聖夜…


      青春代の隣に位置する梅香町はそれほどでもないが、田畑が存在している。

      過ぎ去ってしまった秋には観光客で賑わい、都内ではちょっとした登山や

      果物狩りなどを楽しめる場所だった。

      民家はちらほらとあるが、ほとんどは駅前にあるため、歩いて30分もすれば

      木々が覆い茂っていて慣れないと夜道を歩けないほどである。

      人工で固めた川を渡った所に古い二階建てのアパートでは、一人の女性が

      朝からバタバタと忙しく動いていた。

      明媛大学に通う彼女には最近、彼氏が出来たと住民内ではもっぱらの噂である。

      冗談とも解らない口調で残念がる独身中年男性や豪快に笑って応援する大家。

      それを苦笑して掻い潜るのがに出来る対処法だった。


      「この服が良いかな?それともあっちの服が良いかな?」


      室内に少ない洋服を並べ、どれにしようかとうんうん悩んでいる。

      あれから携帯電話で連絡を取り合っていたが、英二がこの家に訪問することは

      無かった。

      別に深い意味は無いが、家族から離れている所為だろうかとことん寂しさに

      弱くなっている。

      お茶うけの彼氏ではないが、何故だかとても逢いたくなる時があり、

      いつも枕元で泣いていた。

      だが、昨夜の電話はそれもあって当然だったのかと考えられる内容だった。


      『のガッコって冬休み何時?』

      「私は26日からだよ。英二は?」

      『俺は明日からっ!クリスマスが冬休み初日にゃんてサンタさんが良い子の

       英二君にプレゼントしてくれたのに決まってるにゃ!サンタさん、ありがと!!』

      そう言って受話器越しにはしゃいだ彼が目に見えるようで、声を殺して笑った。

      『んで、本題。明日は大丈夫?』

      「えっ?うん、どうかしたの?」

      急に話題が変わり、面喰う彼女の耳に熱が篭った英二の声が囁く。

      『夜、空けてくれる?』

      「うっ、うん…」

      少年の声が男性に聞こえてさらに胸が高鳴りだし、平常心なんて最早保てない。

      電話を切った後も異常にドキドキしてなかなか寝付けなかった。

      今朝は5時に目が覚めてしまい、部屋中の掃除を念入りにし、現在に至る。

      ようやく決めたのは普段と何にも変わらない水色のハイネックとジーンズだった。

      遅い朝食を軽く済ませ、お茶を啜っているとめったに鳴ることが無い呼び鈴の

      明るい音が彼女しかいない室内に響く。

      今更ながら動揺する気持ちを押さえながら大してない玄関への道のりを走った。

      「はいっ!」

      木製の扉を開くとすでに日も暮れた外の風景と大好きな彼が恥ずかしそうに

      笑っているのが目に映った。

      「よっ、きちゃたよん」

      心無しか久しぶりに間近で聞く声はどこか以前のような元気がない。

      頬をぽりぽりと掻いてはどこか目がきょろきょろして余所余所しかった。

      「どうしたの?英二」

      「んにゃっ!別に何でもないよ!!」

      そう言って自分の元気なところをにアピールして見せるが、やはりどこか

      ぎこちない雰囲気が漂っている。

      彼女は不信に思いながら彼を部屋に招き入れた。
 
      大して広くないのでぱっと視界に映るのが、少女が生活している場である。

      「へぇ、キレイにしてあるじゃん」

      彼は小さなTVの前に座ってこちらを振り返った。

      午前中に掃除を済ませた甲斐があったというものである。

      「コーヒーにする?それとも紅茶にする?」

      「紅茶が良いにゃ。ミルクたっぷりで砂糖もたっぷっし!」

      「ふふっ、英二、太るよ」

      「へへ〜んだ。俺はちゃんと運動をしてるから良いのだっ」

      少年が変に胸を張っている前に白いマグカップを差し出した。

      その中では小さな鍾乳石が溶けたような色が湯気を立てている。


      「良いなぁ、私も運動とかしようかな?」

      「そんじゃ、テニスにしなよ。そうすれば、休みの日とか一緒にできるじゃん」

      ようやく彼が以前のように笑ってくれたので、心の中でほっと一息を吐いた。

      「でも、手加減してくれないでしょ?」

      「あったりまえじゃん。いくらでも手は抜かないよん」

      妙に明るい彼を前に彼女は頭を抱えた。

      英二が強いからというのもあるが、運動なんてここ最近、やってはいない。

      もちろん、卒業単位に体育が入っているが、それは保健の講義で修得済みだった。
  
      高校の頃の授業は最悪で、クラスでは一番運動音痴だった。

      そのことをまざまざと思い知らされようとは考えもしなかった。

      「……

      その声に気づいて振り返ると、彼の顔が間近にあることに驚く。

      先ほど手渡したはずのミルクティーは、ガラスのテーブルの上に乗せられていた。

      「どうしたの、英二?せっかく淹れたのに早く飲まないと冷めちゃうよ」

      「俺が何しに来たか、知っているくせに…」

      そう言って笑ったかと思えばその場に押し倒され、深い口づけをしてくる。

