守らなければならないもの
「兄ちゃん!また、笛吹いてよ」
「クスッ…、良いよ」
ここは、無限城。
都会の真ん中に大きく存在している建築物の残骸では、たくさんの人間が生活を
している。
だが、その存在は常に脅かされており、一般の暮らしを当たり前としている者たちは
決して維持できる世界ではなかった。
ほとんど毎日と言って良いぐらいにどこかの刺客がやってきては何人かの死傷者が
後を絶たない。
それはいつも決まって無差別で、女子供も関係なく彼らの餌食にされた。
だが、ここ何年間ほど前に雷帝と呼ばれる少年が現れ、それを崇拝する四天王や
さらに彼らを首領とするチームが結束されたお陰で、以前のような惨殺は
めっきり減った。
しかし、まったくなくなった訳でもない。
一人の金髪の青年が一心に瓦礫の山に手を合わせていた。
その場所は彼の幼い時の友人達が静かに眠っている。
何年も昔、いくつかの惨殺事件に彼らは巻き込まれた。
だが、当時五歳くらいだった青年は奇跡的に助かったが、
周囲には死後硬直して冷たくなった親しい友人達がいた。
あれから何年経っただろうか。
彼は滅多に笑わなくなってしまった。
本当に時々、見せるものは冷たく、生気を全く感じさせない。
恐らく、あの日から動けないでいるのだろう。
無力な自分。
守らなければならないものが、確かに自分にはあった。
しかし、阻止することが出来なかった。
気がつけば、血まみれの友人がこちらに向かって白目を向いていた。
それは、どうして助けてくれなかったのかと訴えかけるのには十分だった。
(また、あの人はアソコにいる…)
数名の子供達に手を掴まれた彼は悲しげな表情をすると、小さな紅葉を放した。
「ちょっと、ごめんね」
「兄ちゃん?」
……。
彼らの手を離すと、腰に提げていた木製の横笛を取り出し、キレイな音色を
奏で出した。
「?」
背後にその音色を感じた金髪の少年はそう呼ぶと、こちらに向かって振り向く。
その瞳には、やはり、生気を感じられないほどやつれていた。
死神に憑かれてしまった彼を眠らせることが出来るのは、育ての親である
あの人物しかいない。
だが、こうして笛を吹くことであの少年と共に迷える魂を慰めることくらいは
できるはずだと、常に考えていた。
天にまでも透きとおってしまいそうな音色はどこまでも清くて、聴いている側だけ
でなく弾いている本人までも癒される。
「ありがとう、」
木製の調べから唇を離すと、そんな声が聞こえてきた。
「いえっ…銀次さんのお役に立てて僕も嬉しいですっ」
演奏を終えた彼にどこから聴いていたのか、何百もの人々が一人の少年に向けて
割れんばかりの拍手をする。
当の本人は、頬を紅く染めて照れていると言うのに、銀次と呼ばれた彼は
笑みを浮かべただけで瞳は凍えたままだった。
また、それに気づいた彼もまた悲しそうな表情をすると、子供達に行こうかと
背を向けて歩き出す。
彼の名は、。
去年の春頃、周囲が花見だ何だと浮かれきっている時、無限城も新しい
季節の訪れに幸せを感じていた。
だが、彼らの暮らしには瞬時の幸福は死と隣り合わせである。
「こっ、こないでっ!」
それは桜が散る夜のことだった。
一人の少女に無数の男達が取り囲んでいる。
視線を向ければ嫌らしい笑みを浮かべ、じりじりとこちらににじり寄ってきた。
彼女はそれから逃れるように瓦礫の中に逃げ込もうとするが、あいにく体力のない
人物がよじ登れるものではない。
かと言って、背後から無気味な笑い声を上げる連中の言う事を素直に聞いて
やれるほどお人好しではない。
しばらくすると、その中のリーダーらしいサングラスをかけた金髪の男が、まるで、
観念しろとでも言うような口調で少女に話しかけてきた。
「こんな時間に出歩いている方が悪いんだぜ?それにさっきから雷帝に用が
あるって言ってんじゃん。さっさと呼べば良いんだよ」
