ヴァイオリン・ロマンス…



                      星奏学園の女子生徒なら誰もが知っている恋の伝説。



                  コンクールに出場した男女のヴァイオリニストは恋におちる────



 

 

 

 

 

 

 



       その日の星奏学園内は特に慌ただしかった。

      三年ぶりのコンクール開催と同時に、
      一組の卒業生のコンサートが行われることが決定したからである。


       「ねぇ、チケットもう売れちゃったって本当?!」
       「あのふたりのコンサートの?」
       「うそ!あたしも行きたかったのに!!」



      そんな盛り上がる学園の中、屋上でひとり落ち込んでいたのは、
      音楽科二年、火村優樹。



       「なにがヴァイオリン・ロマンスだよ」



      ヴァイオリンを手に、ひとりうなだれていた彼の耳に、屋上へ上がってくる足音が入った。


       「…いいじゃない、今日はまだ下見なんだし…」
       「全く、緊張感というものがないな」
       「折角六年ぶりの母校に来たんだもん!」



       声と共にドアを開けて入ってきた姿を見ると、優樹は思わず声を挙げてしまった。


 
       「…!つ、月森蓮ッ」



      このふたりこそが、話題の卒業生であり、伝説のカップルでもあった。



       「あっ…俺っ、火村優樹って言います!」
       「…君、ヴァイオリン専攻なんだ?」
       「え、ええ…一応。
       まさか、ヴァイオリン・ロマンスのふたりに会えるなんて!
       玲に会わせたかった!」

       「…玲?」

       「あ、俺の幼なじみなんですけど…今度のコンクールの出場者でもあるんです」

       「玲…確か、観月玲だったか?俺も彼女のことは耳にしたことがある。
       素晴らしい技術の持ち主だそうだが」


      月森の言葉に優樹は俯いてしまった。


       「やっぱり…おふたりの耳にも届くくらいなんだ…」

       「…火村くん、観月さんのこと、スキなんだ?」
       「!すぐ首を突っ込むな」



      優樹は少し笑って、話し始めた。


       「…俺、小学校のときに玲を追っかけてヴァイオリン、始めたんです。
       でも才能なくて。なんとか星奏入れたけど、
       玲はコンクールでも優勝候補だし。
       玲、月森さんの大ファンで、コンサートも楽しみにしてるんです」
 
       「彼女に近づきたいなら、一層の努力をすべきだな
       こんな所にいる時間を練習に使わないのか?」
       「蓮っ…」

       「お、俺は…玲と並びたい訳じゃないんです。
       玲は毎日毎日練習漬け…確かに、上達には練習しかないと思ってます。
       でも俺が今までヴァイオリンを続けてこられたのは、
       ヴァイオリンを「演奏する楽しさ」があったからなんです」


      優樹の表情を見て、は思い立ったように立ち上がった。
 


       「…火村くん、観月さんにプレゼントしようよ!」
       「は?」
       「火村くんのヴァイオリンで、観月さんに直接伝えよう?
       ヴァイオリンを「演奏する楽しさ」!」

       「なに言ってるんだ…」
       「いーじゃん、あたし達でお手伝いをしようよ。
       火村くんはコンクールに出る訳じゃないから、個人的に教えたって問題ないじゃない?
       蓮がやってくれなくても、あたしやるからね」
 

      蓮はため息をつくと、少しだけ笑顔を見せた。



       「の行動力には敵わない」




 


       「大丈夫なのか?いきなりヴァイオリンを教えるなんて」

      その夜。蓮の行きつけのフレンチレストランで、蓮は話を切り出した。

       「うーん…そりゃ、あたしなんかがうまく教えられるとは思わないけど…
       なんかね、観月さんのことを聞いてると、あの頃の蓮を思い出して。」

       「あの頃の…俺を?」

       「うん。いーっつも練習してて、すっごく上手いんだけど…
       だけど、心から「音」を「楽」しんでないのかも、…って感じがしたんだ。
       ド素人だったあたしが言えることじゃないんだけど」

       「…素人だった君だからわかったんだろうな。
       彼も、に似てるのかもしれない。」

       「そっか…。ねぇ、蓮。あたし、火村くんと『感傷的なワルツ』を練習しようと思うの!」

       「『感傷的なワルツ』…?」

 

 

 



      "『感傷的なワルツ』くらい弾けないと話にならない"


 

 

 


        それは7年前のコンクールで、蓮がに告げた言葉だった。

       「最初は必死で練習するだけだったんだけど…
       だんだん、音を表現する楽しみを覚えて。
       自分なりに解釈して、音を伝えたいって思うようになった。」


       「…そんな君の音に、俺はいつの間にか惹かれていったんだろうな。」



 



       翌日…。




       「こんにちは、先輩、月森先輩。」
       「こんにちは火村くん。」
       「それじゃ、早速練習しよう」

      蓮が優樹に手渡したのは、楽譜の束だった。


       「…『感傷的なワルツ』…?」
       「うん。えーと、実は、あたし達の想い出の曲なの。
       これを、あたし達のコンサートのアンコールで、一緒に弾こう」

       「…え──────────っ…?!」


      優樹は大声を上げてしまった。


       「お、俺がふたりのコンサートで弾く?!」
       「そうだ」

       「だって、コ、コンサートは…」

       「うん、3日後。」



      ふたりのコンサートは、コンクール第1セレクション開催前夜に上演されることになっていた。



       「無理です!俺なんかがっ…」

       「大丈夫だよ、小学校からずっと弾いてるんだから、
       あとは火村くんなりに解釈すればいいじゃない。
       あたし達はそれをお手伝いするだけ。」

       「コンクールには観月玲も来るんだろう?
       そこでお前の伝えたいことを、そのヴァイオリンで伝えればいい」

       「…俺の…ヴァイオリンで…」

 

 

 

 

 

 

 

                                    あとがき
                
                 「2つのヴァイオリン・ロマンス」を読んで頂き、ありがとうございました。

                      いつも参加させて頂き、大変光栄に思っております。
           いつも素敵な雑誌に仕上げてくださる親愛なる歌穂嬢へ感謝の気持ちでいっぱいです!!

                         今回はのコルダ夢に挑戦してみました。
             お相手はいつの間にかわたしの本命になっていた月森くん…(当初は志水派デシタ)
                           なんっとか、彼のEDを観ることができ、
                       その嬉しさから一気にこのお話が出来上がりました。
                         設定としましては、もう、蓮ともに芸大を卒業、
                 いよいよ本格的にヴァイオリニストとしての人生を歩み始めようとういう所です。
                       わたしもクラシックは好きですが、知識はイマイチですので、
                               少々の矛盾点はどうぞお許しを!

                  それでは今後も「2つのヴァイオリン・ロマンス」にどうぞお付き合いくださいませ。

 

                                    月影れゆ



       †柊沢のありがたくもない感謝状† 

       きゃ〜、れゆ素敵ですぅ!←壊れてる(笑)

       もう、腰砕け状態ですよ!!

       月森君カッコいいっす。←鼻息荒くなってどうするよ

       「金色のコルダ」の月森ED後の話を書いてくれたわけですが、私は彼をクリアしたのが浅く、それほど作業

       したいと言うものが沸いてこなくて今日に至っています。(爆)

       そして、二人の恋はどうなるのでしょうかって所で終わってくれましたね。

       自分の連載もあるので他人のことをとやかく言えませんが、今後のことが気になりますね。

       そして、やっぱり月森君と言えばアノ場面ですよ。『感傷的なワルツ』!!

       この曲なくしては語れませんよね。←オーバーな

       それでは、次回も宜しくお願いしますね。