「初詣に行くぜ。さっさと用意しろ。家まで迎えに行ってやる」
元旦の早朝、わたしの携帯に電話をかけてくるなり、奴はわたしにそう言った。
☆ ☆ ☆
初詣でGO!
☆ ☆ ☆
「わたしが?跡部と??何故!何のために!!」
ベッドから起き上がったままの状態で、氷帝学園3年の少女・は電話の相手…同級生
の跡部景吾に疑問をぶつけた。
「俺様がお前と行きたいからに決まってんだろ、アーン?」
「なるほど。わかりやすい理由だね。なら他の人も誘おう。人数多いほうが楽しいよ。うん、きっとそう
だ。よし決定」
「…オイ」
「あー、あと一人にわたしから電話かけとくよ。んじゃ、10時頃迎えに来て。ヨロシク」
ピッ
断っても引き下がる相手ではないとわかっているため、は強制的に他の人も誘うことにした。
は青学の手塚国光と幼馴染でもあった。
(予定があるかもしれないけど…。なんとかして来てもらおう。いや、強制連行してやる!!)
そうしては急いで手塚に電話をかけた。
「国光!!緊急のことで申し訳ないけど一緒に初詣に行こう!来てくれなきゃ呪う!!」
『…一体どうした』
「国光が来てくれないと、わたしは跡部と二人で初詣に行くハメになる!!」
『…わかった。何時に行けばいいんだ』
「恩に着る!!10時にわたしん家に来て!」
とりあえず信用できる幼馴染が同行してくれることとなり、ホッとするであった。
そして10時になり、三人仲良く(?)初詣に出かけることとなった。
「…チッ」
二人きりで行くつもりだった跡部は非常に不満そうである。
「自分から誘っておいて何舌打ちしてるのかな、跡部サマ?」
「…俺様と二人きりになることを嫌がる女は、お前くらいだ」
「お前は自身過剰すぎる」
「そうだ、もっと言ってやれ、国光!」
「手塚のことだけ名前で呼ぶのも気にいらねぇ。俺のことも景吾と…」
「さー、お参りにいこー」
跡部の言葉をさえぎって早足で歩く。とりあえず、三人は参拝をする。
(平和に暮らせますように!!)
「今年こそを俺のものにする」
「もしもーし、跡部、声に出てるよー」
「わざとだ」
「さようで…。にしても国光は熱心に祈ってるなぁ」
「…行くぞ」
「う、うん」
参拝を終え、次はおみくじでも引こうかと歩いていると、見覚えのある人物が近づいてきた。
「サンじゃないッスか」
「えーと、ハラキリ君?」
「…切原ッス…。それにしても大変そうッスね。どうせその二人、無理やりついてきたんっしょ?」
「跡部はそうだけど、国光は保護者としてついて来てもらった」
「保護者…」
の言葉に、流石にショックを受ける手塚。
「なるほど。跡部サンに誘われて、二人きりになるのが嫌だから手塚サンを誘ったってわけッスか」
「察しがいいね、はりきり君」
「切原ッス…。ってことは、やっぱさんはどちらとも付き合ってるわけじゃないんスね?」
「…は?」
「うちの学校ででも、テニス部の間じゃ噂になってるッスよ。さんの本命は跡部サンと手塚サンのどちら
か!?ってね」
それを聞いたは呆然とする。今まででも氷帝学園で、女の子達に「跡部様と手塚君のどちらと
付き合ってるの!?」と問い詰められたことが何度もあるからである。まさか他の学校でも噂されていたとは。
「いやいやいや、跡部はただの友達…いや、ただの知り合いだから」
「照れるなよ」
「わたしが照れているように見えるのなら、眼科に行くべきだよ跡部!で、国光はわたしにとって父親
のような幼馴染」
「……」
せめて『兄のような』にしてほしいと思う手塚。
「へぇ。んじゃ俺にもまだチャンスがあるってわけッスね」
「…へ?」
「ハッ。んなもんねぇよ。俺とはいずれ結婚するからな」
