青息吐息のweak point






      コンビニのトイレで伊達のメガネをかけ、最終身だしなみチェックを

      済ませた仁王は、家へ向かった。

      金曜の夜、仕事は早く終わったというのに何故か不機嫌な表情なのは、

      これから行くところはバイトだから。

      …といっても、ピンチヒッターなのだけれど。

      「くっそー、赤也のヤロー覚えとけ…」

      大学の後輩切原から、家庭教師のバイトを1日だけ助けて欲しいという

      電話をもらった。

      どうしてもバイトを休めないのに、大事な用事が入ったらしい。

      たぶん女だと、直感で分かった。

      「何が悲しくて今さら家庭教師なんだよ」

      本来、会社員の自分はバイトなんかしては違反になるのだが、切原には

      借りがあったため、断れなかった。

      派遣先…というか、家庭教師先の家の前まで来ると、仁王はもう一度

      ネクタイを真っ直ぐに直した。

      インターホンを鳴らす。…応答が無い。

      「ん?」

      違う家に来てしまったのかと、切原に聞いてメモした紙と表札を見比べる。

      「…‘’だよなぁ…。留守なんてあんの?人呼んどいて」

      ちっと舌打ちしたとたん、インターホンが通話状態になった。

      ――― 「…どなた?」

      「あ、本日、切原が急用で来れなくなった代わりに来ました仁王です。

       連絡はいってるとは思うんですが…」

      ――― 「…家庭教師の?」

      「はい、そうです」

      ――― 「………今、開けます」

      カメラが付いているインターホンだったので、仁王は営業スマイルで

      話していたが、内心無愛想な対応にむっとしていた。

      すぐに玄関のドアが開いて、女の子―――おそらく教え子――― が出てきた。


      **********


      広い家の2階にある部屋に通された仁王は、首をかしげながらメガネの

      中央を中指で押し上げた。

      「……あのー、お父さんかお母さんは?」

      「いない」

      教え子は、やはり無愛想に言うと机の前に座った。

      「そこのイスにどうぞ」

      多少言いたいこともあったが、とりあえず任務を完了しなければいけない。

      さっさと終わらせて帰ろうと、仁王は黙ってイスに腰を下ろした。

      代打で来ているので、テキスト・参考書等は一切ない。

      赤也には、分からないところとかがあればそこを教えてやってくれと

      言われていた。

      「じゃ、早速だけど、始めましょうか。…宿題とか、わからないとこ

       とかありますか?」

      「…何を教えてくれるの、センセ?」

      からかうような口調で仁王の顔を、ちらりと見た。

      仁王は、の生意気な態度にかなりむっとしていたが相手はまだ高校3年だ。

      しかも女の子。ぐっとガマンする。

      「…何でも」

      仁王の答えにはぷっと吹き出したかと思うと、きゃっきゃと楽しそうに

      笑い出した。

      勉強する気もなければ、初対面の人に対する礼儀もなっていない。

      切原には『おとなしい素直な子』と聞いていたが、とんだ誤解だ。

      「さん、勉強する気がなければ帰らせていただきます」

      仁王は、堪忍袋が切れないうちに退散することを選ぼうと思った。切原には

      なんとか言えばいい。

      メガネの縁をもってズレを直し、イスから立ち上がる。

      気持ち的には、ここでイスを蹴り飛ばしたいところだが。

      「待ってよ。ごめんごめん。だって、すっごい真面目そうだからからかいたく

       なっちゃってさ。ごめんなさい」

      まだ少し笑いながらはイスごとくるりと後ろを向き、仁王の背中に声をかけた。

      あとちょっとで帰れそうだったのに、謝られてしまったら大人としては

      戻らなくてはいけない。

      仁王は、仕方なく机の方を向いた。

      「はぁ…まったく。じゃあ何を教えますか?」

      短いため息と共にそう聞くと、は何の躊躇もなく答えた。

      「オトコ」

      「……お前、やっぱり勉強する気、ないんやのう」

      もう真面目に相手するのはバカらしいと思って、仁王はメガネを外した。

      「『オトコ』っちゅーもん、教えてやってもいいけど…」

      「え?何、キャラ変わってない?」

      の言葉に返答もせず、仁王はネクタイの結び目に指を入れて左右に振った。

      一歩一歩に近づいていく。

      そして、イスに座っているの体の上に覆いかぶさるようにして、

      机に両手をつく。

