Trial55―――ウェディング―――


      なぁ、

      君は、本当に愛しいな。

      声も涙も強さの裏に隠れている弱さも。

      そのすべてが愛おし過ぎてを壊したくなる。

      これからずっと、君が朝目覚めたらいてくれるんだな。

      初夜を越えた瞬間から。

      私は軍の狗である前に錬金術師だ。

      運命とか赤い糸なんて非現実的なことは信じない。

      だが、何故だろうな。


      といればどんなことも信じたくなる。

      耳に響くのは重々しい鐘の音。

      目の前には口づけを交わした瞬間から妻になる白いウェディングドレス姿の女性。

      私が着させたんだと思うと、なかなか感慨深いものだ。

      君の瞳には私はどう映っているのだろうか。

      手を差し伸べると、おずおずとした小さな掌が乗せられる。

      きっと、私も緊張をしてしまっている。

      たった薬指にシルバーリングをハメるだけなのに、何故か永遠にも感じられた。

      だが、俺はに口づけをするためにその約束の場所に指を絡めたまま唇を浚ってしまうんだ。

      ヴェールを上げるのは公になるため。

      だが、私は君さえいればどうだって良いんだ。

      絡めた薬指には互いに銀色の指輪が触れ合っている。

      それはまるで、私達のようでありこれからの未来永劫を約束しているように思えた。

      『キレイだよ…、私の花嫁』

      瞳を再び開けた妻の耳元にそう囁いた。

      頬に赤みを帯びたは一瞬、驚いたような顔をするといつもより優しく微笑む。

      あぁ、私は幸せ者だ。

      私が今こんな気持ちになるのもにこんな笑顔をさせるのもきっと、このウェディングを迎える

      ために用意されていたものなのだろう。


      なぁ、君は投げ放ったブーケに何を見送ったんだ?


      私は今までの記憶と共にを抱き寄せるだろう。

      その甘美な唇にもう一度愛を誓うために。



      ♯後書き♯

      Trial55「ウェディング」はいかがだったでしょうか?

      今作もブライダル企画で作業いたしました。

      ロイDream手紙は今作で三作目になりますが、ようやく結婚させることができたなぁと、

      なかなか感慨深いものでした。

      今までが何作もupしていたからなのでしょうが、そのギャップが激しくって今月に

      作業したものが指で数えられてしまうほどになってしまいました。(沈)←自業自得

      それに重なり、来月には締め切りが…。(爆)

      今から死ぬ気で頑張ります!←最初からやれ

      それでは、ここまでご覧下さり誠にありがとうございました。