コンサート当日
「…優樹?」
「玲!」
最後の練習をしていた優樹の側を玲が通りすがった。
「練習?頑張ってるのね」
「お前こそ…」
「うん、コンクールで満足いく結果を残したいから」
「…」
「優樹、行くんでしょ?今日のコンサート」
「ああ。玲は?」
「勿論よ。月森さんの演奏は練習時間を割いてでも聴く価値があるもん。
それにしても、羨ましいよね、ヴァイオリン・ロマンスなんて。
今年はヴァイオリン、あたしひとりだもん、起こりっこないわ…
それじゃ、友達待たせてるから、またね」
「…玲!俺も、頑張るから!!」
「?…うん、頑張って?」
優樹は玲を見送ると、講堂の裏口へ走った。
「火村くん!」
「あ、あの今日は…よろしくお願いします」
「いきなりの大舞台だ。緊張して当然だろうが、
しっかり肩の力を落としておいたほうがいい」
「は、いっ…」
『本日は…星奏学園音楽科第57期卒業生、
月森蓮・ヴァイオリンコンサートへお越し頂きまして、まことに…』
「それじゃ…あたしたち、行ってきます!」
「はいっ…おふたりの演奏、楽しみにしてます!」
「ありがとう。それじゃ。」
舞台袖に立ったは、そっと蓮の手を握った。
「とこの舞台に立てることを、誇りに思う」
「あのときはひとりだった。
でも今は違う。ふたりだからこそ、できるものがある。
お互い、楽しんで行こう!」
盛大な拍手の中、ふたりは舞台へと足を踏み出した。
控え室のモニターで鑑賞していた優樹は、刻一刻と自分の出番が迫ってくるのを感じていた。
だがそれと対比するように、ふたりの演奏を聴くうちに、
そのときが近づくにつれ、心が落ち着いていくのを感じた。
盛大な拍手と共に、ふたりが再び控え室に戻ってきた。
「素晴らしい演奏でした!!」
優樹は立ち上がり、拍手でふたりを迎えた。
「ありがとう!あたし、持てる力全部出せたよ。」
「次は君の番だ」
「はい!俺…今なら…きっと伝えられる気がします!」
未だに鳴りやまない拍手の中。
ふたりは再びステージに姿を現した。
『拍手ありがとうございます!』
『本日のアンコールには、特別にゲストをお招きしています。』
会場がどよめいた。
『私たち3人の、音楽への想いを、どうぞ感じ取って頂ければと思います。
それでは、音楽科2年、火村優樹くん、どうぞ!!』
拍手やざわめきの中、優樹は現れた。
その瞳はまっすぐ前を捉えている。
ゆっくりと、3人のヴァイオリンが奏でられる。
3人の技術はそれぞれ違うけれど、
その心にあるものは1つ。
───「音」を「楽」しむ───
盛大な拍手の中、無事コンサートは幕を下ろした。
†柊沢のありがたくもない感謝状†
いよいよステージ本番!
想いとプレッシャーで気持ちが高まる火村君。彼の声は彼女に届いたのか。
次号明らかになるのか。
まだまだ目が離せません!!
それでは、次回も宜しくお願いしますね。