      「あいにく処女はめんどくさい。腰が疼くんならナスでもオモチャでも

       突っ込んどけ、エロガキが」

      「処女じゃないもん!」

      「ああそう。でもガキはパス。後々めんどくさい」

      「ガキじゃない!」

      は仁王をにらみつけた。

      ガキじゃないと言いながら、ぷうっと頬を膨らます子供っぽい仕草に

      仁王は思わず笑ってしまう。

      「ま、同級生のオトコでもひっかけるんだな。ヤらせてやるって言ったら

       すぐ付いて来よるやろ」

      仁王はくっくと笑いながら机から手を離そうとしたその時、

      腕を仁王の首に回し、その唇に自分の唇を押し付けた。

      「んっ」

      慌ててを引き離そうとするが、の唇が少し震えてるのを感じて、

      思わず力を緩める。

      ゆっくりと唇が離れると、仁王は目を細めて言った。

      「…ったく。そんなに抱かれたいなら抱いてやる……後悔するなよ」

      は挑戦的に頷く。

      仁王はを横抱きにして、傍のベッドに下ろした。


      **********


      「俺に抱かれたいなら自分で脱げ」

      仁王はベッドの端にどっかと腰を下ろし、ネクタイを緩めて長い足を

      見せびらかすように組んだ。

      さっきの勢いはどうしたのか、は黒目がちな瞳を潤ませて少し不安げに

      見つめてくる。

      キスしたばかりの桜色の唇はちょっと濡れていて、誘うように薄く開いている。

      ……困ったことにの顔はかなり仁王の好みだったりした。

      「…イヤなら別にいいんだぜ」

      わざと突っぱねるように言うと、は意を決したようにゆっくりとTシャツから

      腕を抜いた。

      それをベッドの下にぱさりと落とすと、仁王を伺うように上目遣いに見る。

      仁王は組んだ膝の上に肘を置いて、頬杖をついて無表情でを見ていた。

      「……っ」

      は仕方なく、スカートのボタンを外した。

      何も仁王にされていないのに、仁王の視線だけで羞恥でこんなにも体が

      熱くなってきている。

      体中を仁王に見られていると思うだけで、言葉に出来ないくらい恥ずかしい。

      「…それで終わり?」

      スカートを脱いで下着のままで座り込み、うつむくに仁王はふっかけてくる。

      は下唇をきゅっと噛みながら背中に両手を回した。

      胸を露にするのに躊躇して、両腕で隠すようにしながらブラを取った。

      片手ずつ抜き、とうとうショーツだけになってしまって、ますます

      顔を上げられない。

      しばらくそのままでいたのに、今度は仁王は何も言わない。

      試されているのか、からかわれているのか分からないけど、思い切って

      脱ぐことにした。

      しかし正面を向いて脱ぐのは憚られたので、背中を向けてするりと

      極力小さな動きで脱いだ。

      背中に痛いくらい熱い視線を感じる。

      これからどうすればいいのか、全く分からない。

      ぎしっとベッドがわずかに軋んで、仁王が動いた気配を感じる。

      不覚にも肩がびくっと跳ねてしまった。

      仁王は静かな動きで、の肩にかかるくらいの髪を指先で掬う。

      そしてさら…っと流す。

      それを数回繰り返されている間にの心臓は鼓動を早め、体の中心に

      熱い火種が点った。

      「…こっちを向いてもらおうか」

      仁王は髪を撫でながら、感情を読み取れない口調で命令してくる。

      軽い屈辱を感じながらも、仕方なくゆっくりと仁王に向き直る。

      しかし極力体を隠せるように腕で胸を隠し、横座りした。

      「…それでこれからどうするの?」

      「まったく…気の強い女だな」

      仁王が呆れたような口調で笑う。

      仁王は緩めていたネクタイを抜き、シャツの胸元のボタンを外した。

      そして、横座りするの曲げた膝を持ち、開こうとする。

      「やっ…っ」

      は恥ずかしくて、思わず仁王の手に自分の手を重ねた。

      ふっと仁王は目を細めて笑い

      「止める?」

      悔しいけど、答えなんてもう決まっている。

      「……続ける」

      「OK」

      仁王はベッドに膝をつき、の足首を掴んで曲げた足を伸ばさせた。

      「細いのう」

      そう言いながら唇を寄せる。

      つま先に熱い唇が押し付けられた。

      びっくりして声も出せないでいるうちに、仁王の舌が指を舐め始めた。

      「やめ……っ」

      やめてよって言おうとしたが、足の先、仁王の舌が這うところから

      確実にくすぐったいような快感が這い登ってくる。

