「私も、リョ―マが好き」


      「俺も……が好き」


      ずっと恋焦がれていたリョ―マと結ばれたあの夜から二人は、闇に紛れて会うようになった。

      「んっ…リョ―マ……っ……」

      まるで、今までの阻んでいた壁が嘘のように消え失せ、日を追うごとに恋人らしくなって 

      いた。

      「……逃がさない」

      彼が言った通り、紅い証が女性の肌に変わる頃を見計らって甘い痛みをに与えて鳴き声を

      楽しむように繰り返す。

      深く進める唇に二人ともそれが永遠だと思っていた。

 

 

   万古不易〜満たされない心〜


 

      あれから三年。

      桜が満開していた頃は既に過ぎ、青学内に植林されている木々の中から蝉の声が聞こえて

      くる季節がやってきた。

      入学当初より制服が板についてきた一年生達は各々の学校生活に慣れ始めていた。

      彼女も男子テニス部のマネージャーになって今年も全国を目指す。

      夏服の下に隠れている彼を意識しながらは男子テニス部の部室で深くため息をついた。

      ベンチに腰を下ろし、もう一度ため息をつくと胸元のスカーフに手を伸ばす。

      脱いだことで現れたそれはもうすぐで女性の肌へと変わろうとしていた。

      リョ―マが刻んだ甘い傷に掌を添えると、段々瞳が潤んでくる。

      「なっ、何やってるんだろ。……私」

      下着姿のままで大きく首を横に振り、迷いを断ち切ろうとするが上手くは行かなかった。

      彼の姿が脳裏に過ぎって薄れるより鮮やかに映し出される。


      (会いたいよ……リョ―マ…)

      それが、彼女が見た最後の姿だから仕方がないことなのかもしれない。

      高校に入学してからリョ―マは部活の練習が中等部の何十倍も忙しくなったようでを以前

      のように求めなくなった。

      彼女も学校生活と部活に慣れようと懸命だったので、寂しさになんて構って入られない。

      それでも不安になってある夜、彼の部屋を訪れてみると私服のままベッドに倒れこんで

      寝ていた。

      こんなになるまで頑張っているリョ―マに自分のことで邪魔したくない。

      そんな気持ちがを押さえつけてこうして誰もいない所で声を殺しては泣いていた。

      「。こないだの話、考えてくれた?」


      放課後になって、彼女に青学男子テニス部にだけ許された青と赤と白のカラフルなジャージ

      に身を包んだ少年が近づいてくる。

      彼は部長の竹上苓。

      表情は自信に溢れている様で、の小さな体を引き寄せた。

      「ぶっ…部長!?」

      「俺と付き合えよ。先輩とは最近、会ってないんだろ?」

      「どうしてそのことを!?」

      瞬間に押し返そうとしたが、そのことを言われ両手から力が抜ける。

      竹上はリョ―マの次に部長を継ぎ、彼ほどではないがそれなりに力があった。

      自分を見上げる彼女を見てふっと笑う。

      彼は彼女が男子テニス部へ入部してからというもの何かと近づいてきた。


      「高等部は自分に最もあった道に進めるよう、自身の適性を見極められる環境を提供する

       という方針も手伝ってか中等部よりもずっと運動部の練習が厳しいらしい。俺なら、

       一人にしない。だから、俺と付き合ってくれ」

      この前、突然告白された時、きちんと断ったのにも関わらず良い返事を待っていると

      言った。

      「でも、……私は」

      何かを迷っているわけではないが上手く言葉が出てこない。


      (私…何を考えているの?私にはリョ―マがいるってはっきり言えばいいじゃない?

       それとも、本当に部長に乗り換えようとしているの?)


