「こんにちはー」
               「サン!アタシに会いに来てくれたんスね!?」
               「会いたかったよ、夜一さんっ!」
               「……」


                『今』を大切に


                春うららかな日。一護達が通う学校の3年生であるは浦原商店へとやって来た。
               浦原は大喜びで両手を広げる…が、はそれを素通りして猫の姿の夜一を抱き上げた。

               「サン…。こんないい男がここにいるというのに…」
               「いい男?どこに?」
               「あんまりッス…!!」

               しゃがみ込んでうながれる浦原をウルルがよしよし、と頭をなでる。はその様子をちら、
               とだけ見るとすぐに視線を夜一に戻す。すると夜一は周りには聞こえないように小さな声
               でに言う。

               「もう少し素直になったらどうじゃ?」
               「な、なんのこと?それより、ちょっと散歩に行こうよ。桜が綺麗だし」
               「わしより、喜助と行け」
               「そーッスよ♪」
               「うわっ!!イキナリ湧いてでないでよ!!」

               先ほどまで向こうでうなだれていたはずの浦原が突然目の前に現れたため、驚く
               またしてもうなだれるか…と思いきや、浦原はの腕をひっぱる。

               「なっ!?」
               「桜、見に行きましょうか」
               「は!?いや、わたしは夜一さんと…」

               と、は夜一の方を見るが、夜一の答えは…。

               「…行って来い」
               「夜一さーーーんっ!!」

                  ☆

               「…夜一さんと来るはずだったのに…」

               浦原と桜並木道を歩きながらは文句を言う。

               「な〜に言ってんスか。本当はアタシと来たかったくせに。照れ屋ッスね〜vv」
               「だっ、誰がっ!!」

               顔を赤くして、早歩きになる。浦原も歩調を上げ、隣を歩く。しばらく無言で歩いてい
               た二人だが、浦原がつぶやくように話しかける。

               「綺麗ッスね、桜」
               「うん」
               「でも、すぐに散ってしまう」
               「…うん」
               「永遠のものなんてない」
               「…!!」

               ピタリ、とは足を止める。一方の浦原はゆっくりと歩き続ける。

               「でも、今確かにアタシ達は同じ時を過ごしてるんです。なら、その時間を大切にしま
               せんか?」
               「…何…言ってるの?別にわたし、浦原さんといる時間なんて…」

               ここでようやく足を止める浦原。後方にいるに向き直る。しかしは視線を合わせようと
               はしない。

               「なら、どうしていつも浦原商店に来るんですか?」
               「夜一さんに会うため」
               「サン、あいにくとアタシはそんなに鈍くないんスよ」
               「…っ」

               そう、が頻繁に浦原商店を訪れていたのは浦原に会うため。そんなことは、夜一も浦原も
               お見通しだったのだ。長い沈黙。…が、突然が俯いていた顔を上げた。

               「わかった、認める。認めますっ!!わたしは浦原さんが好きです。大好きです!!でも、
               浦原さんは死神で、わたしはフツーの人間だしっ、いつかつらくなると思ったから…。だから、
               自分の気持ち隠してましたっ!ううん、それどころか、この想いをなくしてしまおうと思ってま
               した!!!」

               一気に気持ちを吐き出すに驚く浦原。

               「い…いきなりそんな告白が聞けるとはせんでした…」
               「…予想外でしょ」

               今にも泣き出しそうなだが、必死に耐えている。

               「後でつらい思いをするくらいなら、最初からなかったことにすればいいんじゃないかって…
               思って…。ばかだね、わたし。結局今、つらいのに」

               浦原はそっとに近寄り、抱きしめる。

               「本当に、もったいないことしてますよ。せっかく両思いなのに、今までイチャイチャできなかっ
               たじゃないッスか」
               「…エロ店主」
               「あ、『ハンサム』が抜けてますよ」
               「え、ハンサム?誰が?」

               と言ってようやく笑う
               
               「そうやって、笑っていて下さいね」
               「…『貴女は笑顔が似合いますから』とか、ベタなこと言うんじゃないでしょうね?」
               「うっ」

               …言うつもりだったらしい。

               「さて、散歩を続けますか」
               「うん」

               そうして再び二人は桜の下を歩き始めた。
                その後、手を繋いで帰ってきた二人を見て夜一は一安心し、「まったく、世話がかかる
               のぅ…」とつぶやいた。

               〜Fin.〜


               ●あとがき●
                ちょっとシリアスなものを書きたかったので。でもシリアスって書いてて恥ずかしくなってくるの
               です。なので、最初と最後はギャグに逃げました(笑)。…それにしても…短い。展開が速
               すぎる…。




               †ありがたくもない柊沢の感謝状†

               れなさん、今回もありがとうございましたv

               珍しくも少しシリアスなお話しで新たな原石を拝見する作品だと私は考えています。

               この原石をどうするかはれなさん次第であり、この作品をどう受け取るかのあなた次第です。

               それでは、春らしい作品をありがとうございました。

               次回もまた宜しくお願い致しますね。