僕達は元の体に戻るため、旅をして来た。
そして、君を抱きしめるため、ここまで来たんだ。
揺るぎない覚悟はあった。
でも、。
僕は賢者の石の真意を知ってしまった。
そして、ホムンクルスがどうやってできるのかも。
僕達は間違っていたんだ。
最初から母さんを蘇らそうとしなければ良かった。
僕達は代価を払ってここまで来た。
だけど、それは今まで知りたくないことを知る旅だった。
今まで無邪気に遊んでいた日々が懐かしい。
ねぇ、。
僕の何もない空っぽな鎧の中で一人の人間が命を落としたんだ。
それは、一瞬の出来事のようで、僕にはスローモーションのように鮮明に覚えている。
守りたかった。
死なせたりしたくなかった。
グリードと約束したからじゃない。
僕は僕の意思で守ってみせたかった。
だけど、守れなかった。
何一つ…。
僕は無力だ。
兄さんなら…国家錬金術師の兄さんなら…マーテルさんを救えたかもしれない。
兄さんが国家錬金術師になったのも僕の所為。
僕の所為で、死んでしまったたくさんの命。
ねぇ、。
こんな僕に何の罪滅ぼしができるの?
僕はこんな体になってしまった報いを受けている気がしてならない。
僕は僕のために生きていて君のために生きている。
そんなリゼンブールを最初に旅立った日に誓った言葉さえ、今では脆く崩れ去ろうとして
いる。
何故?
どうして?
答えがないのに、そんな言葉を呟いてしまう。
僕には兄さんの錬成陣で繋いだ見せ掛けの命しかない。
だから、君を守ることなんて本当は無理なことなのかもしれない。
あはは、ごめんね。
こんな弱気なことを言っていたらダメだよね?
このへの返事のない手紙を書いて一体何通目になるんだろう。
僕には、もう何通も出している気がする。
こうして何かがあるたび心の中で君への想いと一緒に考えていると、ダブっちゃうんだ。
こんなことを言ったら、は呆れて「もっとしっかりしなさいよ」って言われちゃうかもな。
心の中は誰でも独りだけれど、僕には、いつまでも君との思い出がある。
兄さんとどっちがお嫁さんにするか喧嘩したことやと手を握った日や……初めて口づけを
交わした時の唇の感触。
だから、どんなことがあったて、その掌を離さないよ。
♯後書き♯
皆様、こんにちは。
最近、『鋼の錬金術師』の現実にも通じる痛い話を何としても見届けなければという意地
で見ている柊沢です。
先週は遂に「賢者の石」を手に入れてしまいました。
しかも、多くの犠牲で…。
柊沢は小心者と申しておきながら結構黒い性格なので、あの結果になって良かったのでは
と思っています。
さて、終盤に近づいた『鋼の錬金術師』はどうなるのでしょうか?
それでは、失礼しました。