      そんな訳ではない。

      ただ、自信もそんな状態に陥るほど寂しさに気が滅入っていた。

      竹上に回された腕と男性の胸の中が懐かしい。

      思わず彼を思い出してときめきを感じられずに入られなかった。

      「…どうした?久しぶりの男の感触で思い出しちまったか?」

      「っ!?……放してくださいっ!」

      怒りで我に返った彼女は今自分に出来る抵抗を試みるが、彼からは逃れられない。

      その行動を見てまた笑うと、の顎を掴んだ。

      「っ!?」

      「そんなに俺を警戒すんなよ。どうしても忘れられないのなら、もう一度思い出させてやる

       よ。男の温もりをさ」

      そう言って、彼女の顎を強い力で固定して唇を奪う。

      「っ!?」

      思わぬ行動には目を見開いた。

      「…っ……てぇー」

      誰もいないテニスコートにそんな音が響く。

      竹上の右頬が赤く火照り、その上を掌で覆った。

      彼女の瞳からは止め処もなく涙が溢れ、頬を伝う。

      「っ……すみません。……でも、私はあの人のことが好きなんです。部長のことは嫌い

       じゃないんですけど…好きになれません。…ごめんなさい」

      小さい体を折り畳むかのように深々と一礼をする。

      目の前で頭を垂らすを見て唇を強く噛んだ彼はそのまま後ろを向いて校舎の方へ走って

      いってしまった。

      (リョ―マ、ごめんね…。あなたの他に…キス……されちゃった。……ゴメンネ)