「アンタたち銀次さんに何か用でもあるの!?」
「あるぜ。この前のカリをきっちし返さねぇと気が済まない性質なんでね」
「それなら私でなくても良いじゃない!!」
「おっと、逃がしゃしねぇよ。戦いの前に腹ごしらえしないとな、ねぇちゃん?」
そう言うと、男達は一斉に一人の少女の元へ駆け寄ってきた。
「誰か、助けて!銀次さんっ!!」
もう、頭の中は真っ白だった。
目の前には、今にもこっちに向かってくる無数の獣達。
体は振るえ、足もガクガクしてきて冷たい地べたに座り込んだ。
思い切り大声を張り上げた所為かそれともこれから起こるであろう地獄を想定して
だろうか、少女の意識はそこで途切れた。
「待て!」
不意にそんな声を聞いた気がしたが、彼女にはもはやそれを確かめる余裕さえ
残されていなかった。
次に気がついた時には、真っ白な壁が目に入った。
「っ…」
それで、全ての終わりを悟った少女は瞳に涙を溢れさせ、声にもならない
声で泣いた。
もう、昔には戻れない。
「おっ!気がついたか?」
それに弾かれたように慌てて飛び出してきた中高年の男性が、視界に入ってくる。
「ゲンさん…私っ」
「大丈夫じゃよ。お前さんの大事なものはこの方が守ってくれた。おい、
入ってきなさい」
「はい」
呼ばれて登場したのは、彼女と同じ背丈の少年だった。
茶の瞳がとても可愛らしい。
背中まで伸びている長い髪は夜を包んでしまったようなストレートで、先端を
太いゴムで止めていた。
服装もそれに合わせているのか、長袖のパーカーもパンツも目立たない色だった。
だが、少女はそんなことはどうでも良かった。
自分は助かったのだ。
これほど嬉しいことはない。
「初めまして…」
「大丈夫かっ!?」
彼の声を掻き消すように医務室へ飛び込んできたのは、雷帝と四天王と恐れられて
いる人物たちだった。
「銀次さんっ!?はい、この人が助けてくれたんです!!」
彼女はベッドから起き上がると、先程までのことを話して聞かせた。
「それは、本当にありがとう。俺達が遅かったばかりに通りすがりのアンタに
迷惑をかけたな」
「迷惑だなんてとんでもありません!あのっ」
「何だい?」
「僕をここに置いてくれませんか?事情はいえませんが、行く当てもなくて…
ちゃんと、仕事はします!ですからっ」
「解ったよ。アンタをここに置く」
「本当ですか!?」
「あぁ。だけど、まだアンタの名前を聞いてないんだけど」
「あっ、それは申し遅れました。と申します。武術は一通りできます。どうぞ
宜しくお願い致します!!!」
それが、彼とのファーストコンタクトだった。
あれから、早11ヶ月だが、今だどこからどんな経緯でこの無限城にやってきたか
なんて誰にも解らない。
少年の武術にも不審な点があった。
体の柔らかさを利用してなのか、今まで見たこともない動きをするのだ。
そして、みんなが寝静まる頃を見計らっては、先程雷帝の前で奏でた音色を
誰に聴かせるわけでもなく、荒廃したビルの残骸の上で吹いていた。
「ねぇ、兄ちゃん。さっきの曲なんて言うの?」
何曲か奏で終わると、拍手と共に一人の少女が尋ねて来た。
は少し悲しそうな顔をすると、何かを取り戻すように微笑んだ。
「『涙の記憶』だよ」
「『ナミダノキオク』?」
復唱する彼女の頭を撫でた彼はどこか遠い視線をしていた。
「レクイエムだよって言っても解らないよね?死んじゃった人のために
弾く曲なんだ」
「じゃあ、どうして夜中に弾いているの?」
「誰がそんなことをっ!?」
にしては珍しく驚いた顔をした。
幼い少女は顔を強張らせ、今にも瞳は涙のシルエットを映しそうだ。
「あっ、ごめんね。お兄ちゃん、びっくりしちゃって怖がらせちゃったね」
そう言って頭を再び優しく撫でる。
ここに居る子供達は常に、恐怖に晒されていた。
だから、親をなくした子供も平気でいる。
この子もその中の例外ではなく、友達と一緒に暮らしていた。
