『はぁっ…くっ』
なぁ、手塚。
本当に帰って来たんだな。
『今夜は…俺の家に泊まって行け』
お前が俺の横を通り過ぎる際、短く呟いた。
それは誘っているつもりか?
思わず噴出したら、隣りにいる剣太郎が目を輝かせてこっちを見てきた。
でも、これだけはお前にも言えない。
俺たちが初めて会ったのは、去年の関東大会だった。
不二の紹介で知り合った俺たちは、俺のアプローチの甲斐があってか付き合いだした。
アプローチと言ってもこっちから迫っただけなんだけどね。
そん時のお前の顔、面白かったなぁ。
平日の夜、俺はわざわざ手塚に会うためだけに東京に来た。
『どうした、佐伯。明日も朝練があるんじゃないのか?』
玄関で俺を迎えてくれたお前を抱きしめてキスをした。
俺、もう、止められないから。
受け止めてくれないか?
手塚の唇は俺をほかの事が考えられなくさせるほど、甘く胸を締めつけさせる。
筋肉で引き締まった胸は俺の欲情を逆撫でする。
『あ…』
玄関でしばらく口づけを交わしている俺たちは、明かりの付いていない勝手口に移動し、
体を求め合った。
もしも、あのままあそこにいれば家族の誰かに見られていたことだろう。
『うっ、んっ…はっ』
衣服はイヤらしいほど淫らに肌蹴させられ、硬いお前が俺に腰を揺らさせる。
さっきまで指を何本か差し込まれた場所には、クチュクチュとその場を侵す水温がより
一層俺たちの欲情を掻き立てる。
なぁ、手塚。
お前はなかなか言葉にしてくれないけれど、これだけは言ってくれたよな。
『何とも思っていない奴を抱きたいとは思わないし、キスもしないだろう?』
やっぱり、手塚には敵わないよ。
お前が九州に治療しに行くと、携帯で俺に連絡した時、言った言葉を今も覚えている。
確信犯は俺を試していたんだ。
俺がどう出るかを。
でも、俺はそんなことは知らなかったからこっちから折れちまった。
今度帰ってきた時は寝かさない」そう言った手塚に俺は情けなくも涙をぼろぼろ流し
ながら抗議をした。
アレから何日も経っているというのに、「好き」の一つも言ってくれないから、不安に
なっちまった。
俺って、馬鹿だよな。
お前が無口だってことを知っておきながら好きになったくせに、いざとなったらこんなにも
女女しいヤローに成り下がっちまう。
なぁ、手塚。
お前は完治した。
だから、今まで我慢してきた分、練習にも大会にも精を出すだろう。
なぁ、手塚?
その時はいつだって俺がお前の傍にいるから。
草臥れた先には、いつも俺が癒してやるから、俺も手塚に甘えさせてくれよ。
♯後書き♯
今作は、「原作 アニメ共に手塚国光君お帰り!!」キャンペーンに作業しました。
今回のタイトルである「草臥れ」はご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、「草臥れ」と
言うのは草に倒れる(臥す)の意味があります。
それでまたまた妄想してしまいました柊沢は、原作の彼が会場に現われた時に居合わせた
佐伯君と作業したわけです。
手塚×佐伯…。(爆)
またもや、私はマイナーと思われるBLを作業してしまいましたね、と後書きを書いている
途中で振り返りました。←遅っ!(汗)