なぁ、


         覚えているか?


         俺とお前が初めて会った日も、こんなクソ暑い夏休みの夕方

         だった。

         俺は犬の散歩で昼間よりか涼しいこの時間を満喫していた。

         そんな時だった。


         『可愛いワンちゃんですね』

         そんな妙に明るい声が背後から掛かってきた。

         いや、掛けられたのは俺じゃねぇけどよ。

         俺が振り返ると、は何か柔らけぇものを想像するような笑顔で

         こっちを見ていた。

         いや、見られていたのは、俺じゃねぇけどよ。

         それがきっかけで俺らは良く話すようになったけな。

         後から知ったことだけどよ。


         お前って、年上だったんだな?

         そりゃ、たった一つだけだから対して差はねぇけどさぁ。


         って全然高校生っぽくないんだよな。

         あっ、これ言ったらまた、本人が怒るだろうな。

         一目で見ると、俺と同じ中三かヘタしたら中一までに見られるん

         じゃないか。

         前にそう言ったら、お前はふくれっ面をして言ったよな?


         『良いもんね!そしたら、春風君に責任とって貰うから』

         『せっ、責任って何だよ?』

         『そんなに実年齢より若いって言うんだったら、見た目が同い年の

          あなたにお嫁に貰ってもらうからね』

         そんなことを言ったは、後からその言葉の重さを知ったかのように

         赤くなったよな。

         良いぜ。

         あの頃は、驚いて言えなかった応え。

         今なら、面と向かってお前に言えるかもしれねぇ。

         好きだ。

         俺たちが知り合ってから二度目の夏が来た。

         今年もお前は、あの蜩の鳴く夕暮れに向かって微笑んでいる。

         俺の隣であの頃と変わらないだから俺は好きになっちまった

         のかもしれない。

         片手には弱りきった蝉を乗せ、我に返ったヤツを微笑んで

         空に還した。

         そして、もう、片方は俺の手を握り締めて「さよなら」と

         寂しそうに呟く。

         ヤツらに残った命はもうすぐ終わる。

         俺はそんな顔をしたお前の手を引いてキスをした。

         まだ、そン時の感触が残っている。

         秋の匂いがした瞬間、俺はコクった。

         明日から新しい一日が始まる。

         それは、と同じ時間を生きるからだろうな。


         なぁ、

         俺は、いつでもお前の隣にいるぜ。
 



         ♯後書き♯

         皆様、こんにちは。

         今回も「夏」をテーマに作業した柊沢です。

         第五作目をようやく書き上げました。

         まだまだあるのですが、気づけば、八月中旬なんですよね?(汗)

         これからは小説同様に作業を進めて行かなければいけないですね。

         さて、今回のヒロインは文中にも綴りましたが、高校一年生です。

         柊沢自身の大きさで作業をしているのもありますが。(滝汗)

         それでは、皆様からのご感想を心よりお待ちしております。