彼が来るまでは以前のように笑うことすらできずにいたが、笛の音色がその錠前付き
の彼女の心を開いたらしい。
また、逆戻りさせてはいけない。
小さい子供をあやす様に抱き上げ、不安がらないように微笑んで見せる。
そう、自分は誰かを悲しませるためにいるんじゃない。
誰かを笑わせるためには、偽善でも良いから自分は笑っていなければいけなかった。
「銀次さんが言ってたの…」
「えっ?」
その声で我に返った少年は抱き上げた少女の顔を覗き込んだ。
まだ涙が溢れているけれど、その瞳はしっかりとこちらを見据えている。
彼女は何かを飲み込むように喉を鳴らすと、重たくなった口をようやく開いた。
「どうしてあんな悲しそうな顔をしてさっきの曲弾いているのかって」
「銀次さん」
見られていた。
勿論、廃墟のようで彼らの大切な住居な訳だから全く観客がいないとは考えてない。
だが、それが普段雷帝と呼ばれている彼だとは思いもしなかった。
レクイエムを笛に込める度、己も救われる気がする。
それは忘れることが出来ないアノ人達のため...。
だが、いつも途中で違う誰かのことを連想している自分がいる。
手にしていた笛を腰に戻すと、彼は抱き上げていた少女の額にキスすると、
ありがとうと言って駆けて行った。
「銀次さんっ!」
無限城の中でも一番大きなビルの中に駆け込む姿を全身黒ずくめの男達が見ていた。
「ようやく、見つけたな」
それだけを言うと、彼らは一瞬の風の中に消えてしまう。
それが幻だったかは後に嫌と言うほど思い知らされることになるが、はとにかく
最上階を目指した。
彼に会いたい。
勿論、四天王でもその下の者でもない限り、あの少年に必然的に会うことなど
許されていなかった。
だが、今抱いたばかりの気持ちを直接伝えたい。
いつ頃から気づいていたのか。
そして、何故知っていたのに、口外はしなかったのか。
何段の階段を乗り越え、調べ上げているトラップを突破し、最上階にたどり着いた
彼のか細い腕を誰かが掴んだ。
「っ!?」
「俺だ、」
「銀次さんっ!!」
いきなり引き寄せられた上に背後から抱きしめられ、思わず鼓動が高鳴ってしまう。
潜めた声が色っぽくて、目にしていたどの彼とも合わず、彼の頭は軽いパニックを
起こしていた。
「俺に何か言うことがあったんじゃないのか?」
数分経っても腕の中で固まっている少年に首を傾げる。
そんなことは解っているのだが、はそれどころではなかった。
静まれ、と何度心の中で叫んでも、一度速くなった動悸を元に戻すのは簡単な
ものではない。
「ど、どうしてここに?」
話題を一端ずらして平静を装うつもりだったが、どうも声が上擦ってしまう。
それに何故か苦笑しているのか頭上から声が漏れるのを微かに聞いた。
「の声、聞こえたから」
「えっ?聞こえてました!?」
彼を呼んだのは、最下位の一度しか口にしたことはない。
だが、目の前の銀次が嘘を吐いているとは考えられなかった。
答える代わりにいつもの冷笑を浮かべる。
「どうして、僕が夜中に笛を吹いていることを知っているんですか?それに
なぜ口外しないのですか?」
「口外して欲しいのか?」
「違います!僕が気になっているのはあなたがいつから見ていたかです!!」
そう言い終わるのを見計らってか彼の顎を掴み、自分の方に向けさせる。
男にしてはきれい過ぎる肌を堪能するように指の腹でさすれば、くすぐったそうに
少年が頬を赤らめた。
「ずっと見ていた。だけど、直接に聞くのも悪いと思って、黙っていた」
「銀次さんっ!?」
驚いた拍子に気がつけば、彼の顔が至近距離にあった。
「……お前」
「イヤー!放してぇ!!」
角度を変えた二人の耳にそんな絶叫が響いた。
「この声は瀬南ちゃんっ!?」
その声を聞いた瞬時に彼は腕から軽く脱出し、階段を転げ落ちるような速度で
駆け下りる。
「ちょっと待て!!!」
