なぁ、


         夏休みも数えるぐらいになった。

         だからこそ、今夜は、最後の賭けにしよう。

         俺の…いや、俺たちの好きなヤツといった方がいいだろう。

         淳も何だかかんだと言っても、俺の双子の弟だ。

         しかも、一卵性だから外見も中身も嫌でも同じだ。

         それ故、持たなくてもいい対抗意識を燃やしてしまう。

         だから、子供の時から近所付き合いで仲良くなったとどっちが相応しいか

         争ったことは数え切れないぐらいある。


         だが、…。

         夏休みも指折りで数えられるようになった今夜は、お前が俺たちの前から

         姿を消す最後の夜は、決着をつけなくてはいけない。

         夏休みで実家に帰ってきた淳とどちらか選べられるか。

         それとも、どちらも選択されないか。

         三分の一の確立だが、それでもそれに賭けてみる。

         俺がチョイスしたファイナルステージは、野外映画館。

         普通は車を持っているカップル達にだけ許される瞬間。

         しかし、俺はそこの管理人のおっさんと顔馴染みだから半額料金で

         閲覧を許される。

         今日の演目は、数十年前の恋愛映画。

         内容は、今の俺たちと同じで二人の男に愛される一人の女の話だ。

         だが、違うところと言えば、まだ俺たちはにコクってはいない

         ことだろう。

         情けない話だが、俺たちはこれまで幼馴染として接してきた

         時間が長い。

         それ故、俺たちの身勝手な想いでお前を泣かせてしまうのではないかと

         思うと、それが怖かった。

         しかし、もう、そんなことは言ってはいられない。

         明日には千葉を去ってしまうのだから。

         の父親の都合で四国に引っ越すことになったらしい。

         夏休みに入る前に六角中でちょっとした送別会をした。

         俺はみんなの前で笑って別れを告げていたお前の本心は知っていた。

         は昔から強がる所がある。

         それを知っている俺は、お前が教室から出るのを見計らって

         抱きしめた。

         最初は驚いた風だったが、そこはやはり十年来の幼馴染だ。

         数分間、声を殺して俺の胸で泣いた二人だけのメモリアル。


         なぁ、

         俺は淳よりもお前のことが好きだ。

         もちろん、世界中の誰よりものことを……。



         ♯後書き♯

         皆様、こんにちは。

         またもや、義務教育を終わってもいない少年に愛を語らせてしまった

         柊沢です。

         でも、今回はいつもよりか作業に戸惑いました。

         なぜかと言えば、彼はあまりアニメでも原作でも出演も口数も

         少なくて…。

         それでは、皆様のご感想をお待ちしております。