Trial6―――雨―――

      ねぇ、ちゃん。

      もう、泣かないで。

      君が悪いんじゃない。

      悪いのは一哉と付き合っているって知っていながらちゃんを愛しいと

      感じてしまった僕なんだ。

      これでも僕だって諦めようって何度も思った。

      けど、一哉の冷たい態度でどんどん傷ついている君を見てい たら

      そんなことはできなかった。

      一哉だってちゃんの事が別れた今でも好きなのを知っていな がら、俺は

      何も言えないでいる。

      僕はいつだって臆病だから。

      そんなことを話してしまえば君が俺から離れていってしまい そうだから。

      仲人なんてしたくはなかったんだ。

      一哉になんかを任せておけない。

      あんな悲しそうな顔をさせたアイツになんか。

      アレから何十回もキスをした。

      だけど、やっぱり一哉の顔を見ると、感情を拭いきれないみたいで

      23時過ぎは泣き疲れるまで雨を降らせている。

      ねぇ、もう、泣かないで。

      君が涙していると、僕の心まで雨が降ってしまうから。


      「ふ…ぅん…っ」

      暗闇の中、俺は泣き止まない姫を抱きしめた。

      後ろを振り向いた際に顎を捉えて唇同士を密着させて呼吸を封じる。

      空気を求める鳴き声が余計に「僕」を「俺」に換える。

      「ひゃうっ!?」

      脚を広げさせ股を擦っただけで、声を上げるお前が愛しい。

      二つに結った髪を解いてより扇情的になったに俺のすべてを 投げ出した。

      ねぇ、僕の隣で小さな寝息を立てるお姫様。

      今夜はどうぞ良い夢を。

      また、雨が降り出したら俺がお前を迎えに行ってやるから。

      僕の胸にすがりつくように寝返りを打ったちゃんの首筋には

      何箇所もの紅い花が咲き乱れている。

      ねぇ、一哉。

      もう、は俺のモノだよ。



      ♯後書き♯

      Trial6「雨」はいかがだったでしょうか?

      今作で二作目になりました「フルハウスキス」手紙を飾
りましたのは、

      松川裏Dream手紙です。

      文化祭後の微妙な三角関係を一度作業してみたかったんですv

      それでは、ここまで読んで下さり誠にありがとうございました。