後ろから銀次の声が追いかけてくるが、そんなものを待ってはいられなかった。
瀬南と言うのは、先程泣かせてしまいそうになった少女のことである。
途中の階で大きな窓を発見した彼は迷うことなくそこから飛び降り、オリンピック
選手並のアクロバットで回転を繰り返し、地上何メートルまで近づくと、まるで
天女のように着地をした。
「来たな。。いや...家第四十五代目頭首」
待ち構えていたのは黒い忍者の格好をした男達数名。
彼はきっと睨みつける先に泣き叫ぶ少女がいた。
「お兄ちゃん!助けてっ!!」
「その子を放せ!!!」
「おっと、乱暴な言葉はいけませんな。コイツがどうなっても良いのか?」
胸元から取り出したのは、鋭利な刃物。
反射するたびに怪しい光を放った。
唇を強く噛む少年に口の端をつり上げて笑う人物は手下に少女を渡し、こちらに
向かって歩いてきた。
「大体、そのお姿はなんですか?頭首ともあろうお方がそのような格好をして
いるとは、感心しませんな」
「それもこれもお前らの所為ではないか!お前らが家に攻めてこなければ私達は
幸せに暮らせた!!」
両手をぎゅっと握りしめ、彼を至近距離で睨みつければ、凄い音を立てて頬を
平手打ちされた。
頬は当たり前に赤く腫れ、秋真っ盛りに突入した風がそれを撫でる。
いつもは心地良いそれが今日に限ってはとても痛みを伴うものだった。
「さぁ、我々と一緒に来てもらいましょうか?我々にはあなたが必要なんですよ」
「承知した。だが、その子を放すのが先だ」
「そんなことを言って逃げる気ではなかろうな?」
「案ずるな。私は誇り高き家の第四十五代目頭首だ。そのようなことはせん」
首領の男が首で合図すると、手下は瀬南を放した。
「お兄ちゃん!!」
勢いよく駆け寄る彼女を抱き上げ、ごめんねと呟いた。
「瀬南ちゃんを危ない目に遭わせちゃったね。それに、みんなに嘘を吐いていて
……本当にごめんね」
「ううん、お兄ちゃんの所為じゃないもん!あたしがっあたしがっ」
また、泣きそうになる少女の額にお別れのキスを施すと、黒服の連中に向かって
歩き出した。
彼……いや、もはや彼女であることが明るみになってしまった人物は、、
家第四十五代目の若き頭首である。
この家は女性の手で守られ、女性にしか使うことが出来ない武術を専門にしていた。
だから知る者はあまりいなく、事実上口外を恐れた家は外との接触を拒んでいたの
だが、どこでどう漏れたのか、聞きつけたこの集団がある日攻めてきて、母親に
急かされるまま男装し、無限城にまで逃げてきたと言うわけである。
焼け落ちる家を遠くから息を殺して見ていた。
瞳から流れ落ちる涙の一つ一つに自分を罵声する無力さを感じる。
誰も自分は守れない。
大切な人たちも…。
彼女は黒い髪に手を掛けると、勢い良くそれを引き抜いた。
そこから現われたのは、光の反射が眩しい銀色の長い髪である。
銀の髪を秋風に晒しながら彼女は心の中で呟いていた。
(結局、「好き」って言えなかったな…)
目尻には涙が溜まりそうになるのをグッと堪える。
ここで自分が泣いてしまったら、瀬南や他の無限城に住む人たちに
申し訳がなかった。
責任は取らなければならない。
彼らはくのいちの育成強化と少女の遺伝子を欲しがっている。
それと、家に代々受け継がれし奥義も...。
「行くなぁぁぁぁ!!!!」
「っ!?」
「何ヤツ!?」
その声が聞こえたかと思うと、彼女を通り抜けた電撃が彼らを襲った。
「銀次さんっ!!」
振り返ったの視線に入ったのは、今まで見てきた彼が初めて怖い形相を見せた
瞬間だった。
「銀次さんっ!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
彼の名を呼んでも返事は返ってこない。
突然のことで気が動転してしまったのだろうか。
彼女は電圧攻撃を避けながら彼に近づくと、無我夢中で口づけた。
(私はここにいるからっ!)
