なぁ、


       俺、負けたよ。


       カッコ悪いよな?


       でも、後悔はしていないんだ。

       俺は出せるモンを出しきった。

       お前はこの試合を見ることはできない。



       は生まれつき、体が弱い。


       だから、この試合の決着を知っているとしてもラジオ中継でだろう。

       お前はいつだって俺の無事をあの小さな窓から祈っている。

       自分のことなど顧みず。


       なぁ、

       そんなことはやめろとは言わない。

       だが、もう少し自分の体の方に気を回してくれ。

       何度目の入院をする前、俺たちは普通のどこでもいる恋人だった。

       ただちょっと違うのは、いつもどこかで休むことくらいだ。

       体が弱ってくるたびに増える薬物の量。

       お前の病室に行くたび目にする点滴。


       なぁ、

       いつだか、覚えているか?

       俺たちが初めてキスをした日を…。

       お前が一年生になってすぐの誕生日だった。

       プレゼントを用意していなかった俺は、お前の顎をそっと掴んでキスをした。

       それは一瞬だったが、俺たちには十分な媚薬だった。


       なぁ、

       まだ、唇の感触がお前を覚えている。

       柔らかいのに、冷たい口づけ。

       その日に誓ったはずなのに、俺は負けた。

       だが、お前はいつだってそうやって笑ってくれるんだよな。

       なぁ、

       俺は、絶対お前の心配がいらないように勝ってみせるから。

       だから、は安心して俺の傍にいてくれよ。




       ♯後書き♯

       皆様、こんにちは。

       こちらも茉莉花恋様が私のお友達になって下さった&相互記念に捧げました

             作品の一つです。

       今回は緑山中の高瀬聖人君を取り扱ってみましたが、いかがだったでしょうか?

       自分で作業しておきながら、かなりシリアスなものになってしまったなぁと

             ちょっと反省をしています。

       それでは、皆様からのご感想を心からお待ちしております。