      「ひっ…」

      嗚咽が漏れる。

      そのままテニスコートで立ち尽くしていると、誰かに見られそうで何とか部室まで歩いて

      きた頃、空の上でもざわめき出していた。

      この時期、気象の変化が激しく夕立も少なくはない。

      雷鳴が響くのを合図に、雨雲が急速に天を黒く染め出しそれと同時に雨が降り出した。

      最初は普段地を濡らすものだったが序々に、打ち付けるものに変わり、外界の音は全て

      掻き消される。

      部室の中に一人取り残された彼女は雨宿りも含めてしばらくベンチに腰を下ろすことに

      した。

      「…雨、止まないかな」

      他に口に出すことがあるようで、結局こぼれ出たのはこんなどうでも良い言葉だった。

      彼以外の男性に自分が求められるとは誰が想像ついただろうか。

      まだ、唇に竹上の温もりが残っている。

      その言葉を発したきり、は口をつぐんでしまった。

      それを思い返す度、涙腺が狂ったように頬を伝う。

      一瞬でも許してしまった自分が憎かった。

      寂しさに負けて、リョ―マ以外の異性を受け入れてしまった。

      この降り注ぐ雨が止むまで、こうして気が済むまで泣き続けていようとさえ思った。


      「何やってんの?」

      「っ!?」

      彼女が部室のドアに背を向けていると、その方向から懐かしい声が聞こえてくる。

      それを耳にすると、高鳴る鼓動を押さえきれずに振り返った。

      「リョ―マっ!」

      「泣いてたの?」

      彼は高等部の制服のままを抱きしめる。

      傘を持っていなかったのか、この雨でずぶ濡れだった。


      「っ、リョ―マ。会いたかった…、ずっと!」

      雫が肌に触れるけれど、そんなことよりも今あるこの温もりを逃したくはなかった。

      先程とは違う温かい涙が溢れて、世界がぼやけて見える。

      しかし、視覚がダメならと彼の上着の裾を握った。

      「…俺も、会いたかった」

      そう言うのが早かったか、彼女の顔を上に向かせて唇を深く沈める。

      まるで、今までの時間を埋めるようにそれは激しく求めてきた。

      「んっ、っ」

      息が鼻から漏れて欲求不満も手伝って、それがリョ―マの理性を空の遥か彼方に

      追いやらせた。

      いきなりの後頭部に腕を回し、片手は顎を開かせて舌を侵入させる。

      「んっ!?んんっ」

      歯列をなぞってから彼女自身を求め、それを見つけると絡めた。

      その瞬時体が固まったが、彼はその動きを止めない。

      むしろ、動きが機敏になっていた。

      その内に彼女も観念したように、恥かしげに自らを絡める。

      それを知ると、今まで顎をこじ開けていた右手は体育着の上からの胸を触った。

      あれからより異性と感じた頃から日に日に変化を遂げたその場所は、今、彼の手中にいる。

      その感触から頬をさらに、赤く染めた。

      やっと、唇を放されると二人を繋ぐ銀色の糸が見える。

      「リョ―マ」

      「が、欲しい」

      「……うん」

      部室の外はまだ激しい雨音が聞こえていた。

      既に、校内に残っているのは、この二人しかいないだろう。

      ワンルームマンションのような部室の中から鍵をかけ、明かりを消した。

      校内の街灯を微かな明かりに、互いの熱を求め合う。

      彼の制服をシーツにゆっくりと倒れこみ数分間見詰め合った。

      「リョ―マ…、好き」

      この瞬間をずっと待ち望んでいた。

      彼女の頬をそっと撫でる。


      「俺も……愛している」

      ゆっくりと口づけ合い、舌を甘く絡めあった。

      「んっ、っ…!」

      先程の激しいキスでだろうか、の口から女性の声が漏れる。

      彼は手探りで胸の先端をそっと掴んだ。

      そのまま感触を楽しむかのように攻め続ける。

      「ふっ!?んっ…あぁ」

      リョ―マは唇を放して中等部指定の体育着を捲り上げ、ブラジャーのフォックを器用に

      外した。

      「ねぇ」

      すると、彼の左手をそっと彼女が触り、一瞬の間我に返る。

      「何?今更、怖くなった?」

      悪戯っぽく笑うリョ―マだって初めての体験で不安だった。

      でも、この胸の中にずっと仕舞い込んでいた欲情をもう止めることは出来ない。

      頬を赤くしながらそっとが首を横に振った。

      彼の頬に手を伸ばすとそれを優しく包む。

      「リョ―マが一緒なら…怖くない…っ」

      「…」

      彼が自分の手を強く握るのと同じくらいに、片手で顔を引き寄せて唇に軽く口づけた。

      「私もっ……はぁはぁ…っ……愛しているよ」

      彼女が儚げに笑う姿が愛しくて思わず強く抱きしめる。

      「?……どう、したの?」

      胸の中から聞こえてくるの声に鼓動が大きく鳴り響いた。

      「何でもない」

      そう言って、互いの衣服を全て取り除き、再びの胸に手を伸ばした。

      「あっ」

      その感覚に短く叫んだ。

      彼はそれを合図に速度を速めて揉み始める。

      「や、あ、あっ……リョ―…マぁ……っ」

      「っ……愛してる…んっ」

      胸の先端を口に含み、キャンディーのように転がした。

      その場所も彼の訪れに気がつくと驚いたように立ち上がって形を変える。

      「やぁっ!あっ…ああぁ……私も、私も愛してるっ」

      しばらくそこを責めていると、左手を彼女自身に伸ばした。

      茂みにたどり着くと、そこは既にぐっしょりと濡れている。

      「んっ!そ、そこはっ…」

      そこに触れたことでが甲高く鳴いて体を跳ねさせた。

      「感じるの?ここが一番」

      「ふっ……言わないで、ん……あ、あぁ!」

      彼が自らの指を差し込む。

      「あっ、や……ぁ」

      「いやなの?でも、体は正直みたいだよ」