      「感じるやろう?」

      言いながら目を合わせて、つつ…と足首まで唇を進ませ、舌全体をつかって

      くるぶし辺りを舐めあげる。

      「ぁ……ぁっ」

      そのまま足を高く上げさせられ、秘所を露にされる。

      しかし仁王はそ知らぬふりで、ふくらはぎ、膝の裏を舐めてくる。

      は体に力が入らなくなり、肘をついて上半身をなんとか支えていた。

      仁王は唇と時折舌を這わせ、わざと音をたてて吸い上げ、次第に場所を

      移動させてくる。

      太腿の付け根まで仁王の顔が近づいてくると、髪の毛が性器に当たる。

      充分に濡れてしまっているのが自分でも分かるのに、仁王は一切そこには

      目もくれず、今まで舐めていた方の足を肩にかけ反対の足も同じように

      つま先から舐め始めた。

      「……や……っ」

      膝の裏から内腿に、快感を伴ってじわじわと舌が這い上がってくる。

      「どうせ今までの男は、突っ込んでかき回して、自分勝手に達ってしまう

       sexしかしなかったんやろう?」

      は仁王の言葉に思わず目を見開き、体を起こした。

      「感じる場所は、何もソコだけじゃないぜよ。わかったか?」

      いきなり仁王は大人の顔をして言うので、は思わず頷いた。

      仁王から ふ…と笑みがこぼれて、抱えられていた足を下ろされる。

      「まだ続ける?」

      ここまで煽っておいて、止めるなんて苦しい。

      「ヒドイよ、そんなの……」

      泣きそうになってうつむいてしまった。

      仁王はの顎に手を添え、ゆっくりと上を向かせた。

      そしての濡れた唇に、自分のそれを重ねた。

      の後頭部を手で支え、そっとベッドに押し倒す。

      隙間から優しく口内に舌を差し入れ、ゆっくりとの舌を誘い出す。

      はキスでまた体中が痺れてきてしまって、思わず仁王の胸に手を付けて

      体を離そうとした。

      仁王はその細い手首を緩くつかんで、の顔の横に押し付けた。


      **********


      仁王の指が、入ってくる。

      充分に濡れているそこは、無理なく受け入れる。

      「あ…ん」

      指を抜き差しされるだけで、もじもじと膝を擦り合わせたくなるような

      感じがする。

      恥ずかしいくらい濡れてしまってるのが、自分でもよくわかる。

      首筋に唇を這わせながら、仁王は抜き差ししている指の数を2本に増やす。

      ぷくんと硬くなった胸の尖りを唇で包み込まれて舌で転がされると、

      くすぐったい快感に体が捩れる。

      仁王の指に中をかきまぜられながら尖りを舌で愛撫されると、腰の奥が

      じんわりと熱くなって、また蜜を溢れさせてしまう。

      もっと強い刺激を与えて欲しくて、知らず腰が揺れてしまった。

      「……もう欲しいか?」

      「ん…」

      指が抜かれると、代わりにその入り口に仁王の熱い肉棒があてがわれた。

      にとって明らかにオーバーサイズのそれは、ゆっくりねじ込まれる。

      指とは比べ物にならない質量とあまりの熱さに、つい声を出してしまう。

      「ぁぁぁぁぁ……んっ」

      膝の後ろを抱えお腹につくように曲げられて、より繋がりを深くされる。

      ゆっくりと腰を前後させながら仁王が奥に進むたびに、の弾力のある胸は揺れた。

      「痛い?」

      仁王に掠れた声で囁かれて、ぞくりと背筋に電流が走る。

      は首を左右に振った。「ううん」と言ったつもりだけど、ちゃんと仁王に

      聞こえてるかどうかはわからない。

      「じゃ、根元まで挿れるぜよ…」

      そう言って、少し勢いをつけて仁王が腰を進めた。

      「ああんっ」

      仁王の一番大きい先端の部分が肉襞を割って最奥を突き上げると、は喉を

      反らせて喘いだ。

      「ぁ…ん……っ………ぁ…や…っ」

      「何がイヤって? 気持ちよくね?」

      「ん……っ…ううん…気持ちい…い」

      「…………もしかして、お前、達ったことないのか?」

      はぁはぁと息を吸う合間に、は言う。

      「わ…からない………。でも…こんなに感じたの……初めてなの」

      そういう間も繋がったところからは、仁王が腰を打ち付けるたびに濡れた

      いやらしい音がしている。

      腰の動きは忘れずに、仁王はに言った。

      「そっか、じゃあ今日は達かせてやる。…ほら、もっと声を出しても

       いいから…っ」

      が感じるたびに柔らかく締め付ける筋肉に、仁王も熱い吐息を漏らす。