      掌は上半身を撫でまわし二つの丘を探り当てるとそこを攻め続ける。

      彼女は快感に酔いしれながら残った理性でそれから逃れようとしたが、

      どれも彼に軽く交わされてしまった。


      「んんっ」

      甘い声が室内に響き、住民達に迷惑を掛けていないか気になったが、この激しさに

      声を出さずに入られない。

      互いの唾液をそれと一緒に混じ合わせ飲みきれなかったものは唇の端から零れた。

      唇をようやく解放されると、少年の首元を流れる銀の液体に見惚れていた。
 

      「っ……良い?」

      返事を求めるはずが無いのに彼女を見下ろす。

      彼の顔はまるで何かに酔っているように顔中を火照らせていた。

      「…………うん」

      消え入りそうな声で頷く。

      一瞬、戸惑ったが、自分を捉えて放さない瞳に負けた。

      「好きだよっ、……」

      「……私もっ」

      改めて唇を吸い、組しかれた体制を受け入れた。

      ハイネックの裾から潜り込んだ掌は先程の愛撫で敏感になった丘を掴み、

      下着の上から擦り出す。

      「あっ…英二」

      「って以外と感じやすいんだね」

      「やぁ……そんなこと…っ……あんっ」

      そう思えば器用に片手でブラジャーのフォックを開け、首元までそれを

      たくし上げた。

      彼の前に露わになったそれはやはり鋭い頂きになっており、その先は自分を

      指しているように見える。

      その存在に気づいた彼女自身も頬を赤く染めて横を向いた。

      「やっ……見ないで」

      「どうして?キレイだよ」

      「ひゃぁ!」

      その頂きを口に含んで舌先で攻め続け、もう片方は掌で弄ぶ。

      「……やっ」

      「嫌なの?こんなに感じているのに」

      その声が耳元で囁いたかと思えば下着と共に取り去る感覚が下半身から電撃のように

      伝わってきた。

      潤んだ瞳で見上げればいつもとは違う不敵に笑う彼の顔があった。

      「英二っ……何か……違う……っ」

      「自分でも驚いてる。俺の中でをこんなに欲しがっているなんて知らなかった。

       めちゃめちゃにしたいくらい好きなんだって……だからっ……今夜だけは

       俺の好きにさせてくれる?出来るだけ優しくするって約束する」


      そう言って彼は母親に甘えるような目で見てくる。

      こんな時、彼女はズルイと思ってしまう。

      そんな目をされてしまったら、何も出来なくなってしまうからだ。

      否定したくても一つになりたいのは、だって同じ気持ちだ。

      だが、経験の無い彼女にとってそれはただの不安に過ぎない。

      言葉で伝えようとすればきっと拒絶してしまうだろう。

      英二の顔を見上げ、少女の顔で笑ってみせた。

      私を抱いて下さいという意味だったのだが、ちゃんと彼に伝わったのか気になる。

      だが、それは要らぬ心配で満面の笑みを浮かべ唇を軽く吸われる。

      「……愛してるっ」

      「英二っ!?」

      思わぬ言葉に声を上げてしまった。

      それは求める挨拶なのかそれともプロポーズなのか、どう受け取っていいのか

      解らずにいると、目の前にいる彼が服を脱ごうとしているのを瞳が素早く捉えた。


      「何してるの?」

      そんなことを言った後で後悔をする。

      この状態でそうすることは本気で自分を愛そうとしているのだ。

      英二と知り合ってもう何ヶ月経つだろうか。

      彼は青学の誇る男子テニス部のレギュラーの一人で、なかなか二人になる

      時間が取れないでいた。

      本当の事を言えば、今もまだ異性を信用することが怖い自分がいる。

      もし、百%だと思ったものを掴もうとしたら砂のように掌から零れ落ちてしまう

      のではないだろうか。

      そう思うとなかなか動けずに居た。

      また、自分の殻に閉じこもろうとしたの前に、上半身を露わにした少年が

      手を差し出してくる。

      「一緒に進んで行こう」

      「英二…」

      その手を取って立ち上がる。

      すると、悪戯そうに笑い、その顔がまだ幼く見えた。

      「そのカッコもそそるんだけど、も早く脱いじゃいなよ。じゃないと、俺が

       脱がせちゃうよん」

      言われてみて己の淫らな姿に気づき、急いで胸を両手で隠すが、彼は

      微笑んだまま首を左右に振る。

      「隠すなよ」


      耳元で甘く囁かれるたび彼女の体はまるで自分のものじゃないように敏感に震える。

      「……ちょっとだけ向こうを向いてて」

      「どうして?今見たいなぁ」

      「お願いっ」

      「…解ったよ」

      彼女の祈るような瞳に今更ながらドキドキしてきて、思わず返答する前に体ごと

      それから逃れた。

      そんな瞳をされてしまったら成す術が無い。

      両の耳には服ズレの音が一部始終聞こえて無意識に鼓動が高鳴ってという

      女性をより一層愛してしまいたくなる。

      「……良いよ」

