この手紙をあなたがお読みになられる頃には、僕はこの世にいないでしょう。

         江戸に戻ってきてからと言うもの体は次第に弱ってくる速度を増すばかり。

         老少不定とはよく言ったものですね。


         さん、あなたにもずいぶん迷惑を掛けました。

         以前、僕は夜中に目を覚ましました。

         ですが、昼夜を問わず床に就いている僕としては珍しくないことです。

         そんな時はいつもさんの船を漕いでいる寝顔を見ているのが、

         僕の新たな楽しみでした。

         もう元のような体に戻ることのない僕に、あなたはいつも傍にいてくれる。

         ねぇ、さん。

         こんな不甲斐ない男で申し訳ありません。

         あなたと迎えた新年も僕は寝込んでいました。

         それなのに、さんは「今年もよろしくお願いしますね」って言ってくれた。

         僕はそのたび今年もあなたと共に生きていたいと考えるんです。

         でも……もうすぐさんとはお別れですね。

         いつもならば、あなたの疲れきった寝顔を見ているだけで良かったのに、

         あの夜だけは違いました。

         『さんっ…愛しています』

         僕はそう呟いてからあなたを僕が寝ていた布団の中にそっと音を立てない

         ように押し倒した。

         もうすぐ、僕はさんの前から立ち去らねばなりません。

         ですから、僕は少しでも僕と通った気持ちを持つあなたに僕を覚えて欲しい。

         『っ…あ、んぁ……っ!』

         病床の僕に無理をさせまいと、僕の上に馬乗りするあなたが美しかった。

         体を朱に染め上げ、それでいてあちらこちらで咲く紅がとても……。

         『沖田…さ……んっ』

         初めての刺激だからかそれとも僕があなたを抱くのがこれで最後だと

         解ってしまわれたからでしょうか?


         さんは僕をあなたの中に埋め込む際、泣いていましたね。

         とてもきれいで……まるで蜻蛉のように儚げだった。

         『…こんな時くらい、僕のことをみんなみたいに「総司」と呼んで下さい』

         僕は出来るだけ優しく微笑んだ。

         ……きっと、これが最後だから…。



         ♯後書き♯

         第三回『Streke a vein』はいかがだったでしょうか?

         今回は、「幕末恋華 新選組」の沖田総司を作業したわけなのですが、

         彼をクリアした際、微笑ましくなった&号泣したのと同時に、「いつの間に

         ヤッちゃったんすか、あなたはっ!」と突っ込みたくなりました。(笑)

         次回の『Streke a vein』もご期待下さい。