「あちぃーーーーー」

              太陽が照りつける中、ジープを走らせる三蔵一行。そのジープ内で

              暑いと文句を言うのは悟浄である。

              「あちぃ!くっつくな猿!!」
              「猿って言うなエロ河童!後ろ三人で座ってんだから仕方ねぇじゃん!」

              ジープの後ろの席は悟浄、悟空、そして途中の町で一行に加わった

              少女・が座っていた。

              「…ごめん。あたしが加わったせいで狭くなって」
              「貴女が謝る必要なんてありませんよ。それより、悟浄に変なことをされそうに
              なったら、殺しちゃってかまいませんから♪」

              明るく、ひどいことを言う八戒。

              「……。ってかなんで悟空が俺の隣なんだよ!?座る順番変われ!

              俺はの隣に…」

              ガウン!!

              「うるせぇんだよ!!」

              今日も銃声と三蔵の怒鳴り声が響く…。



                 存在価値



              「あたしを仲間に入れてください!!」
              「…俺達は遊びにいくわけじゃねぇんだ」
              「わかってます!こう見えてもあたし、剣が使えるんです!その辺の
              妖怪よりはよっっぽど強いんです!足手まといになるようなら、捨てて行って
              かまいませんからーーー!!」

               頼み込むと、しぶしぶあの人は承諾してくれた。
               …もう、一人にはなりたくなかった。傍にいたかった。眩しいほどの
              金色の髪、強くも悲しそうな紫の瞳をしたあの人の傍に…。


              ☆ ☆ ☆


              「夢…か」

               目を覚まし、はつぶやいた。ジープ内で騒いでいたあの後一行は町に
              たどり着き、宿をとったのだ。は一人部屋、後は二人部屋に四人が泊まって
              いた。他に部屋が空いていなかったらしい。

              (仲間に入れてもらったときの夢…)

              暑さのため、またすぐには眠れそうにない。はベッドから起き上がり、
              窓辺まで行く。と、突然外からザザザッという音がする。

              (―敵!?)

              急いで剣をとり、窓から離れる。直後、予想通り五匹の妖怪達が窓を割り、
              部屋に侵入してきた。

              「ひゃっはァーーー!!三蔵一行の紅一点!お前には人質になって
              もらうぜぇ?」
              「考え方がセコイ!!」

              そう言い、襲いかかってくる妖怪たちを斬る。が、四匹目を倒した時に
              バランスをくずし、よろめく。
              その瞬間、最後の妖怪に捕らえられてしまう。

              「大人しくしやがれ!!」
              「くっ…!」

              その時、扉の向こうから「!入りますよ!」という八戒の声が聞こえ、
              八戒、三蔵、悟空、悟浄が部屋に入ってきた。すると妖怪は鋭い爪を
              につきつけて叫ぶ。

              「動くなァ!!この女がどうなってもいいのか!?」

              と、四人の足が止まる。
              「卑怯だぞッ!!」怒る悟空。
              「お決まりのセリフ…」ありきたりなセリフを言う妖怪にあきれる悟浄。
              「もう少し、工夫がほしいですねぇ」相変わらずのんびりと八戒。
              「…チッ」舌打ちする三蔵。
              が、当の妖怪はと言うと勝ち誇った顔をしている。

              「よし、経文をこっちに渡せ!!」
              「…な…」
              「あ?何か言ったか女?」
              「ふざけるなーーーーーっ!!」

              ゲシッ!!

              「ぐおっ!?」

              爪をつきつけられた状態にありながら、思い切り妖怪の足を踏みつける
              妖怪がよろめいた隙に腕から逃れる。その際、爪が頬をかすめ血が流れ
              るが、気にせずに再び妖怪に向き直り、斬る。
              妖怪が倒れた後、四人が駆け寄る。八戒が気孔術での頬の傷を治した。

              「ありがと、八戒」
              「どういたしまして」
              「ったく、女の子の顔に傷をつけるなんざ最低だっての」
              「無茶しすぎだって、!」

              ふと気づくと、何やら騒がしい。どうやら先ほどの音で宿にいる人々が
              何事かと起きてきたようだ。
              悟空、悟浄、八戒の三人は人々を落ち着かせるために部屋から出て
              行った。そのため、部屋には三蔵とだけが残される。しばらく沈黙が
              続くが、ぼそりと三蔵が言う。

              「…無茶はするな」
              「そんなこと…っ!あたし、足手まといになるわけにはいかないし」
              「足が震えている」
              「ーーーッ!!」

              (そんなはずは…ない)

              が、妖怪の死体や血を見て、ガクガクと震えだす。

              (そんな、はず…。だって、あたしは、仲間に入るときに決心したんだから。
              自分の手を赤く染めようとも、三蔵たちの力になるって…)

              「

              (置いて、行かれる。こんなあたしじゃ…!)

              「、多少足手まといになろいと、目をつぶってやる」
              「…え?な、なんで!?足手まといになるようなら、あたしは邪魔なだけでしょ!?
              ここにいる意味がない!!戦って、三蔵たちの役に立ててこそ、あたしがここに
              存在する価値があるんだから!!」
              「チッ。最後まで言わなきゃわからねぇのか!?たとえお前に力がなかった
              としても、俺にはお前が必要だと言ってんだよ!」
              「…それって…」
              「腹減ったーーー!!」

              ちょうどいい(?)タイミングで悟空達三人が戻ってくる。

              「ひょっとして俺ら、お邪魔?お熱い事で。やっぱ俺ら、ここに戻らず自分達の部屋に
              直行すべきだった?」
              「あははー。すみません、三蔵。」
              「お前ら…」

              眉間にしわを寄せる三蔵。一方、は足の震えもおさまっていた。

              (とにかく…。あたしはまだ皆の仲間でいいってことだよね。それでも、やっぱり
              あたしは守られなくても大丈夫なように…強く、なるよ…)

               ☆

               天界―。

              「ククッ。そろそろあの無愛想男の告白が聞けると思ったんだかな」
              「観世音菩薩…また看ていらっしゃいますな。止めなくてもよろしいのですか?
              一行は普通の人間の少女を巻き込んでいるというのに」
              「あぁ。まぁ、観てろよ二郎神。あの少女はこの先も、あいつらの支えとなる
              だろうよ―」


              〜END〜


              ●あとがき●
               主人公の過去も書いて、長編にしてみたいなーなんて思ったのですが、
               とりあえず短編にしました。
              にしても私が書く話っていつも恋愛要素が低い!!すみません。

               †ありがたくもない柊沢の感謝状†

               れなさん、今号も素敵な作品を投稿して下さりありがとうございます。

               この後、桃源郷では何かが起こっていそうで、これからも目が放せませんね。

               観世音菩薩様が羨ましい限りです。

               それでは、次号も宜しくお願いしますね。