      そんな彼女をあざ笑うように指の数を増やして掻き回しだした。

      「はあっ……ちょっ、リョ―…んんっ……ま、待っ」

      「…待てない。もう、俺……限界っ」

      そこから勢い良く引き抜くと、両足を大きく開かせる。

      「っ!?……リョ―…マ」

      余りにも恥かしい姿で顔を余計赤く火照らせた。

      「……挿れても良い?」

      「えっ?」

      彼が言っていることが理解できないわけではない。

      ただ、それを認めてしまうことで何かが音を立てて崩れてしまいそうだ。

      しかし、リョ―マが真剣な眼差しで自分を見ていることにその迷いはもろく崩れ去る。

      「…うん、……来て」

      「は俺のものだっ!」

      己を彼女自身に当てて勢いに任せて衝いた。

      その動きと共に、今まで感じたこともない激痛が体中に走る。


      「痛っ…ぁん……はあ、あっあっ!」

      「うっ……我慢、して……もうすぐ、だからっ」

      彼がの腰に手を置くと、その上に添えられた温もりは、その動きが進むに連れて首に

      移動した。

      それにより突き上げる衝撃の度に、彼女の腕に力が入る。

      「はぁ…んっリョ、リョ―マ……ああっ!」

      「…っ……くぅ!」

      一つに繋がると、二人の絶頂は既に限界を超えてしまった。

      彼が気を失うと同時に放たれた想いは、まるで二人に激励をしているようだ。

      彼女達は誰もいない部室で数分間、繋がりあったまま果てた。


      「っ、……っ!」

      「んっ……や、ああ」

      誰かに呼ばれる声と寒さで気がついた彼女は、覆い被さるように自分を見ている少年と

      目が合う。

      「リョ―マ……私…」

      良く見れば、お互い生まれたままの姿でいることに気がつき、数分前の出来事を思い出して

      頬を染めた。

      「繋がった後、二人でイっちゃったみたい」

      彼はそう言っての手を取り、上半身を起こさせる。

      無意識に、床に手を付くと制服の異変に気づいて下を見た。

      「どうしたの?」

      「大変っ!リョ―マの制服、汚しちゃった!!」

      彼に掴まれた手の片割れは、二人の愛しさを肌で感じることが出来るほど濡れている。

      「どうしよう」

      「別に良いよ。そんなこと」

      被害を受けたのは、自分だというのに平気な顔をしていた。

      「よくないっ!どーするのよ!!おば様達にどう説明するのよ!?」

      「と寝た」

      「きゃーっ!それだけは言わないでっ!!」

      そう言ってリョ―マに力を込めて抱きつくと、彼女の頭上から口から漏れて来る笑い声が

      聞こえてきた。

      「冗談。「傘、持って行かなかったから雨で濡れた」って言うよ」

      「っ!?もうっ、いつもそんなこと言うんだから」

      頬を膨らませていると、彼の腕が背中に回される。

      「のことは本当だよ。愛しいって思っている」

      「リョ―マっ!?

      その言葉に驚いて彼の顔を見上げると、不意に、落ちてきた唇に塞がれた。

      「「愛してる」」

      それから何日かして、高等部が中等部と対戦試合をすることになった。

      竹上と対戦するのは何故か燃えているリョ―マで、一勝もすることが出来ずに試合が終了

      する。

      「ありがとうございました…」

      「ねぇ。俺がいた時だって勝ってなかったのに、人のものにちょっかい出すなんて随分

       良い度胸してるね」


      それからというもの彼女に手を出すことは無くなり、二人はあの日を境にまたお互いを

      求めるようになった。

      「ねぇ。夏休みになったら海に行こうか?」

      「えっ!海っ!?行きたい、行きたい。泳ぎなら負けないわよ」

      ある日の帰り道、のはしゃぐ顔を見て彼がニヤっと笑う。

      「なっ、何よ。変な顔をして」

      「別に」

      「あぁっ!また、私に何か隠しているでしょ?白状…」

      「うるさいなぁ。黙らせるよ?」

      そう言って隣を歩く彼女の唇を自らのもので塞いだ。

      「んっ!?」

      舌先で口内に侵入して、一気にディープに進める。

      「ふぅ、んん…っ」

      甘く絡めることで混ざり合った二人の唾液がの首筋にゆっくりと流れた。

      「……はぁ…リョ―マ、こんな所じゃ……」

      唇が解放されると首筋を舌先でなぞる。

      彼女の頭から理性が消え入りそうな頃を見計らってか、彼の笑いを押し殺したような声

      が耳に入った。

      「こんな所だから萌えるんだけど仕方ないね。このまま俺の家来ない?どうせそのまま

       じゃ、帰れないでしょ?」

      「もう、リョ―マの意地悪っ!」

      一瞬、怒った顔をしたが、彼の胸に顔を埋める。

      そんな企みに気づかず、二人は彼の家に歩み始めた。

      その間には、互いの手を握り合っていた。

      まるで、それはこれからも変わらぬ万古不易を願うかのように思えた。


 


      
―――…終わり…―――


 

 


      #後書き#

      うわぁ……書き上げてから前回に比べてかなり暴走したリョーマになってしまい

      ました。(爆)

      只今、リョーマ版の『future』と『WHITE LINE』を聴いていて萌えて

      ま〜す。(ため息)

      昨日、構成を考えて更に急いで書き上げましたから、腱鞘炎持ちの私としては辛い所です。

      私は、彼と同じく左利きです。

      でも、両手は使えませんね。(笑)

      使うとしたらお箸を持つときぐらいですし。(汗)

      はっ!?何、雑多なものしか書いていないでしょうか。(自分で書いておいて言うか?

      その台詞)

      あははは、それでは、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。

      それでは、失礼します。(逃げっ!)