そんなこんなで、長かった夏休みも今日で終わり。
最後になんか夏っぽいことしてぇな、ってことで。
誘ってみた。花火大会。
In the sky〜Midnight Parade
「綺麗っすね」
「……そーだな」
お前のほうが綺麗だよ、越前、なんて、気障な人ならさらりと言ってしまえるんだろうけど。
俺は気障の気の字にも縁の無いような奴だ。言えるはずが無い。
ところで俺は今、ヤキモチを妬いている。相手はなんと林檎飴。
だって俺でさえ触れたことのない、越前の唇とか舌とかに、あんないとも簡単に触れまくっている
のだ。
うわっ、考えただけで悔しいっ! ハンカチでも噛みたい勢いだ。
なんて、半ば殺気を含んだ眼差しで林檎飴を睨んでいると、
「そんなに食いたいすか、コレ?」
と、越前。
チャンス到来っっ!
俺はこれでもかと首を縦に振る。
「どぞ」
林檎飴を差し出される。
俺は迷わず、でも控えめにそれに齧り付いた。
林檎飴うめ〜Vv
じゃなくて、越前と間接キス〜Vvである。
そして俺の後に齧り付く越前もまた間接キス……。
あぁ、もうダメだっ!
ここは花火大会の会場から少し離れたところにある、廃ビルの屋上。
誰にも邪魔されずに花火が綺麗に見える穴場として昨日見つけた場所だ。
だから人目を気にする必要もないし、と、俺は身体を越前のほうにぐいと寄せた。
「こっちも欲しい」
奪うしかねーな奪うしかねーよとか思いながら、林檎飴を持つ手を引っ張り――唇を奪った。
ほんのり林檎飴の味。
花火の音も気にならなくて、今この世界にいるのは自分達だけだと思えてしまうくらい、俺たちは
夢中になった。
「んっ……」
「越前……嫌がらねーのか?」
てっきり何するんすかっとか言われると思っていたのに。そんな素振りは微塵も見せず。
ただ頬を赤らめて、そっぽを向いている。
あれ? この反応って、脈アリって思っていいわけ??
俺は決心を固めた。越前に告白するっ!
「あの、さ、越前。おれ、ずっと前から……そのっ、好きで」
心臓がドックドックと脈打って、頭に血が上ったのか顔も熱くて。
それでも俺は続けた。
「付き合ってくださいっっ!」
お互い何時の間にか向かい合わせに正座していて、俺は俯きながら右手を差しだした。
伝えたいことは全部伝えた。
あとは、返事を待つのみ――。
ふと、右手にぬくもりが伝わって、俺は顔を上げた。
あれ? どこかで見た景色。
ああ、海へ行ったときだ。
なんだ、俺たち実は両思いだったんだ。ならもっと早く伝えればよかった。
「夏休みの間、桃先輩チャリでいろんなとこつれてってくれたりしてすごい嬉しかった」
「越前……」
どうしよう。襲うなら今しかねーと俺の本能が言っている。
ええーいもうなるようになっちまえっっ!
俺は本能の仰せのままに、越前を押し倒した。
「うわっ」
「なぁ、いいだろ?」
「っ、ここはダメっ」
「……それって俺の都合よくとっていーのか?」
聞くと、ひかえめに、でもはっきり越前は頷いた。
「おっしゃ♪じゃあ俺んち行こうぜ!!」
その後はまぁ言うまでもないだろうが、チャリのニケツで俺の家に行きくんずほぐれつ……。
とにかく、夏休みの間、土手で引っ繰り返ったり海で雨に見舞われたり今日は林檎飴にヤキモチを
妬いたりと色々あったけど、俺たちは無事、結ばれたのでした。
チャンチャン♪
FIN.
H16.7.1
†柊沢のありがたくもない感謝状†
前回でもご参加頂いた舞ちゃんの「In the s」シリーズの最終章です。
何はともあれ、連載終了おめでとう!(祝)
しかし、桃城君は可愛いですねv
林檎飴に妬いちゃうなんて。(笑)
しかも、理性の理の字もないっすよ。(爆)
暴走的な作品が魅力的ですvv
それでは、次回も宜しくお願いします。