      再び目にしたのは生まれたままの姿で、それでいて必要最低限を手や脚で隠す

      彼女の姿があった。

      「キレイだよ」

      「あっ」

      そう囁いたかと思うと、深く口付けたまま押し倒した。

      もう、菊丸英二という少年の中の雄雄しい気持ちは止められなかった。

      「あっ…んっ……んんっ」

      彼は胸を愛撫すると、鋭く主張してきた頂きを口に含んで舌先で犯し続ける。

      「っ……もっと聞かせてよ」

      初めての刺激に耐えながら残った理性で声を殺す。

      壁伝いには普通に暮らしている人間がいるのだ。

      そんなことは許されるはずがない。

      「じゃあ、ココ攻めちゃうかな〜」

      「やめっ…」

      彼女が必死に首を横に振る不意を衝き充分に濡れたと思われる秘部に触れると、

      いきなりその中に人指し指を侵入させた。

      内壁の熱さと締め付けに少し驚き、思いのままに動かしてみる。

      すると、そこは甘い蜜を出して応対し、もう射れても良いよと声無きそれで察した。

      「ねぇ、

      彼女の乱れた髪を掌で撫でて戻す。

      「……な、に?」

      「射れても良い?俺、もう限界…」

      そう言ってその手を自分自身へと導いた。

      「えっ?」

      そこは一瞬触れても解るくらいパンパンに膨れ上がっている。

      「…」

      彼が熱っぽく自分の事を呼ぶのに吊られてか、彼女の体もまた先ほどのような

      甘い痛みが体中を走った。

      「……うんっ……来てっ」

      最初はあんなにも不安がっていたのが、今ではウソのように消え失せて彼を

      受け入れようとしていた。

      開脚する前に自らキスを求め、耳元に愛していると囁く。

      彼は目を丸くして彼女を見たが、優しく微笑むだけでそれ以上の言葉を

      伝えようとはしなかった。

      「俺も愛しているよ」

      それが何より嬉しくて彼に自らを捧げる。

      「キレイだよ」

      「やっ…そんなこと……言わないでっ!」

      彼女が顔を少年から背けたその時にそれは起こった。

      「、力……抜いてっ」

      「あ、んっ…英二…英二ぃ」

      切なそうに首を振る姿が愛しくて、思わず己を解き放ちたい気持ちを抑え、

      腰を嫌らしく動かす。

      体中を揺さぶられる彼女の胸は淫乱に彼を更なる欲望へと誘った。

      新たな激痛に耐えているのを見ていると、何だかもっとを壊したくなる。

      更に、愛したいと思うのは単なる男性の欲求だろうか。

      自分の消えない刻印を彼女に残したい。

      それはこれからの二人への約束として…。

      ……ズサッ。

      「「!?」」

      少年が最奥へと自身を進めていると、急に何かが裂かれた音が伝わった。

      「あっ…」

      彼女が短く叫び、その視線の先を見て少年自身も息を飲む。

      二人が繋がっている個所からは赤い液が溢れ出ていた。


      「まさか、って処女?」


      その言葉が彼女のプライドを傷つけたのは言うまでもない。

      思い切り嫌な表情を浮かべると、彼の頬をいきなり平手で叩いた。

      「って!?何するんだよ〜」

      「それはこっちの台詞!英二なんて 大っ嫌い!!!」

      「うわっ、ごめん!俺、そういうのよくわかんなくて。今のは兄ちゃん達が

       持ってる本で知ったってだけで許して、な?」

      「……」

      末っ子の特有である甘えるような仕草をして唇を求めてくる。

      この甘い顔とそのキスに最も弱い彼女は簡単に彼の仕出かしたことを許して

      しまう癖があった。

      「のそんなトコがだいだいだぁ〜い好き!もうちょっと、こうして居たかったけど、

       俺もそろそろ限界だから……イクよ?」

      「うんっ……一緒に……ッ」

      唇を強く求め、それが合図だったかのように際奥の方へ解き放たれる。

      「アアッ!!」

      一つになったまま果てる二人の繋がった部分からは紅白の液が流れていた。


      「……んっ

      「あっ、起きた?」

      あれから何時間経っただろうか。

      彼女は彼の胸板から顔を上げ、先ほどのことが夢ではないことをあからさまに思う。

      生まれたままに抱き合った格好に欲情してか何だかとてもお互いが欲しくなった。

      これも自分が年上の所為だろうかと、心の中で必死に笑いを堪えた。

 

 

 


      ―――・・・終わり・・・―――



      #後書き#

      やっとでき上がりました!(感涙)


      
野超え山超えと言う感じで、学校で空いている時間にパソコン室で作業を

      進めたり徹夜をしてどうにか書き上げてみました。
どんな例えだよ


      
今回は四作品を一気にupしたのでかなりハードでした。(汗)

      
これも自分がクリスマス物を考えてしまったお蔭です。自業自得(撃沈)

      
英二が壊れていなかったか凄く心配です。(滝汗)

      
これも、まとめて作業した所為ですなといえば「そうですな」と答えるしか

      ありません。(爆)