
てくれました)を思い出してなかなか懐かしい気分になります。

      それでは余談もしてしまいましたが、ここまで読んで頂いてありがとうございました。