唇に祈りを込めれば、それが通じたのか背中に温もりが触れたのを感じる。
それは間違いなく、彼の腕だった。
既に、を狙った男達は退散した後である。
また、来るかもしれないが、その時は二人でこの無限城を守っていこう。
大好きな人と…。
「好き…です、銀次さん」
「…」
廃屋になったホテルの一室に二人の姿はあった。
髪を優しく撫でると、彼女は気持ち良さそう瞳を閉じる。
廃屋だから電気は勿論付かなかった。
闇の中というだけでも感じてしまうと言うのに、さらに二人だけというものが
加わるとどうにも気持ちを制御することができない。
「んっ」
彼の降らした唇が優しく覆いかぶさり、思わず声が漏れてしまった。
二度目のキスは情熱的で、触れたかと思うと舌先にロックを解除させられたの中に
攻め込み、自身に甘く絡みつく。
一方、片腕で腰が崩れ始めている少女の体を抱き、片手は長袖のパーカーの中に
入っていった。
その瞬時に体をビクッとさせるが、もはや自らの力を使えるほど残ってはいない。
だが、片方の掌を服の上からそっと少年のものと重ねた。
「?」
不思議そうな顔する彼に優しく微笑むと、自分で長袖のパーカーを床に落とした。
その胸の回りには、下着の変わりに晒しが巻かれている。
だから一年も経ったというのに誰も気がつかなかったのだ。
「それじゃ、ずっと苦しかっただろう?」
「はい…」
「じゃあ、俺が手伝ってやるよ」
シルクロードの先には愛しい女性が舞い踊っている。
数分間それに気を取られていると、恥ずかしそうに胸元を押さえていると
目が合った。
「銀次さん…」
「キレイだ。それが本当のお前なんだな」
「あっ」
鎖骨の中心にきつく唇を宛がうと、赤い傷が生まれる。
「俺のものだ」
彼女を優しくベッドに押し倒すと、頂を口に含み舌でコロコロと転がした。
「あっ…ん……っ」
快楽に酔うほど大人ではない彼女達はこの感情をどう表せばいいのかわからない。
ただ、寄せては返す波の如く身を委ねていると、互いを無性に求めたくなった。
長年の埃で汚れきったシーツをぎゅっと掴んでいた両手は彼の背に回し、谷間に
顔を埋める銀次はそれに答えるように突起から口を離し、吐息をどんな言葉よりも
熱く囁き続ける。
豊か過ぎる彼女の胸を両手で掴み、その余りにも柔らかすぎる感触に下着越しに
潜めている彼自身も感じ始めていた。
少女は既に女性と化して甘い鳴き声を発してより少年を虜にする。
そのキレイすぎる銀の髪も悲しみを映す瞳も今は全て自分が感じさせていた。
片手で下腹部を撫でると、それだけで電気ショックを与えたように体が跳ね上がる。
「ここが一番感じるのか?」
「いや……そんなことっ…言わないで」
銀次の掌が残された布の上から触るそこは、既に湿り気を帯びている。
熱で浮かされた顔で訴える女性が愛しくて下半身までビクビクと感じてしまう。
「もう、良いか?ここで「待って」って言っても俺、止められない」
暗がりで慣れた目は確実に愛しいを捉えた。
数滴の涙を流しているのが何とも艶かしい。
体中のあちらこちらには自分の付けた印が眩しくて、思わず目を細めてしまう。
「うん」
声は小さかったが首を縦に振る仕草で同意だと思い、ファスナーを空けた瞬間に
下着ごと床に放った。
開脚をさせ、その中に潜り込むと、茂みを何の躊躇もせず舌先で舐める。
腕でしっかりと固定した太股にはどこに力が残っていたのか必死に抵抗しよう
としていた。
だが、そんな理由で許す彼ではない。
先程よりも力を込めて再び開脚させると、今度は自らも下半身のモノを取り出し、
一気に貫いた。
自らの腰を動かし、最奥を目指す。
こんなに誰かを愛したことも愛したいと思ったこともない。
内壁は異物を追い出そうとして少年自身を締めつけた。
だが、銀次の勢いはそれで止めることはできやしない。
片目を瞑りながらその名もない痛みに耐え、さらに最奥へと目指して愛しい
女性の体を力強く抱きしめた。
促されるように彼女自身も腰を動かし、彼の首に腕を回す。
その言葉に拍子抜けしている瞬間に内壁に力強く締め上げられ、白濁した欲望と
共に二人は果てた。
既に日は落ち、室内は目が覚めるくらいに冷えてきた。
しかし、この二人にはそんな寒さなど通じるはずもなく、互いの熱を奪い合う姿が
遅くまで続いたことは言うまでもない。
―――・・・終わり・・・―――
♯後書き♯
皆様、こんにちは。
この度は第二回目である『Streke a
vein』2004年初霜月号をご覧下さり、誠に
ありがとうございます。
今作、私は『GetBackers
奪還屋』の天野銀次を作業したのですが、
いかがだったでしょうか?
しかも、雷帝時代の彼をupしてみました。
やはり、久しぶりにして初キャラですから手こずりますね。(汗)
今回は思い切って裏作に挑戦してみたのですが、苦手な方はご注意して下さいね。
それでは、次回の『Streke a vein』をご期待下さい。