Trial12―――やだ―――

 


      なぁ、リョーマ。

 

      そんなに俺のことが好きかい?

 

      もうすぐ全国って言うのに僕は他人事のように冷静でいられたんだ。

      それは、もちろん誰かさんのお陰だけどね。

      俺はお前に早く会いたくてどこかで気が急いてた。

      赤也と同じでそれ以上噂の一年生。

      どんな奴なんだろう。

      試合してみたい。

      そんな欲求が本来の俺を取り戻させる。

      俺の体も早く試合をしてみたくてうずうずしているみたいだ。

      ふふっ、なのに自分から来るんだもんな。

      自宅前の公園で練習をしていた俺に声を掛けたのは、小さな少年だった。

      だけど、青学のジャージを着ているから解ったんだ。

      こいつがあの越前リョーマだ。

      まぁ、真田から大体は聞いていたけどね。

      だから、いきなり試合を申し込まれても俺は笑っていられた。

      「だめだ。俺達は一緒にいてはいけない」

 

      そう、本心を押し殺して断った。

      俺だって試合をしたい。

      だが、今は全国前。

      そんな時期に草試合でもするわけにはいかない。

      けど…

 

      「やだ」

 

      お前は背を向けた俺の前に立って言ったよな。

      その気持ちはそっくりそのままお返しするよと思った瞬間、俺の体は

      前のめりになった。

      「…なら、俺を簡単に忘れられないようにするよ」

 

      そう言って、俺にキスをして帰っていった。

      バカだな。

      お前が気づいていないだけで、俺の心はもう越前リョーマのことしか考え

      ていない。

      残された俺は唇に手を当て、リョーマの温もりを思い出していた。

 




      ―――…終わり…―――

 



      ♯後書き♯

      Trial12「やだ」はいかがだったでしょうか?

      今作は私がBLを書き出して初に越前君に受けではなく、攻めを演出

      して頂きました。

      リョ幸…。

      多分と言いましょうか、間違いなくメジャーではない組み合わせです

      よね。(汗)

      皆様に受け入れて頂けると光栄です。

      と言うことで、メジャーなものよりそうでないものを良く作業する

      柊沢でした。←待て