戻って来い、必ず……。


         関東大会で俺達青学は氷帝に勝った。

         だが、その勝利は大きな代価を払う結果となった。

         俺は前々からの左肩を壊してしまった。

         部活以外の練習と蓄積した疲労でついに無理が祟ったのだろう。

         でも、俺は後悔していない。

         青学を全国に連れて行くこと。

         それが俺の目的だった。

         例え、俺がその犠牲になったとしてもそれは本望だった。

         しかし、あの時、俺の手を高く掲げた跡部は知っていたのだろう。

         俺が本当はこの関東大会を駆け抜けて行きたかったことを…。


         戻って来い、必ず……。

         俺の耳に残ったお前の声は今でも忘れられない。


         なぁ、跡部。

         あの試合は俺へのアドバイスだったのか?

         いくら医者に通っても担当医の方が術を知り尽くしている。

         ならば、そこで俺の肩を完治させた方が良い。

         だが、俺には時間がなかったんだ。

         「今、俺がいなくなったら…」などと考えては捨てた。

         九州へ行った俺を待ち構えていたのは退屈すぎる時間だった。

         いつ完治するかわからない明日を望む俺には十年のようにも感じられた。


         なぁ、跡部。

         俺はお前に電話することで気を紛らわしていたんだ。

         胸の内で逸る気持ちを抑えて跡部の声に耳を澄ませば、どこか落ち着く俺がいた。

         変だな、俺は。

         退屈すぎる時間はいつかお前の声が聞けるのを楽しみにしていた。

         好きだ

         そう、気持ちが沸き起これば、ますます東京に帰りたくなる。

         戻って来い、必ず……。

         しかし、跡部のためにも自分自身のためにもこのままではいけないと考え直し、

         退屈すぎる明日を乗り越えてきた。

         数ヶ月のリハビリを終え、戻ってきた俺がトーナメント会場の扉を開いた時、俺は

         決意したのかもしれない。


         ……ただいま。

         みんなの驚いた顔を通り越した先に見つけた跡部に心の中でそっと言った精一杯の

         答え。

         お前は驚いたような顔をしたが、それは瞬時で常の…いやそれ以上の笑顔を返した。

         ……お帰り。



         ♯後書き♯

         皆様、こんにちは。

         今作は「緊急企画!原作 手塚国光君お帰り!!」キャンペーンに作業致しました。

         やっと、跡塚をupしました。

         私のBL作品を心待ちにされている方は申し訳ありません。(土下座)

         視線での会話「以心伝心」良いですよね。

         私の作品中手塚君を受けに回したのは、初めてで戸惑いましたが何とか後書きを

         書いていますここまでたどり着けました。

         それでは、これにて失礼しました。