      が一番感じる部分に、肉棒の張り出したところを擦りつけるリズムも早く

      なってくる。

      すなわち、が快感を得る間隔も短くなってくるということだ。

      仁王が体重を預けるように覆いかぶさってきて、逞しい腕にきつく抱きしめ

      られる。

      も仁王の少し汗ばんだ背中に腕を回した。

      唇が欲しくて仁王の頬に口を付けると、すぐに気づいてくれてそれを重ねて

      くれた。

      最初よりも荒っぽく熱い舌を絡めながら、仁王は突き上げも激しくした。

      「ぁっぁっぁっ………っ」

      は初めて知る強い快感に、髪を振り乱しイヤイヤをする。

      「ほら…っ…………達け…っ」

      仁王がの腰の奥を執拗に擦りあげる。

      ビリビリと快感にの体が痺れる。

      「ぁぁぁぁーーっ……んっ」

      足の先から頭のてっぺんまで一際強い電流が体を貫くと、まぶたの裏が真っ白に

      なって、次の瞬間怖いくらいの快感がを襲った。


      **********


      の閉じたまぶたに軽くキスをして、仁王はベッドから降りた。

      「ご両親、まだ帰って来んのか?」

      「今日は何かの舞台だか芝居だかを、二人で観に行ってるのよ。

       親は今日切原先生は休みだと思ってるから、あたしもって言われてたんだけど、

       デートの邪魔だから断ったの」

      「…で、代わりに来た俺とエッチか…はぁ…こりゃバレたら赤也にまた借りを

       作ってしまうぜよ…!」

       仁王は服を着ながら頭を抱えた。

      もベッドの下に落としてあった下着を着けた。

      「借りってなぁに?」

      「麻雀さ。こないだえらく調子悪くってボロ負けしてもうてのう。給料が出たら

       焼肉あたりで勘弁してもらおうと思ってたんやけど…」

      「ここに来てくれって言われたんだ」

      Tシャツから頭を出してニヤニヤしているに、仁王は恐る恐る聞く。

      「…今日のこと、まさか言ったりせんよのう?」

      「どうしよっかな〜ぁ。すーっごいこと教えてもらったって言おうかなぁ…

       ふふっ」

      はからかうように笑い、袖を通した。

      「………」

      「また会ってくれたら、黙っててあげてもいいよ。セ・ン・セ」

      「…センセはやめんしゃい」

      仁王は、また借りを作ってしまったようである。しかも、女子高生に。

      「…実を言うとね、先生を紹介してって言ったの、あたしなんだ」

      は仁王に背を向けてスカートをはきながら言った。

      仁王はの言葉の意味が分からず、眉を寄せて次の言葉を待った。

      「切原先生に大学のサークルの話を聞いてて、写真も見せてもらったんだ。

       その写真に写ってたある人に、不覚にも一目惚れしちゃってね」

      「ある人って………俺?」

      は、うんと頷いた。

      「切原先生は『絶対喰われるから紹介できない』って言ったんだけど…」

      「喰わ………っ」

      仁王は、へなへなとその場に座り込んでしまった。

      「今日来てみたらすっごい真面目な感じだったから、ビックリしたのよね。

       …でも、やっぱり喰われちゃった!あはは!」

      「『喰われちゃったあはは!』じゃねーよ!お前が誘ったんだろうが!」

      仁王がに詰め寄る。

      「だって……もうコレきりになっちゃったらと思って…」

      「……」

      確かに売り言葉に買い言葉というか、成り行きでこうなったものの、

      お互い同意の上でのことではある。

      「…今度、花火見に行こうか?」

      仁王の大きな手のひらがの頭を撫でる。

      「うん!」

      は仁王の首に飛びつくように抱きついた。





      おわり


      +++歌穂さん HAPPY BIRTHDAY!!また一年がステキでありますように♪
      仁王のウラドリ希望とのことでしたが、このようなものでよかったの
      でしょうか!?(ダメって言われてももう遅いけど。笑)
      では、これからもよろしくね! *花恋*+++



      ‡Plun'derer=柊沢の有難くもないお礼状‡

      花恋さん、こんな素敵な作品をどうもありがとう!

      今作は柊沢の誕生日に送って下さった仁王裏Dream小説です。

      しかも、あの仁王君を誘うつもりで撃沈v

      黒い柊沢的にも、本当に面白いお話でした。

      それにしても、家庭教師と教え子。

      教師シリーズで次回に狙っていたネタだったんですよね。

      また、良い提供してくれてありがとうvv

      それでは、こちらこそ不束者ですが、宜しくお願いしますね。