なぁ、。
お前は俺のことどう思っているんだろう?
俺は初めて会った時は、年下とばかり思っていた。
長かった夏休みも直に終わって、始業式から何日間かして通常の授業が始まった。
この二学期が終われば俺たち三年が卒業する日まで指折りで数えられる。
だけど、俺たちはそんなことは在って当たり前って言う感覚だから別段、
何の気持ちも抱いて
いなかった。
……に会うまでは…。
『あれ?君、そこで何をしているンですか?』
校長先生の長い話が終わってから何日かした頃の放課後、最初にお前の存在に
気づいたのはウチのスーパールーキーであり一年部長の剣太郎だった。
俺はその声に気づくと、小さな女の子がテニスコートの前で立ち尽くして
いるのが見えた。
大方、誰かのファンと言ったところだろうと思ったけれど、やっぱり、その場に
自然と足が向
かってしまう。
これも副部長を任されている所為なのかそれとも性格上の問題なのか、俺は
その光景を放って置けなかった。
『どうした、剣太郎』
俺は知らなかったふりをして二人に近づいた。
近くで見てみると、小さくて肌は透き通るように白かった。
『あのっ…ちょっと知っていた人が前にこの部にいたので……ごめんなさいっ!』
『謝らなくても大丈夫だよ。それに見学なら大歓迎だよな、剣太郎』
『はいっ!さっ、そんな所で立っていると疲れますから中に入ってきて下さい』
好みのタイプなのかアイツは顔を紅くしていたっけな。
…でも、ダメだよ?
俺をフリーにしちゃ。
俺のことをライバル視していなきゃダメじゃんか。
あれから俺は隙を狙ってはへのアプローチを始めた。
けど、俺は知ってたんだ。
お前が最初に見ていたのは、俺だってことを……さ。
次第に距離を縮めていって最終的には俺の方から告白した。
そしたら、お前は泣いたよな。
瞳からぽろぽろ流した涙は俺の邪な気持ちを無に返すものだった。
『 私っ……私っ、本当はサエ君よりオバサンなのっ!』
それを最初耳にした時、単なる冗談だと思った。
そんな俺を見て六角中指定の学生鞄をごそごそとかき回して数分間後、
一つの集合写真を見て嘘でもジョークでものではないことを知った。
そこには、俺たちの前にいたテニス部の先輩達と今より少し若いオジイの横に
一人の少女 が笑っている。
それは、紛れもなくだった。
しかも、出会った頃に言っていた通り、俺と感じがちょっと似ている先輩が
彼女の方を見つめながら同じように笑っていた。
これは、事実なのか?
顔を固まらせた俺の横で俯くが淡々とした口調で説明してくれた。
今から20年前、お前は六角中テニス部のマネージャーだった。
そして、俺とそっくりな美津濃歩という三年の先輩に恋心を抱いていた。
けど、そんな女の子の淡い気持ちなんていつまでも続くはずはなく
十月に入り、
中間テスト一週間前に彼が他の女生徒に告白されているのを見ちまった。
元々、体の弱いだから直胸が苦しくなり、そこで最後の記憶は途切れたらしい。
気がついたら、白い壁と規則正しく刻んで冷たい機械音のするベッドにいた。
ナースコールを遠慮がちに押すと、直に看護婦と医者が飛んできた。
どのくらい眠っていたのか、不安な気持ちを押し殺しながら医師に聞いた彼女には
その事実は死の宣告に近かった。
20年後の世界…。
それは今までちょっと違う生活をしていた女の子を一瞬でSFのヒロインに仕立て上げ
るに
相応しかった。
心も体もあの頃のままだけど、旧友達は大人になって子供がいても当たり前だった。
あの美津濃歩との面会も予定されていたが、辞退し続けた。
20年経っていてもお前の中ではまだ昨日のように鮮明だから…。
話し終わった後、瞳に涙を溜めたまま、自分を好きになっちゃダメだと言った。
だけど、俺はそんな女の子を独りにするほど出来ていない人間じゃない。
体は時間が経つ内に少しずつ現在の年齢に相応しくなるらしいけれど、
それがどうした。
俺の気持ちは変わらない。
なぁ、。
『お前はアイツに似ているから俺を好きになったんじゃないだろ?』
俺はを何度もベッドの中で愛しながらそう言ったな。
その気持ちに嘘はない。
だから、後三年待って欲しい。
そしたら、結婚しよう。
愛しているよ、…。
今日も昨日も明日も全てのお前を愛している。
♯後書き♯
皆様、こんにちは。
裏佐伯手紙はいかがだったでしょうか?
今作は、彼の誕生日プレゼントに作成致しました。
傾向であるシリアス部分を入れていたら全作の手紙よりもかなり長くなって
しまいました。(汗)
この作品を作業しているうちに「小説」にあります手塚作「眠り姫に口づけを」の
ヒロイン設定にしてしまいました。
その後になってこれをDream(裏)にしてみるのも興味深いかな?なんて冗談混じりに
考えています。(笑)
それでは、ご感想の方を心よりお待ちしております。