なぁ、

      覚えているか?

      俺たちが出会ったあの夏のことを。

      あれはクソ熱い夜のことだった。

      俺は寝苦しくて外を少しでも散歩すれば涼しくなるかと思って家族を起こさない

      ようにそっと家を抜け出してきた。

      やっぱり、外は涼しくてこのまま寝むっちまいたかったが、最近何かと物騒な話ばかり

      がニュースに流れるから思いとどまった。

      そんな時だった。

      ちょうどそんなことを考えていた時に女のすすり泣く声がしたから俺はみっともなく

      もドキドキした。

      この歳になって幽霊や化け物類を怖がっているなんてとダチや父親に笑われる

      だろうな。

      勿論、この事実を知ったお前にも。

      だけど、これは事実だから仕方ない。

      俺は、逃げたい気持ちでいっぱいだったが、正体を知らないで逃げてきたと知れば

      馬鹿にされることは間違いないだろう。

      俺はそんな素直じゃない意地に燃えながら足をその声が聞こえる方に向けた。

      着いた場所は、小さな公園だった。

      遊具と言っても大した物はなく、滑り台と砂場しかないポケットパークだった。

      周囲は当たり前に闇とかすかな虫の声に包まれている。

      だが、そんな中で暗がりに慣れた俺の目は捉えていた。

      砂場の縁に腰を着いた女が声を殺すように涙を零していたのを。


     


      それが、お前との最初の出会いだったな。

      俺が声を掛けるとまるで、幽霊でも見たような顔をして怯えていたその服装は

      乱れていた。

      それを見て一気に頭に血が上った俺には必死で首を振っていたな。

      『違うの!これは……やけ酒しちゃって』

      『あんた、二十歳過ぎてんのかよ?』

      『一応ね。これでも大学生なのよ』

      『げっ。俺より年上かよ』

      『あなたは…ハーフ?どことなく日本の雰囲気があるけれど』

      『あぁ、俺の父親がブラジル人なんだ』

      『そうなの?じゃあ、スペイン語がぺらぺらなの?』

      『ま、まぁな』

      『凄いなぁ。私なんて大学生なんてやっているのに、全然ダメだよ』

      そう言いって俺たちは昔から知り合っているかのようにその場で何時間も話した。

      そして、どちらからもなく本題へと延びていった。

      『私ね…フラレちゃったんだ。二年生の時に初めて付き合った彼氏に……』

      『……』

      『それでね。恥ずかしいけど、こうなるまでヤケ酒してたってわけ。情けない

       話しでしょ?』

      そう言っては他人事かのように笑ってみせた。

      だが、俺はそれにつられずお前をじっと見つめ返した。

      『みっともなくなんてねーよ。逆にを振った男の方がバカなんだよ』

      『そんな…』

      俺は何故自分がこんなことを言ったのかなんて考えなかった。

      俺は、最初、お前を見た瞬間で、好きになっちまったから…。

      『俺じゃ駄目か?』

      『へっ?』

      俺は勢い余ってを抱きしめた。

      『俺ならお前を泣かせたりはしない』

      『ジャ、ジャッカル君!?』

      俺が抱きしめると、改めて女の柔らかさにドキドキした。

      だが、俺の気持ちは嘘じゃない。

      本当に、が好きだった。

      これが真夏が呼び起こした夢でも良かった。

      戸惑いながら俺を抱きしめ返したお前をその場で愛した。

      夜が明けて俺達はその場で眠ってしまっていたことに気づいた。

      俺の隣には、今だキレイな寝息を立てているがいる。

      夢じゃない。

      お前がここにいる。

      そんな当たり前なことに感動した。

      俺は、お前を大事にする。

      だから、

      お前も俺だけを愛していろよ?

      ♯後書き♯

      皆様、こんにちは。

      冴えない管理人の柊沢です。

      今回は久しぶりに二通もupしてしまいました。

      もう一通は、「鋼の錬金術師」のアル手紙二作目です。

      我ながら明るい内容より暗い内容にする方が好きなようで、今回もとことんとダークに

      仕上げてみました。

      こちらはその次でしたので、裏行きにしてみましたが、如何なものでしたでしょうか?

      それでは、ここまで、読んで下さり、誠にありがとうございました。