「結婚!?いつの間にそんな話になった!?そりゃあ跡部の財産は魅力的だけど!!」
は正直である。
「随分な自身ッスね。アンタ、潰すよ?」
「アーン?」
「…お前達にを任せるわけにはいかない」
「…本当に父親みたいッスね、手塚サン」
「……」
「えーと。それじゃ、おみくじ引きに行こうか。キリハリ君、またね!」
「だから切原ッス…」
このまま話していても埒が明かないと思ったは、切原と別れ、手塚をひっぱっておみくじを引きに行っ
た。おみくじを引いていると、今度は聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「よし、大吉だ。ラッキー!…と、あれ、ちゃん!?」
「…ごくせん君?」
「千石だよ…。へぇ、三人で来てるだね」
「…よければ跡部を引き取ってくれない?」
「い、いや、遠慮しとくよ。ちゃんなら喜んで引き受けるけどね」
「ソレハ結構デス」
「(いきなりカタコト!?)それは残念」
千石とが二人で話しているのが気に入らなかったのか、跡部が割って入ってくる。
「おい千石。俺の女をナンパしようなんざ、いい度胸じゃねぇか、アーン?」
「跡部の女なんてどこにいるのかなー」
はわざとキョロキョロしてみせる。その時、周りから数人の女性の声が聞こえてきた。
「何あの子。いい男3人に囲まれちゃって」
「大したことない女のくせに〜。いい気になってんじゃないわよね〜」
わざと聞こえるように言っているのは明らかである。わなわなとは震えだす。跡部がその女性達に
文句を言おうとした時、どんっとが跡部の背中を押す。
「じゃあどうぞ!!この人を持って行って下さい!」
「おい、…」
「わたしが一体何をしたって言うの!?なんでそんな風にいわれなきゃならない!?わたしの苦労も
知らないくせにーーーーっ!!」
「…落ち着け、」
暴れるをどうにか手塚がなだめる。驚いた女性達はそそくさと去って行った。
「気にすることないよ、ちゃん。それよりおみくじを引きにきたんだよね?」
「う、うん。よし、おみくじを引いて気分をなおそう!」
「うん、それがいいよ。それじゃ、俺はここで退散するよ」
千石は去り、三人はおみくじを引く。
「…吉だ。これくらいが一番かな」
「「…凶…」」
どうやら跡部と手塚は二人とも凶だったらしい。
「ハッ。気にするほどのことじゃねぇよ、なぁ手塚」
「…あぁ、そうだな」
と言いつつ、表情の暗い二人であった。
帰り道。
「そういえば国光、さっき随分と長い間お祈りしてたけど、何を願ってたの?」
「…お前に『父親のよう』と言われないように、と」
「!!ごめん!そんなに嫌だったとは。んじゃ『母親のよう』にするよ」
(一体どうしたらそういう考えになるんだ…)
心の中で頭を抱える手塚。
「…お前も苦労するな、手塚」
「……」
こうしてまた1年の幕が開けた。
☆ ☆ ☆
あぁ神様仏様、わたしの願いはただ一つです。どうかただ平和に、女の子に睨まれない様に、のびの
びと暮らさせて下さい!!
〜END〜
○あとがき○
最後の作品がこんなのですみません。でも私はこーゆー話が一番書きやすいのです。
歌穂さんの企画に参加できたことを幸せに思います!ありがとうございました!!参加はこれで
最後となりますが、これからも応援しております!
†ありがたくもない柊沢の感謝状†
れなさん、今回も参加して頂きありがとうごさいます!
いえいえ、この書き方が一番れなさんらしくて私は好きですよv
でも、これが最後なんですね、と思うと正直寂しいですが、そんなことは言ってられません。
これからのれなさんのご活躍を心より応援しております。
それでは最後になりますが、今まで本当にありがとうございました。